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Valveの非上場経営、ゲイブ・ニューウェルが語った「最高額の人材」重視

2026年09月15日 | #その他 | GamesRadar+

Valveの非上場経営、ゲイブ・ニューウェルが語った「最高額の人材」重視

Valve創業者ゲイブ・ニューウェル氏が、同社を株式上場させず、世界で最も高価な人材を採用する方針を選んだ理由を語る過去の映像が、いま改めて注目を集めています。大量解雇や、サービスの質が徐々に低下していく「エンシッティフィケーション」への不満が広がるなか、従業員への投資を優先する同氏の発言に共感する視聴者が増えているようです。Valveの経営思想は、単なる企業論にとどまらず、Half-Lifeの開発体制や作品の設計にもつながっていました。

10年以上前の講演が再び拡散

今回拡散しているのは、YouTubeチャンネルWebKnowerが公開した「Gabe Newell Explains Why Valve Never Went Public」と題する動画です。同チャンネルは以前、Linuxの生みの親として知られるリーナス・トーバルズ氏の短い動画を主に投稿していましたが、最近はアルゴリズムの後押しもあってニューウェル氏に関する映像を相次いで扱っています。この動画は公開から4日で130万回以上再生され、同チャンネルで最も視聴された動画になったとされています。

映像の発言は、テキサス大学のLBJ公共政策大学院で行われた講演から抜き出されたものです。元の講演は62分にわたり、「生産性、経済、政治制度、そして企業の未来」をテーマにしていました。今回の短い動画では、なぜValveが株式を公開しなかったのか、どのような人材を採用すべきだと考えていたのかが中心に紹介されています。

ただし、原文筆者は、こうした再発見された短い映像だけでは発言の全体像をつかみにくいと指摘しています。ニューウェル氏の過去の発言は、健康上の問題を抱えていたPortalのライターに対して退職ではなく改善を求めたという逸話など、文脈から切り離された状態で再び広まることがありました。今回の講演についても、短い切り抜きの背景には、Valveの組織設計や人材への考え方全体があります。

低コスト化ではなく「最も高価な人材」

ニューウェル氏は、Valveが一般的なコスト削減策とは逆の方向を目指してきたと説明しています。講演では、当時のテクノロジー業界で、インドや中国の低コストなコンテンツ制作者を採用しようとする動きが強まっていたことに触れ、Valveはその反対を目指していたと語りました。

同氏の考えでは、映画制作などですでに高い成果を上げている人材がValveに移るなら、その人が生み出せる価値に見合う、より高い報酬を支払うべきです。具体的な報酬額にも言及していますが、今回参照された記事では数値部分が欠落しており、確認できません。重要なのは金額そのものではなく、安価な労働力を大量に確保するのではなく、能力が正しく評価されていない最高水準の人材に投資するという方針です。

ニューウェル氏によると、この発想はValveの創業期から存在していました。1996年ごろ、同氏と共同創業者のマイク・ハリントン氏は、保険会社や航空会社、シリコンバレーのスタートアップ企業などを調査しました。その結果、さまざまな企業が外部委託によって、世界のどこかにいる最も安い英語話者を探す方向へ進んでいると感じ、それは正しいやり方の逆だと判断したとしています。

講演でニューウェル氏は、Valveが「世界で最も高価な人材を買う」ことを選んだと説明しました。高い能力を持つ人々は、必ずしも市場から正しく評価されているとは限らず、そうした人材を迎え入れることこそが大きな機会になるという考えです。Valveにとって、従業員は単なるコストではなく、会社の価値を増やすための中心的な投資対象でした。

その例として挙げられたのが、Half-Lifeのプログラマーであるヤーン・ベルニエ氏です。ニューウェル氏は、AIエージェントが存在しなかった時代に、ベルニエ氏が1日4000行のコードを出荷していたと語りました。単純な作業量だけを評価しているわけではなく、突出した生産性を持つ人材を見つけ、引き留め、能力を伸ばすことがValveの重要な課題だと説明しています。

非上場と肩書きの少ない組織が開発を変える

ニューウェル氏が非上場を選んだ理由は、株式市場を避けたいという感情論だけではありません。Valveが株式を公開すれば、投資家や取締役会といった第三者が意思決定に関与することになります。同氏は、上場によって新たな問題が解決されるわけではない一方、判断に多くの手間が加わり、採用方針や社内の承認手続きまで外部の都合に合わせて変わる可能性があると説明しました。

講演では、非上場企業であることについて、消費者と製品を作る側の間に生じる「ノイズ」を取り除く仕組みだとも語っています。製品を利用する人々にとって何が最善かを考える際、短期的な投資家の期待や、株主への説明責任が判断の間に入り込まないことが重要だという意味です。これは、ニューウェル氏が以前から語ってきた、海賊版も価格の問題ではなくサービスの問題として捉える考え方とも通じています。

さらにValveでは、従業員の肩書きや担当領域を厳格に固定しない組織づくりが行われているとされます。ニューウェル氏は、骨格アニメーションのシステムを設計した人物が美術学士でもあり、環境アートも制作できたという例を紹介しました。プログラマーはコードだけ、アーティストは絵だけというように役割を分けるのではなく、課題を最も解決しやすい方法で担当できるようにする考え方です。

この方針がHalf-Lifeに与えた影響について、ニューウェル氏は、初代Half-Lifeの体験の一部は、開発者が環境、コード、アニメーションのどれでも変更できたことから生まれたと説明しています。問題を解決するために最も適した領域へ自分の能力を持ち込めたからこそ、作品内の体験を柔軟に調整できたというわけです。肩書きによって担当範囲を狭めると、問題を適切な形で捉え直す機会まで失われるとしています。

業界の混乱のなかで再評価されるValveの姿勢

原文筆者は、ゲーム業界全体が不安定化し、特に株式上場企業を中心に大規模なレイオフが相次ぐ現在、Valveのやり方を完全に否定するのは難しいとしています。Steamを軸にしたValveの存在感が高まる一方で、同社も時代の圧力から無縁ではありません。エンジニアのヤザン・アルデハイヤット氏は、AI需要によるメモリ不足がさらに悪化し、Steam Machineのローンチにも影響したと警告しています。

ニューウェル氏自身も最近、AIが生産性に与える影響について発言しています。AIツールに慣れたプログラマーが、実際のプログラミング経験では上回る人よりも効率的に働く可能性があるという、従来とは異なる状況が起きるかもしれないと予測しました。AIをめぐる変化が進んでも、どの人材が最も大きな価値を生み出すのかを見極めるというValveの課題は、形を変えながら残り続けそうです。