『Grand Theft Auto IV』がXbox 360にもたらしたPS3への対抗姿勢
『Grand Theft Auto IV』のXbox 360版は、単なるマルチプラットフォーム作品ではなく、XboxがPlayStationに対して本気で競争する姿勢を示した象徴的な存在でした。発売日の同時展開に加え、2本の追加コンテンツを期間限定で独占したことで、先行してXbox 360を購入したユーザーに「大作シリーズで後れを取らせない」という強いメッセージを届けています。IGNのRyan McCaffrey氏は、この時期こそXboxブランドが文化的な存在感を最大化した瞬間だったのではないかと振り返っています。
PlayStation中心だったシリーズをXboxへ引き寄せた大型契約
初代Xboxの時代、Grand Theft AutoシリーズはPlayStation向けという印象が強い作品でした。Grand Theft Auto IIIとGrand Theft Auto: Vice Cityが初代Xboxで発売されたのは2003年11月で、2作品をまとめたGTA Double Packとしての展開でした。Grand Theft Auto IIIはPS2版から2年、Vice Cityは1年の期間を経てXboxに登場しています。Grand Theft Auto: San AndreasもXbox向けに発売されましたが、PS2版から約8か月後でした。
こうした状況を変える転機になったのが、2006年のE3です。当時のXbox責任者だったPeter Moore氏は、腕にGrand Theft Auto IVのロゴを入れたように見せるパフォーマンスを披露し、Rockstarの次世代向け新作がXbox 360版とPS3版で同時期に発売されることを発表しました。さらにXbox 360向けには、2本の追加コンテンツを期間限定で独占提供すると説明しています。
後に、その追加コンテンツはThe Lost and DamnedとThe Ballad of Gay Tonyであることが明らかになりました。Microsoftはこの契約のためRockstarに巨額の資金を支払ったとされていますが、McCaffrey氏はXbox 360のユーザーにとって十分に価値のある取引だったと評価しています。なお、原文では支払額が「100万ドル」と記されていますが、記事中の表記には欠落があり、正確な金額までは確認できません。
先行したXbox 360を支える決定打に
Xbox 360はPS3に先行して発売され、発売初期からCall of Duty 2、The Elder Scrolls IV: Oblivion、Tom Clancy's Ghost Recon Advanced Warfighter、Fight Night Round 3といった次世代機向けタイトルを揃えていました。Xboxは「最初に1000万台へ到達した側が勝つ」という考えを掲げ、早い段階で市場を広げようとしていたとされています。
その勢いのなかで発表された本作の同時発売と追加コンテンツ独占は、先にXbox 360へ乗り換えたユーザーに対する強い支援策になりました。当時の大作シリーズで、Xbox 360版が単なる後発移植や二番手の選択肢になるわけではないことを示したからです。McCaffrey氏は、この契約によってXbox 360のユーザーが業界最大級のシリーズで「二級市民」扱いされることはなくなったと説明しています。
実際の発売は当初予定されていた2007年秋から延期され、2008年4月となりました。しかし、本作は過去のGTA 3三部作から技術面で大きく進化した、完全に新しく作られた作品として登場しました。舞台は再構築されたLiberty Cityで、街の細部やそこで楽しめる要素が大幅に増えています。原文筆者は、シリーズが持つ風刺的な面白さという点では、本作が歴代でも特に優れているとしています。
2本の追加コンテンツが独占の価値を高めた
期間限定独占となったThe Lost and Damnedは、同名のバイカーギャングを中心に描く内容でした。McCaffrey氏は、従来のGTAの形式から視点を変えた点を高く評価し、シリーズの基本構造を別の角度から楽しめる追加コンテンツだったと振り返っています。Xbox 360向けの独占期間は1年を超えました。
続くThe Ballad of Gay Tonyは、Xbox 360で6か月間の期間限定独占となりました。原文筆者は、Rockstarによる物語とキャラクターの描写が非常に優れており、ゲーム史全体で見ても最高クラスのDLCまたは拡張コンテンツに数えられると評価しています。単に本編の遊べる範囲を増やすだけでなく、独占契約そのものをユーザーが実感できる規模の内容だったことが、Xbox 360の訴求力をさらに高めました。
一方、Xbox 360世代の終盤にはGrand Theft Auto Vも発売されましたが、当初予告されていたシングルプレイヤー向けDLCは実現せず、Xbox 360版だけの独占コンテンツも用意されませんでした。そのため、Xbox 360時代におけるGrand Theft Autoとの特別な関係は、主に本作と2本の追加コンテンツによって築かれたものといえます。
Halo 3から本作まで続いた強力なラインアップ
McCaffrey氏は、2007年のHalo 3発売と本作の展開を、Xboxブランドの存在感が特に大きかった時期として並べています。2007年秋から2008年4月までの約6か月間には、Halo 3、Mass Effect、BioShock、Call of Duty 4: Modern Warfare、Rock Band、Assassin's Creedといった作品が相次いで登場しました。
この期間にXbox 360は、独自シリーズだけでなく、複数の大作や評価の高い作品を一つのハードに集めていました。そこへ本作の同時発売と期間限定独占コンテンツが加わり、Xbox 360を選ぶ理由は単一のタイトルにとどまらないものになったとMcCaffrey氏は見ています。
原文筆者は、Xbox 360にとって本作の存在は、販売面だけでなく文化的なピークを示す出来事だったのではないかと論じています。すでに強力なラインアップを持っていたハードに、当時PlayStationと結び付けられていたシリーズの最新作を同時期に迎え、さらに独占追加コンテンツまで確保したからです。後年のXbox 360を振り返るうえで、本作はその競争力と勢いを象徴するタイトルとして位置付けられています。