任天堂の宮本茂氏が語る、ゲームが「リアルさ」を追求した結果の失敗と、『トムとジェリー』から得たインスピレーションの重要性:1980年代のゲーム開発哲学
2026年03月09日 | #ゲーム | GamesRadar+
任天堂の伝説的クリエイターである宮本茂氏が、1980年代にはすでに「ゲームが現実世界を追い求めるのはほとんど失敗作」と考えていたことが明らかになりました。当時のゲーム業界で主流になりつつあったリアル志向の作品に対し、宮本氏はアニメ『トムとジェリー』のような「現実離れした日常」こそが、初期の任天堂作品にとって重要なインスピレーション源だったと語っています。この発言は、1989年に日本の『ゲーマーハンドブック』誌に掲載されたインタビューで語られたもので、最近になって海外の翻訳サイト「shmuplations」が英訳したことで注目を集めています。
「リアルな動き」よりも「気持ちよさ」を追求する任天堂ゲームの哲学
宮本氏はインタビューの中で、当時の「アニメーション重視で、なめらかな視覚表現を優先し、操作への反応が鈍いゲーム」にプレイヤーがしばしば不満を抱いていたことに言及しています。特に「カラテゲーム」の人気に触れつつ、それらの作品は「美しい」動きをしていたものの、「ゲームとしてはほとんど失敗作だった」と手厳しい評価を下しています。宮本氏が重要視したのは「プレイヤーにとってどう感じるか」という点であり、例えば『スーパーマリオブラザーズ』におけるマリオのジャンプ能力は、現実離れしているからこそ面白いのだと説明しています。もしマリオが現実の人間と同じ高さしか飛べなかったら、リアルな物理法則に従うのは問題ないでしょう。しかし、自身の身長の3倍も4倍も高く飛び跳ねるようになると、もはや「現実」からはかけ離れてしまいます。任天堂は、この「現実離れした日常」こそがゲームを面白くする要素であり、「現実には存在しそうだけど存在しない世界」を提供しているとしています。
『トムとジェリー』が任天堂ゲームに与えた影響
宮本氏によれば、プログラマーは自身が作り出す世界の神のような存在ですが、「その世界に説得力がなければ、誰も入りたいと思わない」と語っています。だからこそ、現実離れした設定であっても、皆が納得するようなルールの中で奇妙なことをするのが「現実離れした日常」の創造につながるとのこと。では、どのようにして現実味のある「現実離れした世界」を創造するのでしょうか。任天堂にとって、昔ながらのコメディ映画やアニメーション映画が大きなヒントになったとされています。宮本氏は、「チャップリンや『トムとジェリー』のような作品が、私たちの仕事にとって非常に重要な燃料となってきた」と述べています。