『Project Songbird』は、ぱっと見だと雰囲気の良いサイコロジカルホラーに見えます。森の小屋、ノイズ混じりの空気感、音や映像を扱うアーティスト気質の題材。素材だけ見るとかなり良さそうです。
ただ、実際の評価を追っていくと、怖さよりも面倒くささや苛立ちが先に立つという声がかなり目立ちます。ホラーらしい緊張感を狙った仕掛けはあるのに、その多くが気持ちよく機能していません。雰囲気で引っ張ろうとしているのは伝わるのですが、遊んでいて気持ちよく乗れない場面が多い。買ってから「思っていたのと違う」と感じる人は普通に出てきそうです。
正直、いちばん気になるのは「怖い」より「イラつく」が勝つこと
ホラーゲームで大事なのは、先が見えない不安や、何かが近づいてくる嫌な感じだと思います。ところが本作は、その緊張感を作るはずの仕掛けが、しばしばそのままストレス要素になっています。
特に厳しく言われているのが、視線を外すと猛スピードで迫ってくる敵から逃げながらパズルを解かされる場面です。こういう仕組み自体は面白くなりそうなのですが、本作では敵をうまく撒く手段や安全に考える余地がほとんどなく、落ち着いて謎解きをする余白がありません。結果として、怖いというより「早く終わってくれ」という感情が前に出やすいんですね。
しかも、この手の嫌な緊張感が一度きりのアクセントではなく、ゲーム全体のテンポの悪さとも噛み合ってしまっています。移動は遅めで、無駄な往復も多く、ヒントを見返す機能もない。ホラーとして神経を削られるというより、単純に遊びにくいという印象が積み上がっていくタイプです。
開発者の声が前に出すぎて、物語に入り込みにくい
もうひとつ大きな不満点として挙がっているのが、メタ演出の扱いです。ゲームの中では開発者の存在感がかなり強く、長文メッセージや自己言及的な見せ方が繰り返し入ってきます。
これがうまくハマる作品だと、不気味さや違和感に繋がることもあります。ただ本作では、主人公Dakotaの体験に没入したい場面で、急に「作っている側」の気配が濃く出てくるせいで、物語の空気が途切れやすいようです。レビューでも、主人公の恐怖を追うというより、開発者の独白を読まされている感覚に近いという厳しめの指摘が見られます。
音楽や芸術を絡めたテーマそのものは悪くないはずなのに、見せ方が整理しきれていない印象です。悪夢の中をさまようホラーとして味わいたいのに、途中で何度も現実に引き戻される。ここはかなりもったいないところですね。
戦闘もステルスも中途半端で、結局は作業になりがち
ホラーゲームで武器を持たせるなら、その武器が恐怖を和らげる代わりに別の緊張感を生む必要があります。本作はそこがあまり上手くいっていません。
戦闘はかなり単調で、基本的には撃つ、距離を取る、また撃つの繰り返しになりがちです。敵の種類も多くなく、AIも賢いとは言いにくいので、何度か遭遇すると緊張感が薄れていきます。モンスターそのものも、怖いというより少し滑稽に見えてしまうという声まであるくらいです。
一応ステルス要素もありますが、狭い通路や小部屋の構成と噛み合わず、結局見つかって強行突破になりやすい。つまり、戦うのも楽しくないし、隠れるのも気持ちよくない。この中途半端さが、ホラーとしてかなり痛いです。
さらに、斧の耐久度管理まで入ってきます。これ自体はサバイバルホラーとして定番ですが、本作は壊れる直前の警告が薄く、修理場所も限られています。敵から逃げている最中に武器が壊れて、遠くの作業台まで戻されるのは、さすがにしんどい。緊張感というより嫌がらせ寄りに感じる人が出るのも無理はありません。
不親切さが積み重なって、じわじわ気力を削ってくる
単発なら見逃せる欠点でも、いくつも重なると話が変わってきます。本作はまさにそのタイプです。
たとえば、謎解きに必要なメモやパスワードをあとから確認し直せないのはかなり不便です。ジャーナルに保存されるわけでもなく、プレイヤー側が覚えるか、メモを取るか、元の場所まで戻るしかない。ホラーゲームでこれは、かなりテンポを悪くします。
テキストのフォントが小さすぎて読みづらいという指摘もあります。しかも手書き風で、雰囲気はあるけれど可読性は低い。暗い部屋で雰囲気を作り込みたい作品ほど、こういう部分は雑にしてほしくないんですよね。
そのうえ、移動速度が遅めで、コントローラー操作の反応も鈍いという声まであります。プレイヤーが怖がる前に、操作のもたつきに気を取られてしまう。こうなるともう、ホラーの土台そのものが揺らいできます。
雰囲気作りにも粗さがあって、世界に浸りきれない
本作はサウンドや映像で不気味さを作ろうとしているのですが、ここも賛辞一辺倒ではありません。
モンスターのうめき声や環境音が短いループで使い回されていたり、BGMが不自然に途切れたり、草木のポップインやフレーム落ちが目立ったりと、空気を壊す小さな粗があちこちにあります。ホラーって、こういう細かい違和感が意外と致命傷なんですよね。見えないはずの継ぎ目が見えてしまうと、一気に作り物っぽさが前に出てきます。
懐中電灯とバッテリー管理もあるにはあるのですが、マップ自体が思ったより明るく、恐怖の核としては弱めです。終盤になると逆に弾薬や回復だけが厳しくなり、明るい部屋に敵が多く置かれる雑な難しさが出てくる。怖いというより、ただ面倒。ここも評価を落としているポイントでしょう。
それでも完全にダメと言い切れないのが少し悩ましい
厳しめの意見が多い作品ですが、完全に見る価値がないかと言われると、そこも少し難しいところです。
森や小屋を中心にしたビジュアル、音や芸術をめぐる題材、心理ホラーとしての方向性そのものには、ちゃんと惹かれるものがあります。瞬間的には「これは良さそう」と思わせる場面もあるようです。だからこそ、なおさら未整理なシステムや不親切な設計が惜しく見えてしまいます。
要するに、核になりそうなアイデアはあるのに、遊びとしての整え方が追いついていない作品という印象です。雰囲気先行で飛びつくと、かなり痛い目を見るかもしれません。
まとめると
- ホラーとしての題材や雰囲気は悪くないが、怖さよりストレスが勝ちやすい
- 視線を外すと迫る敵とパズルの組み合わせが、恐怖より苛立ちを生みやすい
- 開発者のメタ演出が前に出すぎて、主人公の物語へ入り込みにくい
- 戦闘、ステルス、武器耐久のどれも噛み合わせが悪く、作業感が強い
- UIやメモ管理、極小フォントなど不親切な設計が積み重なってしんどい
- 音や映像で空気を作ろうとしているが、技術的な粗が没入感を壊しやすい
- アイデア自体は悪くないので、雰囲気だけで惹かれる人ほど期待を裏切られやすい
ホラーとしての素材に惹かれて買うと、思った以上に扱いづらさが先に来るタイプです。雰囲気重視で手を出すなら、かなり慎重に見たほうがいいと思います。










