Bethesda元開発者が語るAAAゲームの品質低下とXbox大量解雇の代償
2026年09月02日 | #その他 | DualShockers
Xboxによる大規模な人員削減は、雇用だけでなくAAAゲームを支えてきた開発現場の知識まで失わせています。Bethesda Game Studiosの元開発者は、長年かけて蓄積された技術や制作ノウハウを人員整理で断ち切れば、同じ品質のゲームを簡単には作れないと指摘しました。背景には、開発費の高騰と毎年の利益を求める経営との矛盾があります。
Xboxの再編で3200人が影響
Xbox CEOのAsha Sharma氏が7月6日に「Resetting Xbox」と題したメールを送った後、Microsoftのゲーム部門では3200人が解雇の対象となりました。そのうち1600人は直ちに職を失い、Bethesda Game Studios、ZeniMax Online Studios、id Software、Bethesda Game Studios Montrealなど複数のスタジオが影響を受けています。Xbox史上で最大規模とされる再編ですが、報道の中心となった業績や株価の数字の裏では、個々の開発者が突然キャリアを断たれる事態が進んでいます。
Bethesda Game Studios Austinに7年間在籍していたAnne Barrett氏は、解雇を約2分間のTeams通話で知らされました。カメラもマイクもオフのまま、スタジオマネージャーが用意された声明を読み上げ、まもなくSlackへのアクセスを停止すると告げて通話は終了したとのことです。大学時代から働くことを望んでいたスタジオでのキャリアが、本人が何も話せないまま終わりました。
id Softwareでは136人が削減され、DoomやQuakeを手がける同スタジオの大半が失われたと報じられています。同社のVFXアーティストだったDerek Best氏は、LinkedInへの投稿で、スタジオが実質的に「サポートスタジオの規模」まで縮小されたと説明しました。一方、Bethesda Game Studiosでは削減人数の規模だけでなく、長年、あるいは数十年にわたって現場を支えてきた特定の人材が失われたことが大きな打撃になっています。
失われたのは人数だけではない
Barrett氏が問題視しているのは、退職者の穴を新しい人材で埋めれば済むという考え方です。同氏は、独自技術や作品固有のビジュアル表現を築き、改善してきた人物がいなくなれば、その知識は自動的に残った社員や新規採用者へ移るわけではないとしています。「失われた組織内の知識なしに、以前と同じ品質のゲームをどう作るのか分かりません。15年、20年前から続く仕事を、新しく入ったアーティストにそのまま再現させることはできないのです」とBarrett氏は語りました。
Bethesda Game Studios Dallasに現在も在籍し、労組の交渉担当を務めるAlex Nguyen氏も、数十年にわたってスタジオに貢献してきた同僚を失ったと説明しています。対象となった人々は、求められた仕事をこなし、作品に情熱を持ち、優れた成果を上げていたにもかかわらず、解雇の理由が理解できないケースもあったとのことです。
これは単純な人員数の問題ではありません。社内独自のツールをどう扱うか、シリーズの表現をどう維持するか、過去の失敗をどう避けるかといった知識は、文書や研修だけで完全に引き継げるとは限りません。経験者が複数の世代にわたって残っていること自体が、長期シリーズの制作基盤になっていました。今回の再編では、その基盤が短期間で失われています。
AAAゲームをめぐる構造的な行き詰まり
Barrett氏は、AAAゲームがプレイヤーに評価されてきた理由について、単に規模が大きく映像が豪華だったからではなく、スタジオが創造性へ投資できるだけの資源を持っていたからだと分析しています。しかし現在は、同じ公式を何度も繰り返す傾向が強まり、エンターテインメント業界では同じことを続ければ観客が飽きると指摘しました。
近年の大作市場では、安全策としての続編、ライブサービス型への転換、発売後に長期間の修正を必要とする作品が目立ちます。記事では、2012年から開発されていたにもかかわらず不具合を抱えて発売されたCyberpunk 2077、その翌年に同様の問題を見せたBattlefield 2042、Fallout 76、Overwatch 2、Mass Effect Andromedaを例に挙げています。大きな予算を投じて期待を集めた作品が、宣伝された内容と異なる状態で発売される事例が積み重なり、プレイヤーは購入時にそのリスクを考慮するようになりました。
Nguyen氏は、出版社が数年単位の開発期間を受け入れられないなら、作品の規模を縮小する必要があるとしています。大作の本数を減らし、インディーゲームやAA規模の作品を増やす選択肢もありますが、長期的に開発するゲームへ投資しながら、毎年の利益も同時に求めるやり方は成り立たないとの見方です。
問題の核心は、現代のAAAゲームを作るために必要な費用と、投資を正当化するために企業が求める決算単位の利益が合っていないことにあります。記事では、パンデミック中の需要拡大を受けてスタジオが急速に膨張し、その成長が永続するかのような前提で人員や計画が組まれたと説明しています。期待が外れた後の削減は急速に進み、判断を下した経営陣ではなく、現場の開発者がその代償を負う形になりました。
解雇後の補償と今後のゲームへの影響
解雇された開発者の生活にも深刻な影響が出ています。ZeniMax Online StudiosのMorgan Goin氏は、その日に十分な食料や水があるかを確認する状況になったと語り、強い喪失感を訴えました。Bethesda Game Studios Montrealに在籍していたSimon Préfontaine氏は、収入だけでなく健康保険も失いました。単身の父親である同氏は、解雇から1年以上たっても仕事を見つけられない人がいると聞いているとしています。
BethesdaとZeniMaxの労組は、退職金などの条件をめぐってMicrosoftと交渉を続けています。北米各地のスタジオ前では抗議集会も開かれました。Microsoftは、最大39週間分の給与と、会社負担による6か月間の医療保険を含む補償条件を提示したとしていますが、労組側は、影響を受けた組合員が直面する現実的な困難を考えれば、会社の譲歩はまだ不十分だと反発しています。
さらに、Xboxの再編では少なくとも1600人分の削減が残されています。影響を受けた開発者が何年も取り組んできたゲームは、発売延期、規模縮小、またはキャンセルとなる可能性があります。今回の事例は、解雇が個人の生活を変えるだけでなく、スタジオが持っていた技術やシリーズの知識、そして将来の作品の方向性まで損なうことを示しています。原文筆者は、ゲームをより良くするために、作り方を知る人々を取り除く再編だけでは問題を解決できないと結論づけています。