『Death Stranding 2: On the Beach』の販売不振が影響か、ソニーがKojima氏の新作から撤退
ソニーが小島秀夫氏の新規プロジェクトPhysintから手を引いた背景について、直近の作品の販売実績が判断材料になった可能性をアナリストが指摘しています。Physint自体は開発が続くものの、今後はPlayStationの競合であるXboxが支援する形となり、ソニーにとっては大型プロジェクトとブランドイメージの両方で痛手となりそうです。
Physintをめぐる異例の方針転換
Physintは、Metal Gear Solidシリーズで知られる小島氏が手がける次世代向けプロジェクトです。PlayStation Studios責任者のHerman Hulst氏と小島氏が並んで発表した大型タイトルでしたが、今回ソニーがプロジェクトから離れることになりました。開発そのものは中止されず、Xboxの支援を受けて継続されるとのことです。
この判断は、ソニーにとって広報面でも難しいものとなっています。発表時にはHulst氏と小島氏の握手が大きく注目された一方、最近のPlayStationでは、ディスクメディアをめぐる施策や、Destiny 2の開発体制に対する不満も広がっていました。そうした状況で、さらに期待を集めていた看板プロジェクトを競合に渡すことになり、コアユーザーからの反発を招く可能性があります。
続編の販売規模がソニーを慎重にさせた可能性
日本のゲーム業界コンサルタント会社Kantan GamesのCEO、Serkan Toto氏は、ソニーが判断を変えた理由として、Death Stranding 2: On the Beachの販売動向を挙げています。Toto氏はXへの投稿で、小島氏の作品には販売本数だけでは測れない宣伝効果があるとしつつ、「初代から続編への落ち込みが大きく、ソニーが警戒するには十分だったようだ」と指摘しました。
続編の正確な販売本数は、ソニーやKojima Productionsから公式には発表されていません。そのため、初代との単純比較には注意が必要です。Alinea Analyticsの新たな推計では、続編の販売本数は250万本とされています。一方、初代は2021年3月までに500万本を販売していました。さらに2025年3月時点では、サブスクリプションサービスの利用者や、Epic Games Storeで無料配布された際に入手したユーザーも含め、約2000万人がプレイしたとされています。
この「プレイヤー数」と「販売本数」は同じ指標ではありません。2025年3月の初代の数字には、購入せずに遊んだユーザーが含まれているため、続編の販売本数250万本と直接比較することはできません。それでも、Alinea Analyticsの分析では、続編は販売の伸びが鈍化し、複数回実施された大幅な値引きも販売を大きく押し上げるには至らなかったとされています。売上高も初代を下回っているとのことです。
Kojima Productionsは2026年7月、シリーズ2作品の累計プレイヤー数が2700万人に達したと発表しました。ただし、この数字も販売本数ではなく、サービス経由や無料配布を含むプレイヤー数です。こうした数字の違いを踏まえても、続編が初代の到達規模をさらに広げる結果にならなかった、という見方が示されています。
高額かつ長期化する開発への懸念
Physintの開発には、販売面だけでなく投資規模の問題もあると考えられています。小島氏は2025年、完成までなお5~6年かかる見通しを示していました。さらに、著名な俳優の起用に加えて、何らかの映画制作も関係する可能性が示唆されています。初代や続編と同様に大規模な制作体制と長い開発期間が必要になるなら、ソニーが費用に見合う収益を得られるかを慎重に見極めるのは自然だと分析されています。
Alinea Analyticsのアナリスト、Rhys Elliot氏は、PlayStationにとって今回の決定はコアユーザーから見れば好ましいものではないとしながらも、財務面では理解できる判断だとしています。Elliot氏によれば、初代の開発費は数千万ドル規模、続編はより長い開発期間や新型コロナウイルスの影響などにより、さらに大きな費用がかかったと市場では見られています。原文では具体的な金額の一部が欠落しているため、正確な開発費は確認できません。
同氏は、マーケティング費用や、PlayStation Studios内の開発者を長期間にわたって作品へ割り当てた機会費用まで考慮すると、シリーズは損益分岐点を超えたとしても利益は大きくなかった可能性があると説明しています。現在のソニーでは利益率が重視されており、過去数年の大型タイトルの不振や中止が、出資判断を厳しくしているとの見方です。
Xboxにとっては大型のブランド獲得に
Elliot氏は、Concordの中止による巨額の損失や、Marathon、Saros、Marvel Tokon、Lego Horizon Adventuresなどの販売実績を挙げ、PlayStation Studiosが大型プロジェクトへの投資に慎重になっていると分析しています。原文ではこれらの作品について、Marathonは180万本、Marvel Tokonは72万5000本、Lego Horizon AdventuresはSteamとPS5の合計で25万本未満とされていますが、一部の金額表記は欠落しています。
Physintの開発費を引き継ぐことになるXboxにとっても、長期的な負担は残ります。ただし、ブランド面では大きな意味を持ちます。Xboxは人員削減やスタジオ閉鎖、複数プロジェクトの中止が相次いだ時期を経ており、今回のニュースによって次世代機向けの大型タイトルを確保した印象を打ち出せます。Physintは、Xboxの次世代プラットフォーム「Project Helix」における看板作品、あるいはコンソール独占タイトルになる可能性があるとされています。
The Game BusinessのChristopher Dring氏は、今回の件を「小島氏のゲームは利益率のために契約するものではなく、ブランドの信頼性を高めるためのものだ」と評しました。ソニーにとっては投資負担を抑えられる一方、長年築いてきた先進的なゲームブランドとしての立場を損なうリスクがあります。Physintが今後どの規模で開発され、Xboxでどのような展開を見せるのかが、今回の方針転換の成否を左右しそうです。