『ソード・ワールドRPG』英語版のBackerKitキャンペーンが10月20日に開始
日本で長年親しまれてきたファンタジーTRPG『ソード・ワールドRPG』が、初めて公式英語版として海外に展開されます。最新エディション「ソード・ワールドRPG 2.5」の英語版を手がけるMugen Gamingは、10月20日にBackerKitキャンペーンを開始すると発表しました。Dungeons & Dragonsの日本における競争相手として成長してきた作品が、約40年の歴史を経て英語圏のファンに届けられることになります。
約40年越しとなる初の公式英語版
ソード・ワールドRPGは、Group SNEが1989年に制作したTRPGです。日本では数十年にわたって定番タイトルの地位を保ってきましたが、これまで公式の英語翻訳版は存在せず、海外のファンは有志による翻訳に頼っていました。今回の英語版は、海外向けに日本のゲームを翻訳・販売してきたMugen Gamingが制作を進めているもので、ソード・ワールドRPG 2.5が対象になります。
キャンペーンの開始日は10月20日です。キャンペーンを支援した参加者には、クイックスタートPDFとデラックス仕様のハードエナメルピンが提供される予定です。なお、記事内では英語版そのものの発売日や価格は明らかにされていません。
今回のプロジェクトには、作品の長年の歴史を意識させるクリエイターも参加します。アートディレクターは、アニメ監督として活動し、Solo Leveling: ReAwakeningなどを手がけたShunsuke Nakashigeです。また、ロードス島戦記シリーズの主要アーティストの1人であるHitoshi Yonedaが、コレクターズエディションの表紙イラストを担当します。
D&Dから生まれた「リプレイ」とロードス島戦記
Group SNEとソード・ワールドRPGの成り立ちは、1980年代に仲間たちがDungeons & Dragonsを遊んでいたことから始まります。彼らはセッションの内容を記録し、テーブルトークRPGを遊んでいない人にも共有しようと考えました。その記録は、角川のコンピューターゲーム雑誌Comptiqに「D&D Magazine Live: Record of Lodoss War Replay」として掲載され、やがて「RPGリプレイ」と呼ばれる形式として広まっていきます。
しかし、D&Dの版元だったTSRは、こうした掲載が知的財産権を侵害するとして活動を認めませんでした。そこでGroup SNEは独自のゲームを作る道を選び、その過程で生まれたキャンペーンを基にロードス島戦記の展開も始まりました。ロードス島戦記はその後、ライトノベル、漫画、アニメ、ゲームへと広がる大規模なフランチャイズになっています。
現在、Critical Roleのような実際のプレイを見せる番組が英語圏で人気を集めていますが、RPGリプレイはそれより何年も前に、卓上で生まれた冒険を読者と共有していました。Group SNEの会長である安田均氏は、SFやファンタジーには以前から、Duneや指輪物語のように想像上の世界と壮大な冒険を共有する文化があったと説明しています。そのうえで、Group SNEが惹かれたのは、ゲームと物語が結びつき、同じ世界を一緒に作り上げるというTRPG独自の体験だったとしています。
日本でD&Dを上回った背景
D&Dは世界的に有名なTRPGですが、日本では必ずしも同じ規模の人気を得ていません。安田氏は、その背景として主に2つの要因を挙げています。1つは、TSRがアメリカのテーブルトップ業界で確立されていたルールや商慣行を、日本市場にもそのまま当てはめようとした「硬直的な販売戦略」が失敗したことです。原文では、この販売方針が日本市場に適応できなかったことを、D&Dが定着しなかった大きな理由として扱っています。
もう1つは、ソード・ワールドの作品そのものが持つ強い訴求力です。安田氏によれば、本作は価格面で手に取りやすく、ルールも理解しやすいうえ、物語を重視していました。さらに、イラストの方向性が日本の読者に自然に受け入れられやすく、西洋ファンタジーと日本的な要素を組み合わせた新しいタイプのファンタジーを形作ったといいます。特に若いプレイヤーにとって入り口になりやすかった点が、日本での広がりにつながったとのことです。
西洋と日本のファンタジーをつなぐ特徴
英語圏のプレイヤーが本作をD&DやPathfinderと比べたとき、最大の違いになるのは、西洋ファンタジーを基盤にしながら、漫画・アニメを思わせるビジュアルの感覚を取り入れている点です。安田氏は、見た目の親しみやすさに加え、複数のクラスを組み合わせられるシステムが、幅広いキャラクター構成を可能にすると説明しています。
このマルチクラスの仕組みは、プレイヤーの自由度を高めるだけではありません。パーティー内での協力を支えつつ、戦闘での役割やキャラクターの選択肢を広げられることが特徴です。また、戦闘の展開だけでなく、どのような物語やプロットを作るかという部分でも、多様な冒険に対応できるとしています。
Group SNEの作品は、日本と西洋のファンタジーが相互に影響を与えてきた流れの一部でもあります。Group SNEは初期から西洋ファンタジーの要素を取り入れ、それをロードス島戦記や本作の形へと組み替えました。そして、そうした日本の作品群は、後に海外で知られるようになった日本のRPGにも影響を与えています。原文では、Chrono Triggerもその例として挙げられています。
安田氏は、こうした影響関係について、Group SNEだけの功績ではなく、世界のグローバル化と各地域の文化表現が洗練されてきた大きな歴史の一部だと説明しています。西洋由来の考え方が東側で独自に再解釈され、別の形へ発展する例として、自動車、家電、アニメ、野球などにも触れました。今回の英語版では、ソード・ワールドが西洋にルーツを持つアイデアを日本で発展させ、独自の形に仕上げた作品として受け入れられることが期待されています。