桜井政博氏がゲームデザイナーズ大賞から退任へ 後継者不在で16年の歴史に幕
日本ゲーム大賞の独創性を評価する「ゲームデザイナーズ大賞」が、今年を最後に終了することになりました。2010年の創設以来選考を担ってきた桜井政博氏が、後任を見つけられなかったことが理由です。最終受賞作には、繁体字中国語の作品を日本向けにローカライズしたTeam9のテキストパズルゲーム「Word Game」が選ばれました。
桜井政博氏が16年間選考を担当
ゲームデザイナーズ大賞は、桜井氏が2010年に創設した賞です。CESAの公式サイトによると、既存作品から明確に離れた新しいアイデアを取り入れ、プレイヤーがゲームを楽しみ、遊ぶ方法そのものを広げた作品を評価するものとされています。単に販売規模や知名度を競うのではなく、ゲームという表現に新しい可能性を示したタイトルを対象にしてきました。
受賞作は、普段から積極的にゲームを遊ばない人を含め、幅広い人々に訴えかけ、その年に印象的な成果を残した作品から選ばれます。日本ゲーム大賞には大賞など複数の部門がありますが、ゲームデザイナーズ大賞は、とりわけ創造性や独自性に焦点を当てた部門として位置づけられていました。
桜井氏は今年の発表で、賞の創設から16年が経過したことに触れたうえで、「今年がこの賞を実施する最後の年です。理由は、私に代わってくれる人がいない、それだけです」と説明しています。今後も賞の意義を保つには、革新的なゲームを生み出し、ゲームプレイを大きく変えたディレクターが選考を担う必要があると考えているとのことです。
後継者を数年探すも見つからず
桜井氏によれば、後任候補を見つけるために自ら声をかけたほか、後継者を募るためのプレゼンテーションも行ってきました。しかし、数年にわたって探しても、役割を引き継ぐ人物は現れなかったとしています。ほかにも審査員はいるものの、桜井氏に代わって賞の理念を背負い、候補作を選び続けられる人物はいなかったという状況です。
今年の審査委員会は、神谷英樹氏、ヨコオタロウ氏、Toby Fox氏らゲーム業界のベテランを含む11人で構成されました。それでも桜井氏は、賞の継続には単に審査員の人数をそろえるだけでは不十分で、革新性を見極める立場にふさわしい後継者が必要だと判断したようです。
この決定について桜井氏は、ゲーム開発は常に実験の連続であり、難しい試みを何度も続ける営みだと説明しました。大賞のように注目を集めやすい賞がある一方で、ゲームの別の側面を示す賞も必要だとし、革新性は必ずしも利益につながらないため評価されにくいとの見方を示しています。
最終受賞作は「Word Game」
最後のゲームデザイナーズ大賞に選ばれたのは、インディー開発スタジオTeam9の「Word Game」です。もともとは繁体字中国語で制作されたテキストベースのパズルゲームで、日本のプレイヤー向けにローカライズされています。
CESAは、ゲームの仕組みだけを見ると日本語でしか成立しないように思える作品が、実際には繁体字中国語のタイトルを翻案したものだった点を高く評価しました。言語や文化の違いを越えて遊びとして成立させるには、高度な技術と巧みな解決策が必要だったとしています。
審査では、候補を絞り込んだ2次選考の段階でも圧倒的多数の票を集めました。CESAは、独自性が高く、ほかの作品では代替しにくいゲームであることから、最後の受賞作にふさわしいと説明しています。
革新的な作品をどう評価するか
桜井氏は、革新的なアイデアが利益に直結するとは限らない点を強調しました。新しい飲み物が登場しても、多くの人は毎回それを選ぶのではなく、普段から慣れ親しんだものを手に取るというたとえを用い、創造性や新規性が広く認められるまでには難しさがあると語っています。
一方で、業界から創造性や革新性が失われれば、ゲーム業界全体が徐々に衰退していくとも指摘しました。新しい発見や挑戦を続けることが、業界を新鮮で活気ある状態に保つために欠かせないという考えです。別の通訳を通じて、賞がなくなった後もプレイヤーには創造的なゲームに関心を持ち続けてほしいとの希望も伝えられました。
過去3年の受賞作は、Sad Owl StudiosのViewfinder、Odd MeterのIndika、RPG Time: The Legend of Wrightです。今回の終了を惜しむ声が上がる一方、桜井氏が新たなプロジェクトに注力するのではないかと期待するファンもいるとのことです。新作の噂が取り沙汰されているシリーズを含め、今後の活動に注目が集まっています。