『Tyranny』は悪の勝利後を描くRPGとして再注目に値する
2026年09月06日 | #ゲーム紹介 | Polygon
『Baldur’s Gate 3』で悪の道を選ぶプレイに魅力を感じた人にとって、2016年のCRPG『Tyranny』は有力な次の選択肢になりそうです。本作が描くのは、善と悪が対立している最中の物語ではありません。すでに悪が勝利した世界で、プレイヤー自身がその後の秩序と運命を決めていく作品です。
悪が勝利した世界で権力を行使する
本作の主人公は、征服者Kyrosに仕える裁判官兼法執行者「Fatebinder」です。Kyrosは神皇帝として知られ、その軍勢によって既知の世界の大部分を支配しています。プレイヤーは最後まで抵抗を続ける英雄たちに味方するのではなく、Kyrosの手先として征服を完成させる役割を担います。
ゲーム開始時には、インタラクティブな戦争地図の絵物語を通じて、これまでの戦況を組み立てます。どの勢力を打ち倒し、どの勢力と同盟を結び、そして裏切るのかを自分で選択する仕組みです。その回答は単なる導入設定にとどまらず、ゲーム内の歴史として反映されます。プレイヤーの選択によって、登場人物たちがどのような立場に置かれ、主人公をどれほど恐れるのかまで変わっていきます。
村や領土を犠牲にする選択
本作では、プレイヤーを慈悲深い行動へ誘導する仕組みがほとんどありません。地図上の一帯から生命を一掃したり、他者に知られたくない知識を収めた図書館を焼き払ったり、領土を飢饉に陥れて荒廃させたりできます。こうした判断は、綿密な戦略の結果としても、気まぐれな命令としても実行できます。
序盤から、反乱する町の意思をくじくために水源を毒で汚染する命令を下すことも可能です。しかも、その行動は一度きりの演出として処理されません。町の住民は、その後のプレイでも主人公の前で毒を使った方法に触れ、過去の行いを責め続けます。ほかの悪行についても同様で、選択の結果を忘れたことにはしてくれません。
味方を裏切る場合も、親切な警告や、相手の好感度が下がることを知らせる表示は用意されていません。長い時間をかけて信頼関係を築いた人物を裏切れば、その結果と後始末がそのまま突きつけられます。プレイヤーは、自分が何をしたのかを理解したうえで、次の行動を決めることになります。本作は悪事を罰するために説教するのではなく、悪事を選んだ人物がその現実を背負う状況を作り出します。
善悪では測れない人間関係
本作には、主人公の道徳性を善悪のゲージで示すシステムはありません。代わりに、各勢力が抱く「Favor」と「Wrath」、仲間が主人公に感じる「Loyalty」と「Fear」が記録されます。これらは単純な二択ではなく、同じ人物から忠誠と恐怖を同時に引き出すことも可能です。
ある勢力からは好意を寄せられている一方で、別の勢力からは処刑を望まれるほど憎まれることもあります。学者から情報提供者となったLantryは主人公を嫌悪するかもしれませんが、強大すぎる力によって不安定になり、友人もいない若者Sirinは主人公に最後まで付き従う可能性があります。仲間たちはリアルタイム・ウィズ・ポーズ形式の戦闘や、法廷を思わせる対決に加わり、それぞれの感情を利用して主人公の目的を果たすこともできます。
この関係性は、誰からも好かれる英雄を作るためのものではありません。恐れられながら忠誠を引き出す、あるいは一部の勢力に支持されるために別の勢力を敵に回すといった、権力者らしい計算をプレイヤーに求めます。善人か悪人かという分類ではなく、誰が主人公を必要とし、誰がその支配を憎み、どの感情を政治的な力へ変えるのかが焦点になります。
征服の先で選ぶ帝国の行方
物語の終盤では、征服した領土を見渡したうえで、Kyrosへの奉仕を続けるか、それとも自らの軍勢を帝国へ向けるかを決断します。そこにあるのは、単純な正義の勝利ではありません。物語のあらゆる行動が醜い権力争いとして積み重なるため、結末は奇妙で、満足しにくいものに感じられる可能性があります。
しかし、その居心地の悪さこそが本作の特徴でもあります。プレイを通じて、主人公がどれほどの犠牲を当然のように扱ってきたのか、そしてプレイヤー自身がどこまでその選択を受け入れていたのかを考えさせられます。原文筆者は、本作を自分の良心を確かめる機会として捉えています。自分は道徳的に複雑な人物だと思っていても、これほど悪い選択を重ねられるのかという問いを突きつける作品だということです。
同じく権力と結果を扱う作品として、Planescape Tormentの精神的な姉妹作と考える人が多いとも紹介されています。Baldur’s Gate 3でDark Urgeを選んだり、Astarionを昇格させたりして悪のプレイに関心を持った人なら、最初からその前提で作られた本作に触れる価値があるでしょう。TyrannyはWindows PC向けにSteamでプレイできます。