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『Grand Theft Auto: Vice City』がシリーズにもたらした1986年の熱狂と大幅な進化

2026年09月11日 | #レビュー | IGN

『Grand Theft Auto: Vice City』がシリーズにもたらした1986年の熱狂と大幅な進化

2002年に登場した『Grand Theft Auto: Vice City』は、前作からわずか12カ月で発売されたとは思えないほど大きな進化を遂げた作品です。舞台を1986年のマイアミ風都市へ移し、乗り物や武器、ミッション、物語の見せ方を一気に広げたことで、シリーズの個性を決定づけました。原文筆者は、長い年月を経て再びプレイしても、その音楽と世界観、そして主人公トミー・ベルセッティの存在感は色あせていないと評価しています。

1年で拡張版から本格的な続編へ

本作が特別なのは、前作Grand Theft Auto IIIの成功を受けた単なる追加コンテンツではなく、短期間でシリーズの次の段階を作り上げた点です。開発チームは当初、PC版Grand Theft Auto IIIの完成後に、新しい車両や武器、ミッションを収録したミッションパックを検討していました。しかし、盛り込める内容があまりにも多くなったため、拡張版では収まらない本格的な続編へと方針が変わったとされています。

その結果として生まれたのが、現代を舞台にしていた前作から一転し、1986年のバイスシティを描く作品でした。厳密には前日譚とも呼べる構成ですが、原文筆者は呼び名にかかわらず、発売当時も現在も驚くべき作品だとしています。2002年のPlayStation 2向けタイトルとして、前作からわずか1年でこれほど大規模な変化を実現したこと自体が、現在のゲーム制作では考えにくい時代の象徴だという見方です。

本作では、シリーズに期待される乗り物の幅が大きく広がりました。バイクがトップビュー時代以来の再登場を果たしたほか、ヘリコプターや水上飛行機などの航空機も操縦できます。服装の変更、物件の購入、ゲーム内マップも導入され、紙のマップと画面上のマップを併用する時代ならではの構成も特徴です。前作の仕組みを受け継ぎながら、街でできることと移動の楽しさを増やしています。

車両の操作感も原文筆者が高く評価している部分です。バイクはコーナーへ勢いよく滑り込ませても急にグリップして運転者を投げ出すような挙動になりにくく、積極的に車体を振り回せます。自動車は前作よりも鋭く反応しながら、車体の重量感も備えているとのことです。オープンワールドのアクションゲームでは、移動時間が長くなるからこそ、運転そのものが気持ちよく感じられることが重要であり、本作はその部分を確実に改善しています。

トミー・ベルセッティが変えた物語のテンポ

前作との大きな違いは、主人公が声を持つキャラクターになったことです。前作では、主人公が無言のまま周囲の人物から一方的に指示を受ける場面が多くありました。それに対して本作のトミー・ベルセッティは、会話に反応し、感情を表し、自分の野心を言葉にします。声を担当したのは、映画グッドフェローズなどで知られるレイ・リオッタです。

トミーの目的も前作の主人公とは異なります。前作が巨大な街で生き残る小さな存在の物語だったのに対し、トミーはバイスシティで成り上がり、街全体を支配しようとします。単に危機から逃れるのではなく、自分の勢力を拡大していく主人公として描かれるため、ミッションを進める動機がより明確です。会話のテンポや登場人物同士の応酬も軽快になり、物語には犯罪映画やテレビドラマのような勢いが生まれています。

キャストにはレイ・リオッタのほか、トム・サイズモア、デニス・ホッパー、バート・レイノルズ、ウィリアム・フィクナー、ロバート・デヴィ、ルイス・ガスマン、ゲイリー・ビジー、リー・メジャース、ダニー・トレホらが参加しています。ランス・ヴァンスを演じるのは、Miami Viceでリカルド・タブスを演じたフィリップ・マイケル・トーマスです。著名な映画俳優をゲームの登場人物に起用する手法が、とくに強く表れていた時期の作品だといえるでしょう。

物語全体は、Miami Viceやスカーフェイスといったマイアミ犯罪作品への敬意を隠そうとしていません。ディアスの邸宅や、手配度が3つ星まで上がった際に現れる私服の警察官とスポーツカーなど、元ネタを連想させる演出が随所に盛り込まれています。原文筆者は、その露骨なまでの引用や再構成を、本作の魅力を損なうものではなく、むしろ作品の方向性を明快にする要素として捉えています。

1986年を体験させる街と音楽

本作の最大の武器は、単に1980年代を舞台にしたことではありません。角ばった高級スポーツカーや大型のアメリカ車が太陽の光を反射し、革のジャンプスーツを着た歩行者が通りを歩き、ヤシ並木とパステルカラーの建物が広がる街を、プレイヤー自身が車やバイクで走り回れる点にあります。前作のリバティーシティにあった密集した灰色の都市とは対照的に、バイスシティは明るく開放的です。

もちろん、その明るさの下にはチェーンソーによる惨劇、カルテル同士の争い、コカイン、安価なポルノといった犯罪都市の暗部があります。まぶしい海辺の風景と不穏な裏社会を同じ街に配置したことで、単なる懐古趣味ではない独特のコントラストが生まれました。原文筆者は、衣装、道路、車、日差し、音楽が同時に機能することで、本作が過去を眺めるだけの映像作品ではなく、過去の時代を歩き、運転し、暮らすための体験になったと説明しています。

1980年代へのノスタルジーを本作が生み出したという見方については、原文筆者は慎重です。映画やテレビでは、本作以前から1970年代や1980年代を振り返る作品が複数存在しており、Rockstarがレトロ趣味を発明したわけではないとしています。ただし、映画やテレビが決められた時間だけ過去を見せる媒体なのに対し、本作ではプレイヤーが街を自由に探索できます。そこにゲームならではの違いがあり、1986年という過去を自分の行動で体験できる点が、本作を際立たせています。

その没入感を決定的なものにしているのが、ライセンス楽曲を使ったサウンドトラックです。原文筆者は、車に乗っている時間だけでなく、ミッションの印象まで音楽が変えてしまうと評価しています。たとえば、ワシントンビーチの裏通りをダートバイクで追跡する場面で、激しいチェイスには必ずしも合わないと思える99 Luftballonsが流れても、実際にはその組み合わせが非常に効果的に働きます。

楽曲はプレイするたびにミッションの雰囲気を変えます。ラジオから流れる曲が、特定の人物や場面と結びついて記憶されることもあります。原文筆者は、本作のサウンドトラックをGrand Theft Autoシリーズで最高のものとし、ゲーム全体を見渡しても屈指の出来だと評価しています。一方で、後年の再発売版やリマスターでは、最初に収録されていた楽曲の一部が削除されたことを残念な点として挙げています。

操作面の弱点と、それでも揺るがない評価

すべてが完璧というわけではありません。銃撃戦では自動照準が便利に働く一方、敵ではなく、プレイヤーが現場まで連れてきた味方を狙ってしまう場合があります。目の前にいる警察官より、遠くで逃走しているバイクの敵を優先するなど、当時のシリーズ特有の照準の癖も残されています。こうした挙動が原因でミッションを失敗することもあり、原文筆者は戦闘について現在も好悪が入り混じるとしています。

ミッション途中のチェックポイントもありません。失敗すれば最初からやり直す必要がありますが、直前に失敗したミッションの開始地点までタクシーで移動できる仕組みが追加されました。繰り返し同じ道を運転する手間を減らし、プレイヤーの時間を尊重する改善です。マップ上の特定区間を何度も往復させられることで、その場所自体を嫌いになってしまう危険も抑えられています。

本作は、当時新たに改称された開発チーム、Rockstar Northにとって最初の作品でもあります。スタジオの歴史をたどると、起源は初期のGrand Theft Autoを手がけたDMA Designにさかのぼり、エディンバラの拠点として設立された経緯があります。1980年代から続く開発チームが、1980年代を象徴する作品を最初の公式プロジェクトとして送り出したことには、偶然ながらも印象的なつながりがあります。

原文筆者がとくに強く記憶しているのは、ゲーム序盤に初めて車へ乗り込む場面です。車内ラジオからMichael JacksonのBillie Jeanが流れ、プレイヤーは一瞬で本作の時代へ引き込まれます。偶然選ばれたように感じられる演出ですが、実際にはその場面で必ず同曲が流れるよう設計されていたとのことです。後年の再発売やリマスターで削除される前は、多くのプレイヤーが同じ体験を共有していました。

乗り物、武器、ミッションの多様性、著名な俳優による声の演技、1986年の空気を再現する街並み、そして強烈なサウンドトラック。本作は前作の革新性を受け継ぎながら、シリーズがどんな個性を持つのかをはっきり示しました。過去へ戻る設定でありながら、Grand Theft Autoというシリーズにとっては大きな前進だったというのが、原文筆者の結論です。