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『The Wandering Earth: The Last Full Moon』月を地球から引き離すシングルプレイSFシューター

2026年09月10日 | #ゲーム紹介 | IGN

『The Wandering Earth: The Last Full Moon』月を地球から引き離すシングルプレイSFシューター

地球を太陽の膨張から逃がすため、人類が月を地球から切り離す――そんな壮大な局面を描く新作ゲームが開発されています。『The Wandering Earth: The Last Full Moon』は、映画版ではなく劉慈欣の原作ノヴェラに立ち返り、月面での戦闘と派閥間の対立を軸にしたシングルプレイ作品です。現時点では発売時期や対応プラットフォームの詳細は明かされていませんが、現行コンソールとPCを対象に開発が進められています。

映画ではなく原作ノヴェラをゲーム化

本作の原作となるのは、劉慈欣氏が執筆した約2万3000字のノヴェラ「The Wandering Earth」です。この物語は2019年に映画化され、中国のSF映画が大規模なハードSFを商業作品として成立させた転機として知られています。映画のヒットは興行面にとどまらず、中国SFの知的財産に商業的な可能性があることを示し、その後の新たな企画や創作の広がりにもつながりました。

一方で、今回のゲームは映画の内容を直接ゲーム化するのではなく、ノヴェラの設定と物語に戻る方針を取っています。原作者の劉氏からも、ゲームを物語の正当な拡張として扱うことについて理解と信頼を得ているとのことです。ライセンスを保有するStarry Domeが2024年に開発パートナーを募り、劉氏の承認のもとで候補を探した結果、Surgical Scalpelsとの協業が決まりました。

Surgical Scalpelsは、無重力空間を舞台にしたシューターBoundaryを手がけたスタジオです。同スタジオのFrank Mingbo Li氏によると、今回の企画提案には12カ月を費やし、提案内容を何度も修正しながら権利保有者との信頼関係を築いていったとしています。契約は2026年初頭にまとまり、中国の旧正月の直後から開発が始まりました。すでに社内では、複数ステージを収録したプレイ可能なデモが動いているとのことです。

太陽から逃げる地球と2つの派閥

物語の前提は、数世紀後に太陽が膨張して地球をのみ込むというものです。人類は地球そのものを惑星エンジンで動かし、約2500年をかけてプロキシマ・ケンタウリへ移動させる「放浪する地球計画」を実行します。地球の自転を止め、エンジンを進行方向へ向け、脱出速度まで加速した後、長い航行を経て反転し、減速を始めるという途方もない計画です。

本作の舞台となるのは、この計画における「制動時代」の終盤です。人類は地球を動かすだけでなく、最終的には月を地球から押し離さなければなりません。ゲームタイトルの「The Last Full Moon」は、旧暦の15日または16日にあたる満月の日を指す言葉「Wangri」に由来しており、月を失う物語上の局面と結びついています。

物語の中心には、地球派と宇宙船派という2つの勢力があります。地球派は人類が惑星とともに進むべきだと考え、宇宙船派は地球を捨てて恒星間宇宙船で旅立つべきだと主張してきました。両派は実に300年にわたって対立しており、その緊張が暴力的な衝突へ発展したところから、ゲームのアクションが始まります。

プレイヤーが操作するのは、月へ派遣されたエンジニアです。月を地球から切り離す時期が訪れた直後、主人公は襲撃、陰謀、そして長年封じられていた対立に巻き込まれていきます。開発者は、地球派と宇宙船派以外の勢力がどこまで物語に関わるのかについては明かしていません。現段階ではストーリー上の要素を明かせないとしており、派閥戦争の全容は今後の情報公開に委ねられています。

月面の巨大構造物を舞台にした銃撃戦

ゲームプレイの中心は、月面やそれに近い環境を舞台にした三人称シューティングです。Surgical Scalpelsは、SF設定を使いながらも、特殊能力を次々に発動するタイプのアクションではなく、銃器の重量や弾道、移動の慣性を感じられる現実的なシューターを目指しています。Boundaryと本作には宇宙を扱うという共通点こそありますが、Li氏は両作が同じ世界観や作品系譜に属するものではなく、新規IPとして開発していると説明しています。

装備には、背中に取り付けたロボットアーム、外骨格、未来的なサイドアームなどが登場します。ロボットアームは大型の爆発物を投げたり、人間の肉体では持ち上げられない重量物を運んだりするために使われるとのことです。ゲームが進めば、月面に建設された巨大な構造物の間を移動するための宇宙船も利用できるようになります。

ただし、こうした装備や移動手段が銃撃戦に取って代わるわけではありません。Li氏は、プレイヤーがゲーム開始から最後まで撃ち合いを中心に進むことも可能であり、新たな装備は世界との関わり方を増やすためのものだと説明しています。開発チームは銃撃戦を縮小する考えはなく、「私たちは決してシューティング体験を妥協しません」と強調しています。

原文筆者は、公開された映像やコンセプトアートから、月面施設の規模が非常に大きく、人間の存在がその広大さの中で小さく見えるように設計されていると受け止めています。開発側が目指すのは幻想的な未来というより、人類が実際に建造できそうな「惑星エンジン」や「月面エンジン」の美学です。現実味のある構造物と、圧倒的なスケール感の両立が、本作のビジュアル面における大きな特徴になりそうです。

重力と慣性を考慮した照準システム

本作で特に新しい要素として紹介されているのが、照準システムです。画面中央に固定された照準を使うのではなく、キャラクターの身体と月面の重力に結びついた「トリプルレティクル」を採用します。さらに開発側の説明では、プレイヤー自身の視点も4つ目の照準として機能します。つまり、モニターの中央に敵を置くことだけではなく、キャラクターがどの方向を向き、どの速度で移動しているのかを把握することが重要になります。

低重力や無重力の環境では、発射した弾やキャラクターの動きに慣性と速度が影響します。そのため、一般的な三人称シューターのように画面中央のレティクルだけを見て敵を待ち受けるのではなく、周囲の地形や自分の位置、移動の勢いを確認しながら狙う必要があります。開発チームは没入感を重視しつつ、操作が不必要に複雑になったり、プレイヤーに過度な負担を強いたりしないよう調整しているとのことです。

公開された初期版の照準システムでは、キャラクターの姿勢や視点と照準表示が連動する様子が示されています。見た目には従来の三人称視点シューティングから大きく変わった仕組みですが、開発側は実際にコントローラーを手に取ると意図が理解しやすいとしています。月面の低重力や無重力を単なる演出にせず、敵への狙い方や移動方法そのものに組み込むことが狙いです。

物語重視のシングルプレイに注力

劉氏は本作の開発に関わり続けているものの、制作チームに対して細部まで指示するのではなく、創作上の自由を広く認めているとされています。開発者の説明によれば、劉氏は自身の作品を異なる形で展開することに寛容で、適応作品として良いものになっていれば歓迎する姿勢です。本作はStarry Domeから正式ライセンスを受けて開発されており、同社が選定したパートナーとして制作が進められています。

発売時期はまだ発表されていません。対応機種についても詳細は未公開ですが、現行コンソールとPCを目標にしているとのことです。マルチプレイの計画は現在なく、派閥間の対立や月面での出来事を描く、物語主導のシングルプレイ体験に開発の重点を置いています。

原文筆者は、月を押し出すという設定の大きさ、300年にわたる派閥対立、そして開発チームが銃撃戦を妥協しないと繰り返し説明している点に注目しています。ハードSFとしての設定を生かしながら、重力や速度を取り入れた射撃と、原作の物語を拡張するゲーム体験を両立できるかが、今後の焦点になりそうです。