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ゲームの「物理版」は2030年に何を意味するのか ディスク消滅後も箱は残る可能性

2026年09月19日 | #その他 | GamesRadar+

ゲームの「物理版」は2030年に何を意味するのか ディスク消滅後も箱は残る可能性

ゲームの物理版は、ディスクやカートリッジにソフトが収録されている商品とは限らなくなりそうです。2030年に向けてディスクの生産が縮小する一方、箱やカードを所有し、貸し借りや売買ができるかどうかが、新たな「物理版」の価値を左右する可能性があります。

物理版の需要はディスクより長く残る

ゲーム市場ではデジタル販売の比率が拡大していますが、物理版の需要がそのまま消滅するとは限りません。MIDiA Researchでデータ部門を率いるPerry Gresham氏は、企業の決算資料で示されるデジタルと物理の売上比率だけでは、消費者の実際の動向を正確に捉えにくいと指摘しています。

その理由の1つは、デジタル側の数字にPCゲームやモバイルゲーム、ゲーム内課金などが含まれることです。そもそも物理版が発売されないゲームも増えており、値下げされた旧作のデジタル販売もデジタルの販売本数として計上されます。一方、中古市場で売買された物理版は、パブリッシャーの決算資料には通常反映されません。

物理版を選ぶユーザーが重視しているのは、単にディスクやカートリッジを手元に置くことだけではありません。米国のコンソールゲームユーザーを対象にしたYouGovの調査では、51%が普段からディスクまたはカートリッジを好むと回答しており、物理版を購入する理由として最も多く挙がったのは「恒久的に所有できること」でした。貸し借りや売却、コレクション性を目的に購入する人もいます。

Gresham氏は、2030年に近づくにつれて物理市場の縮小ペースは鈍化すると見ています。ただし、物理版を買い続ける層がデジタルへ移行するとは限りません。パブリッシャーがその層をデジタル版へ誘導しようとしても、所有や売買を重視する消費者が購入自体をやめれば、市場全体が縮小する危険があるとしています。

つまり、需要がなくなる前に供給側が物理メディアの製造をやめる可能性があります。ソニーは2028年1月にディスク生産を終了した後も、PlayStationの新作を小売店で販売し続ける方針を示していますが、その商品は従来のディスク版とは異なるものになると考えられます。

パブリッシャーがゲームをディスクから外す理由

物理版の変化には、消費者の購入習慣だけでなく、製造コストや開発スケジュールといったパブリッシャー側の事情も関係しています。Omdiaのシニアアナリストを務めるJames McWhirter氏によると、Nintendo Switch 2では2026年のフルゲーム購入のうち、4割弱が物理版になると見積もられています。物理版が依然として重要な販売経路である一方、専用のゲームカードはコスト面で大きな負担になります。

そこで利用が進むと考えられているのが、ゲームデータを収録せず、ダウンロードの起点として機能するGame-Key Cardです。McWhirter氏は、通常のゲームカードよりも1枚あたりのコストを抑えられるため、スクウェア・エニックスやユービーアイソフトのようなパブリッシャーが、発売時の価格を低く設定しやすくなると説明しています。発売後の値下げにも対応しやすく、追加のゲームカードを製造する必要がないため、いわゆる「Switch税」や再版のコストも避けられるとのことです。

ゲームをディスクやカードに収録しない方式には、開発期間を確保しやすいという利点もあります。製造に回す前には、収録内容を確定させる必要がありますが、ダウンロードを前提にすれば、その締め切りを後ろへ延ばせます。特に、年末商戦のように発売日を動かしにくい時期を狙うタイトルでは、発売直前まで開発を続けられることが重要になるとMcWhirter氏は述べています。

さらに、PlayStationやXboxは、家庭用ゲーム機だけでなくPC、携帯型デバイス、クラウドストリーミングへサービスを広げようとしています。ディスクは特定の機器にひもづく一方、デジタル購入であれば複数の端末にアクセスを広げられる可能性があります。McWhirter氏は、こうしたプラットフォーム戦略にとってディスクは「妨げになるもの」と見なされる可能性が高いとしています。

任天堂も過去に、メディアの製造コストや供給の問題に対応しようとしてきました。ファミコン ディスクシステムやNINTENDO 64DDは、カートリッジとは異なる形でゲームを提供しようとした例です。Game-Key Cardは、こうした長年の課題に対する現在の解決策の1つと位置づけられます。

「所有する」とは何を自由にできることか

ゲームデータがカードやディスクに入っていなくても、物理的な媒体が従来の物理版に近い権利を持つ場合はあります。Switch 2のGame-Key Cardは、初回のインストール時にオンラインからゲームデータを取得する必要がありますが、単なる1回限りのダウンロードコードではありません。McWhirter氏によれば、カードは貸し出しや売却に対応し、Nintendo eShopのアカウントも必要としないとされています。

この違いは、箱の中身が同じように見えても、購入後にできることが大きく異なることを示しています。Game-Key Cardはゲーム本体を保存していなくても、カードを他人へ渡したり、中古品として売ったりできます。一方、箱にダウンロードコードだけが入っている商品では、コードをアカウントに登録した時点でゲームが購入者のデジタルアカウントにひもづきます。使用済みのコードが入った箱には、他人へ譲渡できるゲーム本体が残りません。

そのため、豪華なコレクターズエディションであっても、ゲーム本体がダウンロードコードのみなら、物理的な所有という点ではGame-Key Cardより制限される可能性があります。見た目の豪華さや付属品の数ではなく、購入したものを貸せるのか、売れるのか、別の本体で使えるのかが重要になります。

もちろん、Game-Key Cardにも弱点があります。初回のインストールにはゲームデータをオンラインから取得できる環境が必要で、将来的にサーバーからデータが提供されなくなれば、新規インストールが難しくなるおそれがあります。McWhirter氏は、Switch 2本体間でデータをローカル転送できる点にも触れていますが、それだけで長期的な利用が保証されるわけではありません。

Gresham氏は、今後はデジタル購入についても、利用者にどのような権利が付属するのかが重要になるとしています。アクセス権を運営側が取り消せるのか、プラットフォームのサーバーに依存するのか、オフラインで遊べるのか、他人への譲渡や売却が可能なのか、20年以上先もアクセスできるのか、といった点です。

任天堂のVirtual Game Cardは、デジタル購入に物理版に近い貸し借りの仕組みを取り入れる方向性の一例です。対してPCでは、複数のストアが競争していることから、デジタルライセンスを過度に制限しない仕組みが促されてきました。ゲーム機では各社が自社のデジタル販売網を統合しているため、同じ自由度を提供する動機が相対的に小さいとGresham氏は見ています。

箱は小売とコレクションのために残る

ディスクが消えても、ゲームの箱そのものが不要になるとは限りません。パッケージは店頭で販売するための形を維持でき、プレゼントとして渡す際にも使いやすい存在です。好きな作品のパッケージを棚に飾りたいという需要もあり、物理的な商品を手元に残したいユーザーにとって、箱は一定の価値を持ち続けます。

ソニーがディスク生産終了後もPlayStationタイトルの小売販売を続けるなら、現実的にはダウンロードコードを箱に入れた商品が中心になるとMcWhirter氏は予測しています。ただし、この方式が発売初日から広く機能するかどうかは不透明です。Switch向けのコード入りパッケージは、発売後しばらく経ってから、カートリッジを追加生産せずに安価な再版を行う用途で使われるケースが多いとされています。

コード入り商品は発売後の値下げ商品としてスーパーマーケットなどに並びやすく、発売初日から同じ形で販売される例は多くありません。非常に大きな需要が見込めるGTA 6のようなタイトルが、発売時からこの方式を成立させられる可能性はありますが、通常のゲームが同じ販売力を持つとは限らないと記事では指摘されています。

一方で、物理版の市場が縮小するほど、コレクター向け商品は存在感を増す可能性があります。Gresham氏は音楽市場を例に挙げています。日常的な視聴はストリーミングが担いながら、レコードなどの物理メディアは、作品を集めたいファン向けの商品として残っています。ゲームでも、一般ユーザーにはデジタル版を提供し、熱心なファンには少数生産の物理版を高価格で販売する構図が広がる可能性があります。

すでに専門性の高いパブリッシャーは、デジタルで発売されたゲームの物理版を数千本規模で製造し、Amazonや自社サイトで割増価格にて販売しています。主流タイトルの物理版が減れば、このような少量生産のモデルがさらに重要になると考えられます。市場では、安価で手軽なデジタルアクセスと、コレクターが高い価格を払う物理版の間に、従来型のディスク商品が挟まれる形になりそうです。

2030年の「物理ゲーム」は、箱の中にゲームデータがあるかどうかだけでは判断できません。箱がダウンロードへのアクセス権を示すだけの場合もあれば、カードを介して貸し借りや売買ができる場合もあります。外見が同じパッケージでも、オフラインで遊べるのか、サーバーが停止した後も利用できるのか、購入者が他人へ譲れるのかによって、所有の意味は大きく変わります。

ディスクの有無ではなく、購入した商品によって利用者が何をできるのか。今後の物理版を考えるうえでは、その権利と制限を確認することが、これまで以上に重要になりそうです。