『Another Eden Begins』はモバイル版をオフライン化するも物語と難度に課題
2026年09月14日 | #レビュー | DualShockers
モバイル向けJRPGからライブサービス要素を取り除き、始まりから終わりまでを描く1人用作品へ再構成した点が注目される『Another Eden Begins』。一方で、原文筆者は物語がモバイル版の構成をほぼそのまま引き継いだ結果、展開が急で、ライブサービス作品らしいエピソードの分断も目立つと評価しています。戦闘には魅力的な仕組みが用意されているものの、難度が低すぎるため、その多くを本格的に活用する場面は終盤まで訪れません。
モバイル版の構成を残した物語
本作は、モバイル版に存在したライブサービス要素をなくし、明確な始まり・中盤・結末を持つ冒険として楽しめるようにした作品です。原文筆者は、モバイル専用タイトルがオフライン向けに作り直され、新しい層にも届くようになる流れを歓迎しています。ただし本作については、オフライン作品として物語を再設計したというより、元の内容をほぼ1対1で移植した印象が強いとしています。
物語の中心となるのは、獣人たちに襲われた村から妹のFeinneを救おうとする主人公Aldoです。獣王に敗れたAldoは時空の裂け目に飲み込まれ、妹を助ける方法を探しながら、時間と空間をまたぐ旅に出ます。脚本を手がけたのは、クロノ・トリガーやクロノ・クロスで知られるMasato Kato氏で、時間旅行を軸にした展開や、両作品を思わせる要素も盛り込まれています。
しかし原文筆者は、時間旅行に関する本作のルールが一貫していない点を問題視しています。過去の人物を未来へ連れてきて散歩させるような場面がある一方で、後半になると過去への小さな干渉が未来全体を変えるような、深刻な時間の因果関係が描かれます。自由な時間旅行を描くのか、厳密なルールに基づく物語にするのかが定まらず、物語が都合よく進んでいるように感じられるとのことです。
Aldoが自分の時代へ戻り、Feinneを救うという目的自体は分かりやすいものです。Aldoは旅の途中で起きる問題にも手を貸し、事件を解決しながら、状況を理解するための手がかりを探します。ただし、原文筆者によれば、ほとんどの出来事が「新たな問題が起きる、Aldoが助けを申し出る、解決して次へ進む」という流れで急速に処理されます。登場人物や世界への掘り下げが不足しているため、誰かに深く感情移入する前に次の事件へ移ってしまう構成です。
パッチ単位に見えるエピソード
ライブサービス作品を出発点にしていることは、物語の構造からも隠しきれていないと原文筆者は述べています。個々のエピソードはそれぞれ独立性が高く、ボスを倒すとゲーム全体が終わるような区切りを迎えます。しかし直後には、前の事件とほとんどつながらない、あるいは緩やかにしか関係しない新たな対立が始まります。そのため、全体を一続きの冒険として進めるというより、アップデートごとの物語を順番に消化している感覚が強くなるそうです。
終盤では複数の主要事件が少しずつ結びつきますが、そこに至るまで物語への関心を保ちにくい構成です。映像面でも、映画のようなカットシーンや全面的にアニメーションするイベントは用意されていません。静止した場面と会話で展開が処理され、キャラクターの感情を示す際には、戦闘中のアニメーションが繰り返し使われます。ドット絵や色鮮やかなフィールドは評価されている一方、物語の演出を大きく押し上げるほどではないとされています。
メインストーリー全体には日本語と英語のボイスが収録されており、没入感を支える要素になっています。ただし原文筆者は、Aldoの声優については好意的ではありません。また、仲間は19人存在するものの、メインストーリーで直接関わり合うのはそのうち約半数に限られます。大人数の仲間を用意するJRPGでは珍しくない構成ですが、キャラクター同士の交流を重視するジャンルとして、より丁寧な扱いが欲しかったという見解です。
仲間たちが完全に放置されているわけではありません。各キャラクターには「Memories」と呼ばれる個別クエストがあり、戦闘への参加や贈り物によって親密度を上げると、新たなクエストが解放されます。そこでは性格や過去が掘り下げられ、固有のアクセサリーや武器も獲得できます。内容はNPCとの会話や敵との戦闘が中心ですが、個性的な人物も多く、原文筆者は本作の脚本で最も楽しめた部分として仲間たちのサイドクエストを挙げています。
メインストーリーではやや平板に見えるAldoも、癖の強い仲間たちの騒動に巻き込まれる場面では、より魅力的に映るとのことです。原文筆者は、サイドコンテンツを約30%進めた状態でメインストーリーを終えるまでに26時間を要したとしています。クリア後にはポストゲームコンテンツとNew Game+が用意されており、特にNew Game+は本編と直接つながる創意工夫のある内容です。モバイル版には含まれていなかったNew Game+用のストーリーが追加されている点も評価されています。
仕組みは面白いが、活躍するのは終盤
戦闘は速度順に行動するオーソドックスなターン制です。戦闘中に選べる基本的なコマンドは攻撃とスキルで、逃走はできるものの、戦闘から走って離脱する仕組みはありません。各キャラクターはスキルツリーから覚えた4つのアビリティを装備できます。アイテムは存在せず、回復はスキルでのみ行い、メニューからの回復もできないため、戦闘中の回復手段を確保することが重要です。
特徴的な要素が、条件を満たすと発動するChainスキルです。たとえばAldoの最初のChainは、敵の弱点を3回突くことで発動します。Riicaの場合は、無属性攻撃を5回使うことが条件です。発動に必要なポイントは戦闘をまたいで持ち越され、Chainスキルそのものも次の発動条件に影響します。そのため、複数のChainを連続させるコンボを組み立てられ、意図せず仲間たちが敵を何度も攻撃する展開も起こります。
ただし、序盤の戦闘は極端に簡単です。範囲攻撃を1回使うだけで勝てる場面が多く、回復スキルやChainの条件を意識しなくても敵を倒せます。アイテムがなく、回復も戦闘中に限られるという設計は本来なら戦術性につながるはずですが、敵から攻撃を受ける前に倒せてしまうため、原文筆者は序盤のプレイを退屈に感じています。
もう1つの重要な仕組みがValor Changeです。最大4つのパーティを編成でき、合計16人の仲間を登録できます。戦闘中にゲージを貯めると、控えのパーティ全体へ交代可能です。たとえば炎属性を中心にしたパーティで炎に耐性を持つ敵と戦う場合、水属性攻撃を使う別パーティへ切り替えるといった対応ができます。個別の仲間を交代させるJRPGは珍しくありませんが、パーティ全体を入れ替える本作の方式は、敵との相性を考える新鮮な戦術として機能しています。
それでも、こうした仕組みを本当に使い込む必要が生じるのは最終ボス戦だけです。原文筆者は、約25時間にわたってほぼメインパーティだけで進められたため、4パーティ全体の構成を考え、スキルや装備のパッシブ効果まで吟味する必要がありませんでした。最終ボスではじめて大きく苦戦し、そこでようやく本作のターン制バトルが持つ可能性を十分に確認できたものの、魅力が引き出されるのが遅すぎるとしています。
オフライン化の成果と残された課題
原文筆者は、本作がモバイルJRPGを1人用の冒険へ移行させるという目的自体には成功していると評価しています。リアルタイム入力やアクション要素を組み合わせなくても、シンプルなターン制戦闘は現在でも成立することを示しており、ChainスキルやValor Changeには独自性があります。今後、難度モードの追加などで調整されれば、これらの仕組みをより深く楽しめる可能性もあるとの見方です。
一方で、物語は展開が急で、ライブサービス由来の分断された構造に依存しすぎています。個性的な仲間たちやサイドクエスト、創意工夫のあるNew Game+には見るべき点がありますが、JRPGとして特に新しい物語を提示する作品ではありません。ダンジョンの構造もやや単調で、印象に残るレイアウトに乏しいとされています。
総合すると、本作はモバイル版をオフライン作品として成立させた移植であり、土台は確かなものの、体験全体はぬるいものにとどまります。原文筆者は、シリーズの元作品を遊んできたファンなら最初の物語を再訪する楽しみを得られる一方、独創的で新しいJRPGを求める人には期待を抑えるか、別の作品を探したほうがよいと結論づけています。