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  3. 【『オクトパストラベラー』インタビュー】RPG世代として、ユーザーと自分をガッカリさせない音楽を作る。西木康智氏の“進化”への挑戦

 2018年7月13日に発売を予定している、スクウェア・エニックスの新作RPG『オクトパストラベラー』。ファミ通.comでは、本作の魅力を伝えるべく、主人公レビュー連載に加え、インタビュー企画を掲載する。

 最初にお届けするインタビューは、音楽について。今回、楽曲を担当したのは、スクウェア・エニックスと本格的にタッグを組むのは初となる作曲家、西木康智氏。新時代のRPGの楽曲制作はどのように進められたのか、詳しくうかがった。

左:スクウェア・エニックス アシスタントプロデューサー
早坂将昭氏 Masaaki Hayasaka (文中は早坂)

中央:作曲家
西木康智氏 Yasunori Nishiki (文中は西木)

右:スクウェア・エニックス プロデューサー
高橋真志氏 Masashi Takahashi (文中は高橋)
※高橋氏の“高”の字は、正しくは“はしごだか”です

RPG直撃世代の男たちの運命の出会い

――初めに、西木さんが本作の曲を担当することになった経緯を教えてください。

高橋まず、『オクトパストラベラー』について、“古き良きRPGではありながら、いまの技術を使った進化したドット絵のRPG”というコンセプトを考えていました。それならば、曲はレトロ音源のものではなくて、オーケストラの生音を使ったものにしたい……と考えまして、音楽事務所であるイマジンさんに相談したんです。そのとき、いろいろな方のサンプル曲をいただいたのですが、その中で西木さんのバトル曲が抜群にカッコよくて。そこで西木さんにお願いをすることにしました。

――それはいつごろのことですか?

高橋約2年前ですね。それから曲を書いていただきました。全部で何曲でしたかね?

西木80曲くらいだったと思います。

――最初にスクウェア・エニックスからお話があったとき、西木さんはどのように感じられましたか?

西木僕はゲーム音楽を作り始めてから長いのですが、あまり実績はなくて。ですので、お声がけいただいたときは「僕でいいのかな?」と、正直、ビックリしました。それでも、僕自身もこれまでゲーム音楽に対して深い愛情を持って活動してきたので、「やるからにはがんばるしかないな」という気持ちになりましたね。

――以前、西木さんがKONAMIに在籍していたときはリズムゲームの曲などをメインに書かれていたと思いますが、ファンタジー系の曲も書いてみたいという意欲はありましたか?

西木いえ、当時は音ゲーの曲も書いていたのですが、メインで担当していたのは『モンスター烈伝 オレカバトル』でした。そのタイトルでは150曲くらい書いたのですが、すべてバトル曲みたいな感じだったんです(笑)。『オレカバトル』では、3ヵ月に1回くらいのペースでボスが15体ほど追加されまして、そのすべてに曲を書いたので、バトル曲のストックはかなりありました。イマジンの方に今回のお話をいただいたときは、そのストックを渡してアピールしたんですよ。「バトル曲ならいっぱいありますよ!」と(笑)。

――ほとんどバトル曲とは、すごいですね(笑)。

西木そこからサンプルとして選んでいただいた曲が、高橋さんたちが考えていた『オクトパストラベラー』のイメージと合致したのかなと思います。

高橋開発中の画面に、西木さんの楽曲を当てはめてみるとバッチリで。先ほど西木さんは、「すべてがバトル曲」とおっしゃっていましたが、サンプルの中にはイベント曲のようなものもありまして。それをプロローグに入れてみたときに、「これが目指していた形だ!」と思いましたね。

西木ありがとうございます。『オレカバトル』では、バトル曲と言いつつも、イベントシーンにも使えるように、キャラクターに合わせて制作していたんですよね。そんな『オレカバトル』では、のびのび自由に作っていたのと対照的に、『オクトパストラベラー』では、トラディショナルというか、万人に届くようなバトル曲にしたいと思ったので、そういう部分での難しさがありました。「いままで歴史を積み重ねてきたJRPGの音楽とは、どういうものなのだろう」と考えて……僕はRPG直撃世代なので、責任を強く感じましたね。

――以前実施したインタビューで、高橋さんもRPG直撃世代だとおっしゃっていましたね。

高橋じつは西木さんとは同じ歳ということが、開発の後半にわかったのですが(笑)。多感な時期にスーパーファミコンなどでドット絵のRPGを遊んでいたという思い出を共有していたので、「こういうゲームを作りたい」、「こういう曲が欲しい」というのがツーカーで通じましたね。

――西木さんは、子どものころはどのようなRPGをプレイしていたのですか?

西木やっぱり、『ファイナルファンタジー』シリーズは外せないですね。そのころ買った雑誌に、発売前のゲームの音楽が収録されたCDが付録としてついていて、その中に『ファイナルファンタジーVI』の戦闘曲が入っていたんです。「発売に先駆けて、曲が聴けるなんて!」と、めちゃめちゃテンションが上がって、それを延々と聴いていました。『ファイナルファンタジー』からの影響は、かなり大きいと思います。

――そのころから、ゲーム音楽の作曲家を目指していた?

西木いえ、そうではなかったのですが、振り返ってみると、いまの仕事につながっている部分もありますね。植松さんの本『楽して暮らしてぇなぁ。』(植松伸夫氏が週刊ファミ通で連載したコラムをまとめた書籍)も読みましたし、植松さんのラジオも聴いていましたし。それがきっかけで、コンサート“20020220 ミュージック・フロム・ファイナルファンタジー”にも行きました。そのコンサートのオーケストラアレンジは、いまお世話になっている、イマジンの浜口史郎さんが担当されているんです。

――それは、いろいろな縁を感じますね。

西木浜口さんのアレンジは、僕にとって、『ファイナルファンタジー』のオーケストラアレンジの原点にして至高なんです。そういった憧れもあって、いまゲームのお仕事をしていて、イマジンさんともお仕事をしているのだと思います。ですから、思い返してみると、つながっていますね。

さらに上を目指して取り組むストイックな曲作りの姿勢

――続いて早坂さんにうかがいます。本作の音楽に、早坂さんはどのように関わっているのですか?

早坂僕は学生時代に、ゲーム音楽を演奏する企画オーケストラで、指揮や運営、編曲などをやっておりまして。その経験を高橋や浅野(企画・プロデュース 浅野智也氏)に伝えて、「音楽なら任せてください」とアピールし、アシスタントプロデューサー兼サウンドディレクション担当することになりました。

高橋音楽に関しては、私よりも早坂のほうが知識が豊富なので、基本的には西木さんと早坂がやり取りをする形で、進めてもらいました。

――曲を作るうえで、西木さんと早坂さんは、どのような話し合いをされたのですか?

早坂まず、スクウェア・エニックスの作品を遊んでくださるファンの方たちが、本作の画面を見たときにどんな音楽を期待するのかを考えました。ドット絵と言えば、『ファイナルファンタジーVI』や『クロノトリガー』など、スーパーファミコンのRPG黄金世代のような楽曲が間違いなく期待されるだろう……と思い、3回聴けば覚えられるような、とにかく濃いメロディーにしたいなと思ったんです。西木さんには、「イベント曲もバトル曲も、メロディーを覚えられるものにしてください」とお願いしました。

――西木さんは早坂さんのオーダーを受けて、曲のイメージはしやすかったですか?

西木はい。「この場面にはこういう曲だろう」と、すんなりイメージできました。今回、作曲にあたって、先ほどの「とにかくメロディーをキャッチーにしてください」というものと、高橋さんのおっしゃっていた「オーケストラの生音を使ったゴージャスな音像にしたい」という、ふたつのテーマをいただいたのですが、オーケストラは全体を複雑にアレンジしてしまうと、メロディーの部分がブレてしまうことがあります。そこで、オーケストラの音を使ってはいるのですが、基本的には、ボーカル曲のようなイメージで曲作りをしています。メロディーがあり、伴奏とリズムがあるような。メロディーを立たせつつ、オーケストラのテクスチャーも感じさせる楽曲を目指しました。

――主人公のテーマ曲ごとに、メインの楽器が決まっているのも特徴的ですよね。

西木主人公のテーマ曲は、早坂さんと密にやり取りをして作りました。本作は、メインテーマからイベント曲までメロディーを立たせることに力を入れましたが、そのなかでも8人の主人公のテーマ曲は、聴いたときに一発で「これはこのキャラクターのテーマ曲なんだ」とわかってもらえるようにしたかった。そこで、主人公のテーマ曲で使った楽器は、ほかの曲ではできるだけメインで使わないようにしています。

たとえば『学者サイラスのテーマ』はヴァイオリン、『商人トレサのテーマ』はクロマチックハーモニカ、『狩人ハンイットのテーマ』はピアノがメインとなっている。各主人公のテーマは、ゲームの公式サイトで試聴できるので、ぜひ聴いてみてほしい。

――バトル曲の多さも、際立っていると思います。

西木バトル曲はいちばん苦労しましたね。『バトル1』は、かなりシステマチックに作っています。外してはいけないところは外さず、なおかつ『オクトパストラべラー』らしさも出しながら。オーケストラのアレンジはとても繊細で、複雑化すると、時に全体の音像がぼやけてしまう事があります。ですので、とくにメロディーを取る楽器は、しっかり主線がわかりやすく、なおかつ汚さの出ないものを選びました。目指すところは“ゴージャスな雰囲気を感じられる、メロディーがわかりやすい曲”で、アレンジにおいてもかなり実験をしながら作っていきました。

早坂『バトル1』では、かなりやり取りをしましたよね。コードの進行から、「ここのタメはなくそう」という、本当に細かいところまで自分のほうで指示をさせていただいて。西木さんは、かなり嫌だったと思いますが……(苦笑)。

西木すごく印象的だったのが、早坂さんがミーティングのときに、僕が作ったメロディーの楽譜をパワーポイントにまとめて、改善点を指摘してくることです。「メロディーのコード進行はこうなっていますが、ここがよくないです」って(笑)。

――楽譜での指摘ですか!? これまでいろいろな作曲家の方にインタビューをしてきましたが、そのやりかたは初めて聞きました。

西木最初は戸惑いましたが、とりあえず早坂さんの指示通りにやってみて、そこに自分なりのテイストを加えました。作曲するうえで、お客さんをがっかりさせたくないという気持ちと、なによりも自分がRPG直撃世代だったので、自分をがっかりさせたくないという気持ちが強かった。自分を見つめ直すという意味でも、かなり心がえぐられる感じでしたが、早坂さんの意見を真摯に受け止めて曲作りを行うことで、僕にとってはものすごくいい勉強になりました。

――では、いちばん苦労した曲は『バトル1』?

西木メインテーマもたいへんでしたよ(苦笑)。たしか、15回くらいはリテイクがありましたよね? 当初、メインテーマは明るめの曲を作ったのですが、反応がイマイチで。別のバージョンを作ったところ、それも微妙な反応でした。つぎに、最初と2番目のバージョンのいいところを合わせた3番目のバージョンを作って、それをベースに完成させました。

早坂メインテーマはとくにメロディーを大事にしたかったので、あえて最初はアレンジを入れずに「メロディーとコードだけで作ってください」とお願いしました。その段階でいい曲に聞こえるのであれば、アレンジを入れてもいいはずだ、という風に試させていただいて……(笑)。

西木ストイックですよねぇ(笑)。

早坂メインテーマを作っているときが、いちばんヒリヒリしました。「もうこれ以上は無理です!」という感じになりましたもんね。

西木あのときは正直、もう僕は降りたほうがいいんじゃないかと考えていました(苦笑)。

――西木さんと早坂さんが全力でぶつかったからこそ、数々の名曲が誕生したのですね。

西木最後までストイックに、自分と見つめ合いながら作っていきましたね。すべてが勝負曲です。自分がユーザーだったら欲しいと思う曲は、ぜったいに外さないようにして。そんな中でも、自由に作れた曲がいくつかありまして、それらは自分の中でもお気に入りです。

――たとえばどのような曲ですか?

西木ハイランド地方の街で流れる『悠然たる山腹の街』です。開発中にいただいた、その街の映像にインスピレーションを受けまして。ドットで表現された山の様子が印象的で、自分がその風景につけたい曲を作ろう! と。街の曲にしてはドラマチックすぎる曲なのですが、音楽が絵よりも主張してくる感じも、RPGならではだよな、と思いました。それと『バトル2』は、苦労した『バトル1』に対する変化球として作ったのですが、すんなりと出来て、それもお気に入りですね。

――早坂さん、高橋さんは、どの曲がお気に入りですか?

早坂自分の中でいちばんグッときたのは、『フラットランド地方』(フラットランドのフィールドで流れる曲)です。ほかのRPGでは、平原の曲はマーチなどの明るい曲調が多いのですが、この曲はちょっと暗めなんです。「こういう平原の曲は聴いたことないな」と驚きました。

高橋1曲に絞ろうとすると悩んでしまうのですが、やっぱりメインテーマですね。PVで何度も使わせてもらっていますが、どの映像にもマッチするんですよ。このゲームを説明するうえで、必要なすべてが含まれているという感じがして。“プレイヤーがキャラクターたちになりきって、世界を旅する”というコンセプトのゲームなので、「あなたも旅立ってください」と伝えるゲームの入り口の部分(オープニング画面)で、この曲がかかるのは最高だなと思っています。

フラットランドの曲が好きすぎて、同曲をサウンドトラック公式サイトの試聴リストの中に加えたという早坂氏。どのような曲になっているのかは、体験版や、サントラ試聴ページでぜひチェックを。

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