『グランド・セフト・オート・バイスシティ』のCop Landは5つ星手配からの脱出が最大の見せ場
『グランド・セフト・オート・バイスシティ』のミッション「Cop Land」は、警官の制服を奪い、爆弾を処理した直後に5つ星の手配から逃げるという、シリーズでも特に苛烈な展開で知られています。失敗しやすく、味方のLance Vanceまで守らなければならないため、最悪のミッションの1つと評される一方、本作が目指した複数段階のミッション設計を象徴する場面でもあります。原文筆者は、この不安定さと理不尽さこそが、Cop Landを忘れがたい体験にしていると論じています。
ひとつの仕事が街全体を巻き込む展開へ
Cop Landは、Tommy VercettiがVercetti Estateを拠点に勢力を拡大していく一連のミッションの最後に位置付けられています。Tommyはギャングの大物Ricardo Diazを倒し、街で最も強力な犯罪組織を率いる立場になりました。しかし、Diazの元取引相手たちは新しいボスへの上納を拒み、支配権はまだ安定していません。
そのためTommyは、みかじめ料を払わない店を脅し、縄張りに入り込もうとするギャングを排除します。店先を破壊するなど、個々の目的は単純な暴力行為に見えますが、ミッションが進むほど、Tommyが新しい犯罪帝国を築こうとしていることが明確になります。原文筆者は、これらの任務が同じテーマを保ちながら危険度を高めていく点を、前作までにはあまり見られなかった特徴として評価しています。
最後の舞台となるのは、Vice Point地区のNorth Point Mallにあるコーヒーショップです。部下が仕掛けた爆弾の配線に問題が起き、爆弾処理班がショッピングモールを封鎖したことで、証拠を消すにはTommyとLanceが自分たちで爆弾を爆破するしかなくなります。モールだけでなくVice Point北部全体から一般市民や通常の交通が消え、警官とパトカーで埋め尽くされたエリアへ変化する演出は、街の一部を一時的に別の場所へ作り替える大胆な仕掛けです。
この構成は、従来のシリーズに多かった「指定地点へ移動して標的を倒す」という単発の任務から大きく踏み出したものでした。Vice Cityでは、Tommyの勢力が大きくなるにつれて、複数の目的を連続してこなすミッションが増えていきます。原文筆者は、本作がこうした高い演出性を持つミッションに取り組んだ、Rockstarにとって初期の実験だったと説明しています。
制服の奪取が最初の関門に
モールへ侵入するには、TommyとLanceが警官の制服を手に入れなければなりません。警官2人をガレージへ誘い込み、倒して制服を奪う流れですが、ここがCop Landでもっとも不安定な部分の1つです。制服は2着必要なので、警官も2人を同じ場所へ誘導する必要があります。
軽い犯罪で発生する手配では、通常は警官1人しか追ってきません。複数の警官を呼び寄せるには、さらに騒ぎを起こして手配度を上げる必要がありますが、到着したパトカーがガレージの前で停止すると、シャッターを閉められなくなります。ガレージの扉が閉まらなければ、制服を入手するカットシーンも始まりません。
結果として、プレイヤーは車をガレージから出し入れしながら、警官が銃撃するだけでなく内部まで追ってくるよう誘導することになります。警察のAIがどのように反応するかに左右されるため、最初の挑戦で制服を奪えることもあれば、逮捕や死亡を何度も繰り返すこともあります。原文筆者は、この工程を「ほとんどランダムに感じられる挑戦」と表現し、制服を奪う作業の扱いにくさを率直に批判しています。
さらに、制服を入手せずにハワイアンシャツのままモールへ向かうことも可能です。ただし、事件現場への侵入によって即座に5つ星の手配が発生し、武装した警官の集団から集中攻撃を受けるため、実質的には自殺行為に近い選択です。それでもゲーム側が「本来の手順を無視して侵入する」行動を許していることは、プレイヤーの自由と、行動に反応する街を作ろうとした姿勢の表れだと原文筆者は指摘しています。
制服を手に入れた後は、警官を刺激しなければモール内を通ってコーヒーショップへ進み、指定地点で爆弾を処理できます。しかし、作業が終わっても安全にはなりません。爆弾の起爆までの時間はわずか5秒で、TommyとLanceが爆発範囲から離れきる前に店は吹き飛びます。建物が破壊され、マップにその痕跡が残る演出は、GTA 3から続くRockstarの手法でもあります。
5つ星手配とLanceが生む脱出劇
爆発後は、Vice Point北部を占拠していた警官が一斉にTommyたちを追跡します。5つ星の手配は本作で2番目に高い段階にあたり、警察は交通規則や自分たちの安全をほとんど顧みなくなります。パトカーは追跡車両というより、進路を塞いで体当たりするための武器のように動き、プレイヤーを道路上で強引に止めようとします。
敵は通常の警官だけではありません。SWAT部隊が装甲車で現れ、ヘリコプターから降下してきます。さらにFBIも装甲SUVで追跡に加わり、隊員は自動火器を使用します。爆弾を爆発させてから逃げ道を探すのでは遅く、モールへ入る前から脱出手段を考えておく必要がある構成です。
特に重要なのが、モールへ入る前の車の置き場所です。正面入口付近に車を停めると、爆発後にコーヒーショップから車まで移動する間、武装警官の集団を突破することになります。南側の路地にある、コーヒーショップに近い出口のそばへ車を置けば、爆発後すぐに逃走車へ乗り込めます。原文筆者は、この準備が成功率を大きく左右する意外な要素だとしています。
南側の入口付近には、手配度を1段階下げるアイテム「Bribe」もあります。これを取れば5つ星から4つ星になり、FBIを追跡から外せます。周辺を少し調べたプレイヤーが、最終段階を有利に進められるよう配置された仕掛けであり、単に敵を撃ち続けるだけではない脱出方法を提示しています。Vercetti Estateへ戻る最短ルートの途中には、Vice Point Penthouse近くの分岐にも別のBribeが用意されています。
ただし、脱出の本当の問題は手配度やルートではなく、Lanceの生存です。Lanceが死亡するとミッションは失敗し、制服を奪うところからやり直さなければなりません。彼はプレイヤーについてくる経路探索が不得手で、警察はあらゆる手段で車を止めようとするため、Lanceは銃撃戦に巻き込まれやすくなっています。
車が破壊されて別の車へ乗り換える場合も危険です。乗り換えの間にLanceが爆発や銃撃にさらされるため、彼を車へ乗せたまま、できる限り車両を交換せずに目的地まで走り抜ける必要があります。原文筆者は、Lanceの生存が「ミッション失敗画面につながる時限装置」のように機能していると説明し、当時のPS2世代のAI同士がぶつかることで、護衛任務としての理不尽さが際立っていると論じています。
批判されながらも残る自由度
Lanceを生還させてVercetti Estateへ戻れば、金銭報酬に加えて、残りのゲーム中に定期的な収入を得られるようになります。Tommyは保護料を徴収する仕組みを完成させ、これまで脅してきた顧客から継続的に資金が入る状態を築きます。報酬そのもの以上に、街の犯罪組織を実際に立ち上げたという達成感が、このミッションの大きな見返りです。
Cop Landは、制服の奪取、爆弾の処理、短時間の爆発、5つ星手配からの逃走、そしてLanceの護衛を1本の任務に詰め込んでいます。そのため、操作の細かさやAIの挙動に悩まされる場面が多く、原文筆者も、制服を手に入れる工程とLanceを危険地帯から連れ出す工程を考えれば、単純な成功作とは呼べないとしています。一部のプレイヤーからは、GTA史上でも最悪のミッションの1つと見なされているとのことです。
一方で、Vice Cityの代表的な名場面として挙げられることも少なくありません。警官の制服を使って警察の支配区域へ入り込む展開には、ほかの任務では味わいにくい緊張感があります。爆発後に大勢の警察勢力から逃げ切るカーチェイスも、失敗の危険が大きいからこそ、成功した瞬間の印象を強く残します。
しかも、脱出方法は車に限られません。モールのそばにヘリコプターを停めておけば、爆発直後に空へ逃げ、地上の追跡を回避することもできます。ゲームが想定した手順はあるものの、プレイヤーが別の手段を試す余地は残されています。原文筆者は、この自由度と、犯罪行為に応じて街の構成や警察の反応が変わる点を、Cop Landの重要な魅力として挙げています。
今日では、映画的な強盗や段階的に激化する事件を取り入れたミッションは、GTA 5やRed Dead Redemption 2をはじめとするオープンワールド作品で珍しくありません。しかし、その形式が自然に成立するようになる前には、単純なサンドボックスの中へ複雑な進行を組み込む試行錯誤がありました。Cop Landはその過程で生まれた、粗さと野心が同居する例です。
原文筆者は、同ミッションを完成度だけで判断すれば欠点の多い存在だとしながらも、RockstarがPS2時代に行った挑戦の重要性を示す場面だと結論付けています。制服を奪うまでの不安定さ、Lanceの頼りなさ、無謀な警察の追跡は、プレイヤーを苛立たせる要因です。それでも、準備と判断次第で危機を突破し、街の犯罪帝国を完成させる一連の流れは、本作が目指した野心を最もよく伝えています。