『PUBG: DED.NET』は万人受けを狙わず賛否を巻き起こす作品に
『PUBG: DED.NET』は、誰にでも好かれる作品ではなく、熱心なファンと明確な批判者の両方を生み出すゲームを目指しているようです。クリエイティブディレクターのDave Curd氏は、無難で中間的なゲームは「興味を持たれないことが致命傷になる」と説明し、強烈な世界観や残酷表現を含む本作の方向性に自信を示しました。現在はクローズドベータへの登録を受け付けており、PC、PS5、Xbox Series X|S向けに発売予定ですが、発売時期は明らかになっていません。
バトルロイヤルにローグライト要素を組み合わせた新作
本作は、バトルロイヤルというジャンルを広めたPUBGから派生したマルチプレイFPSです。敵を最後まで生き残ることが基本となる一方、1回のマッチで勝敗が完結する従来型の構造ではなく、複数のマッチをまたいでプレイヤーの状態や成長を引き継ぐローグライト形式を採用しています。
舞台は1996年のCascadia。1990年代のアメリカ太平洋岸北西部を思わせる世界で、作品全体を彩る独自の美学として「Grunge House」が掲げられています。グランジバンドのNirvana、イタリアのゾンビ映画、Grindhouse作品、Quentin Tarantino監督の映画などが、この雰囲気の源になっているとのことです。
1回のマッチは、最後まで残った場合でもおよそ25〜30分で終わる想定です。長時間にわたる緊張感を特徴とするPUBGと比べて、短い時間で遊びやすい設計を目指しています。また、コンソール版への展開を前提に、最初からコンソール向けに作られている点も特徴です。
ただし、本作は単なる短時間版のバトルロイヤルではありません。マッチを重ねながら自分のビルドを整え、負傷や能力の変化を抱えたまま次の戦いに進む「マルチマッチの旅」が中核になります。プレイヤーは勝利だけでなく、どのような状態で次のマッチへ進むか、どのキャラクターとして成長していくかも判断することになります。
「万人向け」は目指さないという開発方針
Curd氏はgamescomでIGNの取材に応じ、本作について、誰も不快にならず大半の人がそこそこ気に入るような大衆向けゲームを作ることは、現在では安全でも賢明でもないと語りました。氏が重視しているのは、プレイヤーが作品の世界に自分が受け入れられていると感じるほど強く結びつくことです。そのためには、同じくらい強い反発を受ける可能性も受け入れるべきだとしています。
「愛する人と嫌う人の両方が必要です。嫌う人は、嫌うほどには関心を持っている。いつかその人たちに届く可能性もあります」とCurd氏は説明しました。氏は、作品に対して無関心でいられることこそが最も危険だと考えており、好意的な反応だけでなく、否定的な反応であってもプレイヤーが何らかの感情を抱くことを目標にしています。
その考えを、Curd氏は「中間的なものは興行収入にとって毒になる」と表現しています。多くの人に平均的に好かれることよりも、明確な個性によってファンとアンチを生み出すほうが、作品にとって望ましいという主張です。氏によれば、観客は退屈さだけは許さないため、たとえゲームを嫌われたとしても、大きな挑戦をしたこと自体は評価される可能性があります。
この姿勢は、ArrowheadがHelldivers 2で掲げてきた「みんなのためのゲームは、誰のためのゲームでもない」という考え方にも通じます。Helldivers 2では味方への誤射が常に有効になっており、プレイを厳しくする一方で、他作品とは異なる体験を作る仕組みになっています。Curd氏も、無難な作品に寄せるのではなく、本作ならではの強い印象を残すことを選んでいます。
不気味な世界観とキャラクター同士の関係
本作の世界では、単に敵を倒して最後の1人になるだけではなく、キャラクターたちの関係性や、それぞれに用意された物語も描かれます。初期に登場する9人のキャラクターは、互いの間だけでなく、マップそのものとも関係を持ち、「Chicken Dinner」を獲得する以外のクエストも用意されているとのことです。
味方にピンを送ったり、ライバルを蘇生したりすると、ボイスによってキャラクター同士の関係が示されます。過去のプレイテストでは、開始から2〜3日ほどで、キャラクター間の恋愛関係を描いたファンアートが投稿されるようになったとCurd氏は明かしました。開発チームが想定していたより早くプレイヤーが世界観に入り込み、キャラクターを単なるゲーム内の駒ではなく、物語を持つ存在として受け止め始めた例だとしています。
Curd氏が特に避けたいのは、作品に対する無関心です。好意的な反応であれば理想的ですが、否定的な反応であっても、そこから内容を改善したり、プレイヤーの印象を変えたりする余地があります。一方で、何も感じてもらえなければ、プレイヤーとの接点を作ること自体が難しくなります。
世界観の具体例として、Curd氏は手を切り落としてマチェーテに置き換え、死体で満たされた地下室を持つカルト教団の屋敷で対峙するような展開を挙げています。これは本作に含まれる要素をすべて説明したものではありませんが、血なまぐさい表現や奇妙な状況を前面に出した作品を目指していることがうかがえます。PUBGの現実的で戦術的な緊張感とは異なる方向から、サバイバルというテーマに取り組む作品です。
「勝つ」よりも物語を生む負傷システム
本作のローグライト要素は、もともとプレイヤーがマッチをまたいで負傷状態を引き継ぐ仕組みとして考えられていました。泳いだ後に低体温症になって咳き込む、頭を撃たれてしばらく耳鳴りが続く、といった状態を残すことで、1回の勝敗だけでは終わらない影響を作ろうとしたものです。
しかし、初期のテストではプレイヤーの行動が開発チームの意図と異なる方向へ変化しました。プレイヤーは勝つためではなく、負傷しないために動くようになり、Curd氏によれば「この仕組みは嫌だ」と受け止められたとのことです。そこで開発側は、負傷を単なる不利な状態ではなく、プレイ中の出来事やキャラクターの個性を生む要素へと作り替えました。
たとえば、煙の中でくしゃみが出て位置を知られたり、水中で移動すると痛みが発生したり、武器を持ち替える際にときどき落としてしまったりする状態が考えられています。挑発を繰り返して自分の位置を明かしてしまう症状もあり、プレイヤーは負傷による不便さを抱えながら、状況に応じて行動を変えなければなりません。
Curd氏が気に入っている例として挙げたのが「Stuntman」です。スライディングやダイブを行うと、見た目には派手な爆発が背後で発生しますが、自分がダメージを受けることもあれば、味方を巻き込むこともあります。負傷や能力の変化が単にプレイヤーを弱体化させるのではなく、予想外の事故や笑える失敗を生み、それぞれのマッチに固有の物語を追加する仕組みです。
さらに、キャリアには蓄積する体力のような上限があり、負傷が重なりすぎると、プレイヤーは何度もマッチを続けられなくなって引退を迎えます。限られた期間のなかでどの能力や負傷を受け入れ、どのようなキャラクターとして成長するかを選ぶことが、マルチマッチ形式の中心になります。
PUBGのファン層を広げるための試み
本作の出発点には、PUBGの魅力を、従来のゲーム性に馴染めない人へ届けたいという発想がありました。Curd氏は約9年半にわたってPUBGのクリエイティブディレクターを務めており、遠距離にいる敵と戦うのか、車に乗るのか、撤退するのかを判断するような、思慮深く戦術的なゲームプレイを評価するファンがいる一方、それが全員に向いているわけではないと説明しています。
そこで開発チームは、PUBGをそのまま増やすのではなく、PUBGが持つ「生き残った者が勝つ」「必死に生存を目指す」というテーマに反応する別のプレイヤーを探そうとしました。Curd氏は、同じテーマを持つ作品なら、極端な話としてマッチ3ゲームであっても成立するかもしれないと語っています。重要なのは銃撃戦の形式を維持することではなく、最後まで生き残る物語を生む構造を別の形で提示することです。
PUBGの1マッチは、1人の勝者と99人の敗者を生み出す「無限の物語エンジン」だとCurd氏は捉えています。多くのプレイヤーが、初めてChicken Dinnerを取ったときのことを細部まで語れる点に、長く遊ばれてきた理由があると分析しました。本作ではその物語を1回のマッチで完結させず、複数回の戦いに引き延ばすことで、選択や負傷の積み重ねを新しい物語へ変えようとしています。
一方で、この方式はPUBG本来の「完全に公平で、バランスの取れた一度きりの冒険」という約束とは両立しにくいとも説明されています。そのため、同じ仕組みをPUBG本編に導入するのではなく、別の作品として展開する必要がありました。Curd氏は、プレイヤーが自分の理想に近いキャラクターを選び、奇妙な負傷を管理しながら、限られたキャリアを進む構造こそが本作の出発点だったとしています。
これまでのベータやプレイテストでは、キャラクターに対してファンが生まれ始めている兆候が確認されているとのことです。Curd氏は、製品を受け身で消費するだけの観客ではなく、世界に入り込み、登場人物の関係を自分なりに解釈する本当のファンが現れたことを、開発チームにとって大きな励みになったと話しました。クローズドベータの登録はすでに始まっており、今後はこの独特な方向性がより多くのプレイヤーにどう受け止められるかが注目されます。