レベルファイブが生成AI利用を認め謝罪、開発期間短縮のため活用
レベルファイブの新作発表で、映像の一部に生成AIを使ったのではないかという疑念が広がり、紹介されたゲームそのものよりAI利用への批判が注目を集めています。日野晃博社長兼CEOは生成AIの利用を認めたうえで謝罪し、シナリオやキャラクターデザインなど作品の核となる部分は人間が制作していると説明しました。ただし、AIを開発工程で使うこと自体への反発は収まっていません。
発表映像をきっかけにAI利用への疑念が拡大
問題の発端は、今週開催された「Level5 Vision 2026 II: Dreams」です。約50分にわたるNintendo Direct形式のプレゼンテーションで、レイトン教授のリメイク作品、Yo-Kai Watch 2: Haunted Domain、DecaPoliceなど、レベルファイブが手がける新作や関連タイトルの映像が紹介されました。
その映像を見たファンの間で、背景などの一部に生成AIを使ったように見える素材が含まれているのではないかという指摘が相次ぎました。疑念の対象となったのは主に背景場面で、ゲーム全体のアートや物語がAIによって作られたと確認されたわけではありません。しかし、視聴者が映像を見て「これはAIで生成されたものではないか」と疑わざるを得なかったこと自体が、大きな議論につながりました。
Xでは、レベルファイブの復活とレイトン教授、DecaPolice、妖怪ウォッチなどの新展開を楽しみにしていたというファンから、「これほど露骨に生成AIが使われているのを見ると、期待していたものとは違う」といった批判が投稿されました。別のファンは、かつては魅力的なスタジオだったのに、いまは失望させられたとして、AI利用を望んでいないと強く反発しています。
日野氏が利用を認め、用途を説明
プレゼンテーションで自身のアニメーションアバターを使って司会を務めた日野氏は、騒動を受けてXで説明を公開しました。日野氏は、今回の生成AIの積極的な利用について「最新技術への実験」と位置づけ、不快に感じたファンに対して謝罪しています。
一方で、レベルファイブの作品の魅力や個性を形作る要素は、これまでどおり人間が制作していると強調しました。日野氏の説明によれば、シナリオ、キャラクターデザイン、作品の基本設定などはすべて人の手によるもので、AIは主に人間が作成した素材をデジタル化する工程の効率化に使っているとのことです。具体例として、原画を正確に3Dポリゴンモデルへ変換する作業が挙げられています。
日野氏は、発売するゲームにAIが単純に生成したコンテンツをそのまま収録しているわけではないと説明しました。また、AIによって作業時間を短縮できれば、クリエイターが創造性の本質により多くの時間を割けるとも主張しています。今回の取り組みは、完成したゲームをファンに楽しんでもらうことを目指したものだとしています。
レベルファイブがAI活用を進めた背景には、大型タイトルの開発期間を短縮したいという事情もありました。日野氏は、AIによる効率化によって、現在は5年ほどかかっている大型タイトルの開発サイクルを2年まで短縮することを目指していると説明しています。長期化するゲーム開発を効率化し、より早く作品を届けることが狙いです。
「見栄えを優先した」として今後の改善を約束
日野氏は今回の発表について、視覚的に印象的で内容を理解しやすいプレゼンテーションにしたいという意図から、AIを大規模に利用したことは否定できないとしています。そのうえで、今回の経験を今後に向けた学びとし、次回のプレゼンテーションに反映させる考えを示しました。
ただし、説明後もレベルファイブのファンコミュニティでは批判が続いています。AIが作品の中心部分を作ったかどうかにかかわらず、開発工程で生成AIを使うことそのものに懸念を示す声が目立ちます。AIを使ったゲームは、たとえ完成度が高くても、ファンの中に「どの画像、音楽、台詞がAI製なのか」という疑念を残し続けるのではないか、という意見も出ています。
批判的な投稿では、生成AIが多数のアーティストの作品を無断で学習し、技術企業がその成果を利益につなげているという問題が指摘されています。そのような技術を利用することは、結果的にアーティストの仕事を置き換え、作品を支えた技能から利益を得ることになるという主張です。
日本語で投稿された別の意見では、市場に作品を出すまでの速さよりも、人間の心を込めた制作のほうが重要だと訴えられました。AIを使わず5年かけて開発するほうがよく、たった1つでもAIで作られた素材が含まれていれば、作品への信頼を失うのではないかという内容です。日野氏は現時点で、今後どの工程でAIを使うのか、あるいは利用範囲をどう見直すのかという具体的な計画までは示していません。
今後の作品とAI方針に注目
レイトン教授のリメイク作品は、2007年に発売された初代作品をもとにしたタイトルで、PCおよびコンソール向けに2027年の発売が予定されています。シリーズの別の新作であるThe New World of Steamは、12月の発売予定です。
今回の発表では、AIを使った素材の範囲や、個別のゲームでどの工程に生成AIを適用したのかまでは明らかにされませんでした。レベルファイブは人間が作品の核を作っていると説明していますが、ファンが問題視しているのは、最終的な設定や物語だけでなく、制作に使われる技術とその背景です。開発期間の短縮と創作への集中を掲げる同社の方針が、作品への信頼を損なわずに受け入れられるかが、今後の発表で問われることになります。