『Heroes of the Storm』が再始動、数年ぶりの新ヒーローXal’atath登場
長く新コンテンツが途絶えていた『Heroes of the Storm』が、数年にわたる小規模な立て直しを経て再始動しました。BlizzCon 2026のオープニングセレモニーでは、2020年12月以来となる新ヒーローとして、World of WarcraftのXal’atathが発表されています。大規模な復活計画を一気に打ち出すのではなく、バグ修正やバランス調整を積み重ね、コミュニティの反応を確かめながら開発を続けてきた点が今回の動きの特徴です。
長い停滞から再建へ
本作は、Warcraft 3のカスタムゲームから発展したDota 2やLeague of Legendsに対抗する作品として登場しました。しかし、BlizzardはMOBAブームへの参入が遅く、World of WarcraftやOverwatchのようにジャンルを代表する存在にはなれなかったと原文筆者は説明しています。2015年に開発チームへ加わったJames Yenも、プレイヤー対応を担当するWorld of Warcraftのゲームマスターから、ゲーム開発に本格的に携わる最初の機会として本作に参加した人物でした。
Yenは2017年にチームを離れ、HearthstoneやBlizzard作品のリマスターに関わるようになります。その一方で、Blizzardは2018年に本作の開発規模とeスポーツ支援を大幅に縮小すると発表しました。2020年12月以降は新ヒーローの追加も止まり、サービス自体は継続していたものの、新しいコンテンツがほとんどない状態が続いていたとのことです。
状況が変わり始めたのは2022年です。Yenはリードゲームプロデューサーとして本作の開発に戻り、Blizzardから置き去りにされたように見えたゲームを立て直す役割を担いました。YenはPolygonに対し、当時のチームはコミュニティが経験してきた浮き沈みを理解したうえで、「持続可能なプロダクトにすること」を使命として再出発したと話しています。
現在のチームは、Yenが「小規模で情熱的なグループ」と表現する開発者たちで構成されています。再びコンテンツを作るには、プレイヤーから見える要素だけでなく、ゲームの基盤や開発ツールそのものを改善する必要がありました。そのためBlizzardは、すぐに新コンテンツを追加するのではなく、しばらく更新を控えて内部の準備を進めています。結果として、アップデートが1年以上静かな時期もありました。
バグ修正から始まった復活
基盤の整備が進んだことで、2023年9月からパッチ配信が再開されました。以降はおよそ月1回のペースで更新が行われ、最初はバグ修正が中心となり、その後にバランス調整へと範囲が広がっています。新ヒーローを何年も追加できていない段階で、まず不具合への対応を優先したことについて、Yenはゲームを改めて理解するための最善の方法だったとしています。
修正内容が実際のゲームプレイに影響を与えるようになると、コミュニティにも変化が表れました。Yenは、アップデート後の小さな変更を取り上げるYouTube動画が投稿され、プレイヤーの間に反応や話題が生まれたことを振り返っています。そうした反応がチームの後押しとなり、「もうヒーローを作ってもいい」と判断できる段階に到達したとのことです。
この取り組みは、Blizzardがチームに本作の開発を禁じていたために遅れたという単純な話ではありません。Yenによれば、チーム側がまず納得できる成果を示す必要がありました。バグ修正、バランス調整、開発環境の改善を積み重ねたうえで、会社に対して「ここには良いものがある」と説明できる状態を目指していたとしています。
Yenが2022年以降に重視してきたのは、将来の大規模な計画を先に発表することではなく、現在のゲームとプレイヤーの反応を一つずつ確認する姿勢です。長期間にわたって新展開がなかった作品だけに、いきなり大きな約束を掲げるのではなく、実際に更新を続けられる体制を作ることを優先した形です。
新ヒーローXal’atathの方向性
チームが新ヒーローの制作に踏み切ったのは、発表からおよそ1年前でした。候補としてはOverwatchやDiablo 4のキャラクターも検討されましたが、最終的にはWorld of Warcraft: Midnightに登場する主要な敵キャラクター、Xal’atathが選ばれています。Yenは彼女の「暗く邪悪な雰囲気」に惹かれ、本作ではさらに皮肉屋の一面を強めたいと考えたと説明しています。
Xal’atathが持つオーブを使った攻撃も、ゲーム内のアビリティを考えるうえで大きな手がかりになりました。World of Warcraft側の開発者から、彼女の要素をどのように実装へ落とし込むかについて意見を受けながら制作が進められたとのことです。Blizzard作品間のつながりを利用しつつ、本作のゲームプレイに合わせてキャラクターを作り直した形だといえます。
ただし、最初から現在の性能に決まっていたわけではありません。当初はサポート型のヒーローとして設計されていましたが、プレイテストではそのバージョンが面白くないと判断されました。チームは方針を変更し、遠距離から攻撃するアサシン系のキャラクターとして再構成しています。レーンを制御できる範囲攻撃を持たせたところ、当初の案よりも良い手応えが得られたとしています。
原文筆者はBlizzConでXal’atathを実際に操作し、扱いやすさを重視した入門向けのキャラクターではないと感じたそうです。Yen自身も、Xal’atathは中程度から複雑な難度のキャラクターであり、深いコンボとシナジーを持つと説明しています。単純な操作で性能を発揮する新キャラクターではなく、既存プレイヤーが研究しながら使い込むことを想定した設計です。
この方向性について、Yenは新規プレイヤーよりも、長年本作を遊び続けてきたプレイヤーに応えることを優先したとしています。簡単なキャラクターを追加しても、既存のファンにとって必ずしも楽しいとは限りません。長く遊んできたプレイヤーが楽しめるヒーローを作ることが重要であり、そのプレイヤーたちこそ作品を広める力になるという考えです。
Xal’atathはBlizzConのオープニングセレモニーで大きく紹介され、Blizzard社長のJohanna Fariesからも直接紹介されました。すでにPTR(パブリックテスト領域)でプレイ可能となっており、全プレイヤー向けには9月28日に配信される予定です。
今後の更新は反応を見ながら継続
Fariesはセレモニーで、近い将来に新たなヒーローが登場する可能性にも触れています。ただし、YenはBlizzConでの取材に対し、次のヒーローが近く実装されると明言することは避けました。グループインタビューでも個別インタビューでも、具体的な名前や時期を明らかにはしていません。
その代わり、Xal’atathの実装後は現在のプレイヤー層に注目し、更新に対する反応を確認していく方針を示しています。数年かけてゲームを立て直したにもかかわらず、新ヒーローを1体追加して終わるのであれば、今回の取り組みは一度きりの復活に見えてしまいます。しかしYenは、今後の計画と自分の中で想定している日程があると話しており、将来の開発を完全に否定したわけではありません。
一方で、具体的なロードマップは提示されていません。Yenはゲーム開発では計画や日程があっても、実際には予定どおり進まないことがあると説明しています。マーケティング上は特定の時期に合わせたい場合でも、最終的にはどのヒーローが面白いのか、コミュニティが楽しめるのかを優先して判断するとのことです。次の作品や拡張との連動についても、詳細は明らかにされていません。
Yenが繰り返し示しているのは、コミュニティの熱量に合わせてコンテンツと開発を続けるという持続可能性重視の方針です。大きな復活宣言の後に更新が止まることを避けるため、プレイヤーの反応を見ながら規模や内容を調整していく考えです。現時点では、次のヒーローやコンソール版の計画が確定したという情報はありません。
本作の再始動は、突然の大型発表によって実現したものではありません。小さなチームが開発基盤を整え、バグ修正を続け、バランス調整でプレイヤーの反応を確かめ、その先で複雑な新ヒーローを完成させるという段階を踏んできました。Yenは、長い間ファンから「もう存在しない」と思われていた作品に対し、今回の発表をきっかけに戻ってきて、再び楽しんでもらえればうれしいとしています。