成人向けゲーム削除問題、反対団体は「合法性問わず」と主張。決済事業者を巻き込み議論が拡大

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ゲーム販売プラットフォームSteamなどで発生している成人向けゲームの削除問題について、オーストラリアの権利団体「Collective Shout」が、コンテンツの合法性に関わらず反対するとの強い姿勢を示していることが明らかになりました。この問題は、プラットフォーム運営の透明性や、決済事業者の影響力といった複数の論点を巻き込み、議論を呼んでいます。

目次

問題の背景と経緯

2025年7月、Steamやitch.ioといった主要なゲーム販売プラットフォームにおいて、成人向けゲームが相次いで削除されたり、検索結果から非表示になったりする事態が発生しました。

この動きの背景には、女性や少女の性的客体化や搾取に反対する活動を行うオーストラリアの権利団体「Collective Shout」による、決済代行業者への働きかけがあったと報じられています。

主な出来事のタイムライン

  • 2025年7月16日: Steamが、決済事業者の基準に反するとして一部の成人向けゲームを削除。
  • 2025年7月24日: itch.ioが、成人向け(NSFW)作品を検索結果から除外すると発表。
  • 2025年7月30日: 国際ゲーム開発者協会(IGDA)が、プラットフォームに対し「透明性のある公平なポリシー」を求める声明を発表。
  • 2025年9月2日: 海外メディアの報道を通じ、Collective Shoutが「合法・非合法性に関わらず反対する」というスタンスであることが広く報じられる。

各関係者の主張

この問題には、権利団体、プラットフォーム、業界団体など、複数の関係者がそれぞれの立場から意見を表明しています。

Collective Shoutの見解

Collective Shoutは、一貫して強い姿勢を示しています。団体のキャンペーンマネージャーであるケイトリン・ローパー氏は、女性や少女への現実的な危害や社会的な影響を判断基準としており、「コンテンツが法的に合法かどうかは問題ではない」と主張しています。

  • 問題視するコンテンツ: 特にレイプ、近親相姦、児童性的虐待などを助長するような作品を問題視しています。
  • 決済事業者への働きかけ: Steam側が数ヶ月にわたり要求を無視したため、VisaやMastercard、PayPalといった決済事業者に直接働きかけを行ったと説明しています。
  • アクセス制限への見解: こうしたゲームへのアクセスが制限されることは「人権侵害ではなく、些細な不便」であると述べています。

プラットフォーム側の対応

  • Steam: 決済事業者の基準に沿ってガイドラインを更新し、一部作品を削除しました。
  • itch.io: 成人向け作品を検索結果から除外しましたが、購入済みのゲームは引き続き利用可能であると説明しています。

なお、itch.ioが成人向け作品全般を対象としたように見える対応を取ったのに対し、Collective Shout側は問題視しているのは特定のジャンルに限ると説明しており、両者の認識に齟齬が見られる可能性があります。

国際ゲーム開発者協会(IGDA)の声明

世界のゲーム開発者を支援するIGDAは、今回の事態に懸念を表明しています。

  • 透明性の要求: プラットフォームに対し、成人向けコンテンツの扱いに関する「透明性のある一貫したポリシー」を求めています。
  • 開発者への配慮: 影響を受けた開発者との十分なコミュニケーションがないまま規制が行われたことへの懸念を示しました。

一方でIGDAは、性的暴行や未成年を対象とするようなコンテンツを容認するものではないという立場も明確にしています。

今後の論点と未確定事項

この一連の問題は、多くの複雑な論点を内包しています。

  • 表現の自由と規制のバランス
    どこまでが表現の自由として許容され、どこからが社会的に有害なコンテンツとして規制されるべきかという根本的な問いを投げかけています。
  • 決済事業者の影響力
    金融インフラである決済事業者の判断が、国や文化を超えてグローバルなコンテンツ流通に大きな影響を与えうることが浮き彫りになりました。
  • 開発者への影響
    合法的に作品を販売していたにもかかわらず、突然の削除によって金銭的な打撃を受けた開発者も存在し、不透明な基準が創作活動の萎縮を招くリスクも指摘されています。

現時点では、問題となった個別のゲームタイトルに関する具体的な情報や、日本市場への直接的な影響については明らかになっていません。今後、各プラットフォームや関係団体から、より明確な方針が示されることが求められます。

用語解説

  • NSFW (Not Safe for Work): 職場など公の場での閲覧に適さないコンテンツを指す略語。
  • Collective Shout: 女性の性的対象化や搾取に反対するオーストラリアの権利団体。
  • 透明性のある一貫したポリシー: IGDAがプラットフォームに対し求める、明確で公平なコンテンツの運用基準。

ニュースに対するリアクション


肯定的

中立

否定的
15%19%66%
  • 「合法かどうかは関係ない」と主張した時点で、自分たちの感情や正義が法より上だと言っているように聞こえる。それはあまりに横暴ではないか。
  • 気に入らないからという理由で決済会社に圧力をかけるという手法は、やり方として問題があると感じる。
  • こうした団体の主張に屈してしまった決済サービス側にも、毅然とした対応はできなかったのかという疑問が残る。
  • フィクションと現実の区別がつかない人が増えると、表現活動全体がどんどん窮屈になっていく気がする。
  • 行き過ぎた正義感は、かえって社会を不自由にするだけではないだろうか。
  • このような規制強化の動きは、結局あらゆるジャンルの創作物に飛び火する可能性がある。自分は関係ないと思っていても、明日は我が身かもしれない。
  • 被害者がいるかもしれないという視点に立てば、合法かどうかは二の次、という理屈も分からなくはない。
  • そもそも作り手や受け手側に自浄作用や分別があれば、ここまで大きな話にはならなかったのでは。表に出すべきでないものが多すぎたのかもしれない。
  • 作品があることで犯罪が抑制される可能性を一切考慮せず、悪影響だけを語るのはフェアではないように思う。両方の側面を調査すべきだ。
  • ルールを作ったとしても、それを全ての人に周知して守らせるのは不可能に近い。結局は個人の倫理観に頼る部分が大きい。

リアクションまとめ

このニュースに対しては、否定的な意見が多数を占める結果となりました。特に、反対団体の「合法性は問題ではない」という主張や、決済事業者に圧力をかける手法に対して、「法治国家の原則に反する」「感情論だ」といった厳しい批判が多く見られます。

また、こうした動きが表現の自由全体を脅かし、創作活動の萎縮につながるのではないかという懸念の声も目立ちました。一方で、団体の主張に一定の理解を示す意見や、業界の自浄作用の欠如を問題視する声も少数ながら存在します。この問題は、表現の自由と社会的責任のバランスという、根深いテーマについての議論を呼び起こしているようです。

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