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『Pacific Drive』は車を拠点にした異色のサバイバル体験を生み出す

2026年08月29日 | #ゲーム紹介 | Polygon

『Pacific Drive』は車を拠点にした異色のサバイバル体験を生み出す

ジャンルの定型を組み合わせるだけでなく、ドライビング、サバイバル、ローグライク、SFホラーをひとつの体験へまとめ上げた作品として、『Pacific Drive』が注目されます。舞台は、1950年代の科学実験が失敗したことで放棄された、異常現象だらけの太平洋岸北西部です。プレイヤーは古びたステーションワゴンを相棒に、危険な“ゾーン”の奥へ進み、資源を集めながら車と装備を強化していきます。

複数のジャンルを車中心の体験に統合

本作の舞台となるのは、別世界の1990年代に存在する、放射能に汚染された荒野です。かつて科学実験が行われた場所は、実験の失敗によって人の住めない区域へ変貌しました。そこには、通常の自然環境では考えられない現象や、放置された研究施設、巨大な構造物が残されています。

プレイヤーの移動手段は、最初から高性能な車ではありません。足回りに不安があり、ハンドルも軽く、トルクの低いエンジンが唸る古いステーションワゴンを、少しずつ実用的な探索車両へ仕上げていきます。車は単なる移動手段ではなく、探索で手に入れた物資を保管するインベントリであり、修理やクラフトを行う作業場でもあります。さらに、危険な環境からプレイヤーを守る防具のような役割まで担います。

ゲームの進行では、半ばランダムに変化するゾーンのマップを何度も走破します。決められたミッションの目的地を目指す場合もあれば、行けるところまで進んで資源を持ち帰ることを優先する場合もあります。道中では車を降り、壊れた研究施設などを探索して素材を回収し、損傷した車体をその場で修理しながら先へ進みます。探索と運転、資源管理とクラフトが、すべて車を中心に結び付いている点が本作の大きな特徴です。

小さな判断が生死を分ける危険な旅

本作には、一般的なアクションゲームのような敵が登場するわけではありません。しかし、危険が少ないという意味ではありません。車に取り付いて損傷させる、意思を持ったような金属くずの塊や、プレイヤーを木へ引きずっていこうとするドローン、歩く雷の柱、あちこちに広がる有毒な液体など、ゾーンそのものが脅威になります。

しかも、危険は派手な攻撃だけではありません。たとえばヘッドライトを点けたままにしてバッテリーを使い切ると、敵に襲われなくても深刻な状況に追い込まれます。車の状態、残っている資源、周囲の異常現象を細かく確認し、今は進むべきか、引き返すべきかを判断しなければなりません。準備を整えていても、運に左右される場面があり、無謀さだけでも慎重さだけでも乗り切れない設計です。

探索を終えるには、ゾーン内に出現するゲートを起動し、そこへ向かって走る必要があります。ゲートは光の柱として現れ、周囲の風景を引き裂きながら、環境を大きく不安定化させます。現実そのものが崩れていくような状況のなかで、車を走らせて脱出を目指す場面が、各ランのクライマックスになります。

一方で、ランの途中にセーブすることはできません。死亡したり、これ以上進めないと判断して探索を中断したりすると、そのランで集めた戦利品を失い、車には追加のダメージが加わります。車体のパネルやドアを複数失った状態でガレージへ戻り、帰還後に新しい部品をクラフトすることも起こり得ます。数十分、場合によっては1時間以上の進展を失う可能性があるため、進行するほど緊張感が積み上がっていきます。

車そのものが本作の個性を形作る

本作が単なるサバイバルゲームや運転ゲームにとどまらない理由は、車に強い個性が与えられていることです。ステーションワゴンは、跳ねるサスペンション、安定しきらないステアリング、力強さよりも低い唸りを感じさせるエンジンを備えています。操作には癖がありますが、その挙動が単なる不便さではなく、乗り物としての存在感につながっています。

車内では、物寂しさを帯びたインディーロックが流れ、ラジオからはゾーンに関わる人物たちの会話や言い争いが聞こえてきます。広大で不気味な荒野をひとりで進む旅でありながら、完全な無音にはならないため、車内がプレイヤーにとって数少ない落ち着ける場所になります。外の世界が危険であるほど、車へ戻る行為そのものに安心感が生まれます。

ゾーンの景観も、運転を単なる移動として終わらせません。霧に覆われた森林、異様な光を放つ現象、放棄された巨大建造物が組み合わさり、恐ろしさと壮大さを同時に見せます。原文筆者は、その風景について、Half-Life 2を思わせる巨大な廃構造物や、Twin Peaks、The X-Filesを連想させる地域的な雰囲気があると紹介しています。見慣れた道路を走るドライブとは異なり、進むほどに世界の成り立ちを知りたくなる景観です。

拠点を持ち運ぶロードトリップ

一般的なサバイバルゲームでは、集めた資源やアップグレードを拠点に集約します。本作では、その役割を車が担います。車に乗り込めば探索へ出発でき、車の内部には持ち帰った物資や、次の遠征に必要な準備が詰め込まれます。強化の成果を固定された基地に残すのではなく、次の危険な場所へそのまま持っていける構造が、プレイ感覚を大きく変えています。

この仕組みによって、サバイバルの目的は「安全な拠点を大きくすること」だけではなくなります。どの部品を作るか、どれだけの資源を持っていくか、損傷した車をどこまで使い続けるかを考えながら、車とともに生活を組み立てていくことになります。ゾーンへ向かうたびに、車は単なる装備ではなく、蓄積した経験と苦労の象徴になっていきます。

原文筆者は、本作について、敵を倒して進むのではなく、危険を避け、車を修理し、資源をやりくりして生き残ること自体が中心にある作品だと捉えています。ゆっくりと準備を進める時間がある一方、ゲートへ向かう最後の走行では状況が一気に崩れ、穏やかなドライブが切迫した脱出劇へ変わります。複数のジャンルを無理に並べたのではなく、「車で未知の場所へ進み、車を維持し、車とともに帰還する」という軸にまとめたことが、唯一無二の体験につながっています。