『War Thunder』歩兵モードを開発中、車両中心の戦場に新たな戦闘を追加
約14年にわたって航空機や戦車、艦艇を拡張してきた『War Thunder』が、ついに歩兵を組み込む大規模な変化へ進もうとしています。Gaijin Entertainmentは、車両だけで構成されてきた本作に歩兵戦を加える「The Line of Contact」を開発中で、現在は初期テストの段階にあると説明しました。長年の運営で完成を迎えたのではなく、ゲーム内に新しいゲームを作るほどの規模で、戦場の構造そのものを広げようとしています。
10年以上続く車両戦に歩兵を追加
Gaijin Entertainmentによると、歩兵モードの追加は、現実の軍事作戦に近い総合的な戦場を目指すうえで自然な発展だったとのことです。現時点でも装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車など、歩兵とともに戦うことを前提に設計された車両が多数登場しており、プレイヤーからも歩兵を加えてほしいという要望が継続的に寄せられていたとしています。
一方で、歩兵は単純に既存の車両戦へ追加できる要素ではありません。銃撃、遮蔽物、対戦車兵器、歩兵向けのマップ構造などを新たに用意する必要があり、Gaijinは「ゲームの中に別のゲームを作る」ほどの作業になったと説明しています。そのため開発を急がず、現在は初期テストを進めながら、戦闘の手触りやバランスを検証している段階です。
歩兵モードは、既存の本作チームとは別に編成された社内チームが担当しています。シューター開発の経験を持つ業界のベテランが参加しており、歩兵モードの開発によって既存モードのアップデートや改良に使える人員が減っているわけではないとのことです。ただし、プロデューサーを含む本作の主要スタッフが開発を監督し、リアリティと軍事的な雰囲気を重視するブランドに合ったシューターになるよう調整しているとしています。
戦車と歩兵を両立させるマップ設計
最大の課題のひとつは、10年以上にわたって調整されてきた軍用車両と、歩兵を同じ戦場で成立させることです。Gaijinは、現実の戦場では戦車や装甲車両が歩兵とともに行動し、あるいは歩兵を相手に戦うため、兵器の本来の用途をバランス設計の基準にすると説明しました。車両の機銃や榴弾など、歩兵への攻撃を想定した副武装も重要な要素になる見込みです。
将来的には、地上車両を歩兵戦へ幅広く投入できるようにすることも目標に掲げています。ただし、強力な車両をそのまま配置すれば歩兵が不利になるため、マップ設計が大きな鍵になります。対戦車兵器を持つ歩兵が身を隠せる遮蔽物を十分に用意しながら、車両側が待ち伏せから逃げたり、火力を発揮したりできるだけの開けた空間も必要です。
この両立を実現するため、歩兵が常に一方的に狙われる場所や、逆に車両が進入しただけで破壊される場所を避けなければなりません。歩兵に戦う機会を与えつつ、車両の速度や装甲、火力が意味を失わない地形を作る必要があり、単なる既存マップの流用では対応しにくい部分です。新モードのテストでは、こうした戦場の密度と交戦距離が重点的に検証されることになりそうです。
小さな数値変更が戦場を変えるバランス調整
本作では、車両の戦闘力を示すレーティングが対戦相手の組み合わせに影響するため、数値の変更が予想以上の結果を招くことがあります。Gaijinは、単純な小規模の数値変更が常に大きな差を生むわけではないとしつつ、戦車の後退速度を1桁分変更したり、航空機のエンジン出力を変えたりするような単純かつ重要な変更は、戦闘結果を大きく左右する場合があると説明しました。
特に影響が大きいのは、車両の戦闘レーティングをたった1段階動かすケースです。レーティングが変わると、それまで有利に戦えていた相手ではなく、性能上の弱点を突いてくる敵と遭遇する可能性があります。反対に、評価を下げた車両が相手を圧倒してしまうこともあり、わずかな変更でもマッチング全体の意味が変わります。
過去の例として挙げられたのが、プレイヤーの提案をもとに導入され、後に削除された「Last Man Standing」です。戦車の乗員が最後の1人になっても車両を操作できるようにする仕組みでしたが、見た目には小さな変更でも、戦闘の進み方と生存性を大きく変えました。導入後は戦闘全体が長引くようになり、プレイヤーから強く不評だったため、最終的に撤去されたとのことです。
調整が難しい車両としては、性能の方向性が極端に分かれている機体が挙げられています。たとえば、飛行性能とミサイルは優秀なのに、レーダー警戒受信機が旧式の航空機は、低いレーティングでは過度に強く見える一方、レーティングを上げると探知できないレーダーを持つ相手と戦うことになります。統計上は評価を上げるべきでも、実際の使い勝手が急落してしまうため、性能と対戦環境の両方を見ながら調整しなければならないとしています。
VRやコラボで広げてきた展開
本作は、車両シミュレーションと相性がよい新技術として、初代Oculus Riftの時代からVRにも取り組んできました。Gaijinは、VRが深い没入感を生む一方、技術面だけでなく操作方法やゲームデザインまで一体で整えなければ、快適な体験にはならないと説明しています。VRゲーム全体は広く普及したとは言いにくく、多くのジャンルでは平面ディスプレイのほうが遊びやすいという事情もあるとのことです。
その経験を踏まえて開発された独立タイトルが、パイロットとしての没入感に焦点を当てたAces of Thunderです。PC版ではVRで遊ばないユーザーが多い環境に合わせた操作設定や、初心者が理解しやすい学習曲線の構築に苦労しており、まだ磨き込む余地が残っているとしています。一方、PS5版はPSVRユーザー向けにまとまりのある強力な体験を実現し、プレイヤーと批評家の双方から評価されたと説明しました。
また、軍事色の強いゲームでありながら、アニメ風のコラボレーションにも取り組んできました。日本向け展開を担当するパブリッシャーが始めた企画に海外プレイヤーが関心を示した例もあり、調査からは本作のプレイヤーにアニメ好きが多いことが分かったとしています。ただし、実在の軍用車両が登場するアニメ作品は限られるため、既存作品とのコラボレーションにはテーマ上の難しさがありました。
そこでGaijinは、現実的な軍用車両に乗るアニメ調の少女を描く日本人アーティストと協力し、オリジナルキャラクターによるSenrai Maidensを展開しました。キャラクターのイラストやキービジュアル、関連アイテムをゲーム内に追加したところ、SNSで大きな反響があり、プレイヤーからも非常に好意的な反応が寄せられたとのことです。その後、アニメ風の短編映像やゲーム内コンテンツへ発展し、今後もこの世界を拡張していく方針を示しています。
長期運営を支えるプレイヤーの戦場
開発チーム自身もユーザーと同じように本作をプレイしており、紙一重の差で勝敗が決まる試合や、ほぼ敗北と思われた戦闘を核兵器によってひっくり返す場面などを経験しているといいます。プレイヤーから寄せられる予想外の状況や印象的なプレイも多く、そうした場面を紹介するYouTube番組「Thunder Show」も公開しています。
Gaijinは、長期運営の原動力について、正式リリースを到達点とせず、プレイヤーの要望や新しい技術を取り込み続ける姿勢にあるとしています。航空機中心のゲームから、戦車、艦艇、VR、モバイル、コンソールへと領域を広げてきた本作は、現在も歩兵という大規模な要素を追加しようとしています。歩兵モードはまだ初期テスト段階ですが、今後のプレイテストへの参加者を募集しており、参加希望者は本作で航空・陸上・海上の戦闘をプレイしたうえで招待を待つ形になるとのことです。