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『Welcome to Elderfield』は居心地のよさと宇宙的恐怖が同居する農場シム

2026年09月09日 | #レビュー | DualShockers

『Welcome to Elderfield』は居心地のよさと宇宙的恐怖が同居する農場シム

かわいらしい農場暮らしを楽しんでいるはずなのに、町の住人は皮膚を脱ぎ、隣人は猫で、誰もその異常さを問題にしない。『Welcome to Elderfield』は、クトゥルフ神話の世界を舞台に、穏やかな日常と理解の及ばない恐怖を同じ画面に成立させた作品です。原文筆者は、ホラーとコージーゲームのどちらが好きな人にも本作を勧められると評価しています。

農場生活の裏側で町が少しずつ変質

本作の主人公は、冒頭で「Dreamer(夢見る者)」であることが示されます。Dreamerとは、眠っているあいだに現実とは別の次元であるDreamlandsへ移動できる存在です。クトゥルフもDreamerとして知られ、眠りながら海底の悪夢の都市R'lyehに閉じ込められていると説明されています。こうした設定を前提にしながらも、ゲームは大きな事件や壮大な目的をいきなり提示するのではなく、Elderfieldの住人として過ごす日々から始まります。

プレイヤーが取り組むのは、住人から頼まれる仕事や農業、牧場運営です。町の人々はそれぞれ奇妙な事情を抱えていますが、その異常さをわざわざ説明しなかったり、当然のこととして受け入れていたりします。仕事をこなし、日数を重ねるほど、町の様子はさらに不穏になっていきます。

毎日ニュースを確認すると、夜のあいだに起きた新しい出来事が報じられます。本来なら心配になるような内容でも、Elderfieldでは町全体が最初から不安を抱えた状態にあるため、住人にとってはそれが通常運転です。異常な環境を好んでいる住人さえおり、彼らには「何かがおかしい」と感じる理由がありません。

原文筆者が例として挙げているのが、隣人のDaveという猫です。猫が隣人として暮らしているのに、町の誰もその点に触れません。さらにFarmer Hansは皮膚を脱ぐことを選び、その結果として骨が成長し、家から出られない状態になります。それでも周囲が話題にするのは、彼の食事を用意するのが難しくなったという程度です。こうした出来事を深刻な事件として扱わず、生活上の不便として流してしまう態度こそが、本作でもっとも不気味な部分だと原文筆者は見ています。

絵本のような見た目と抑えた音作り

本作の雰囲気を支えているのは、かわいらしさと不穏さを同時に感じさせるアートスタイルです。原文筆者は、暗い童話、とりわけ挿絵付きで翻訳された本来のグリム童話のような絵柄に、Junji Itoの作風を混ぜた印象だと説明しています。愛らしいキャラクターや生活感のある町並みの中に、神話的な異常さが紛れ込むことで、クトゥルフ神話を1冊の奇妙な絵本として体験しているような感覚が生まれています。

この表現は、農場シミュレーターに期待される安心感を壊すのではなく、その上に恐怖を重ねる役割を果たします。畑を耕したり住人の依頼をこなしたりする行為自体は穏やかですが、住人や町について知識が増えるほど、世界の仕組みが理解できなくなっていきます。ラヴクラフト作品の影響は一部の敵や設定だけに限られず、日常の細部まで行き渡っています。

音楽と効果音は前面に出過ぎず、世界の雰囲気を補うように機能しています。原文筆者は、音が流れていることを意識しなくなるほど自然に馴染んでいると評価しており、暗めのLo-fi音楽も本作の空気に合っているとしています。一方で、マスター音量が初期状態で100になっている点は気になったとのことです。音量設定を下げたい人にとっては、開始直後に大きく聞こえる可能性があります。

農場シムにターン制戦闘とRPG要素を追加

本作は、見た目から想像する農場シミュレーターよりもRPGとしての要素が多く含まれています。原文筆者が特に意外に感じたのは戦闘方式で、敵を倒すまで攻撃ボタンを押し続けるタイプではなく、ターン制を採用しています。攻撃を選びながら戦略を立てられるだけでなく、戦闘画面によって対峙している恐怖の姿をより詳しく確認できる点も特徴です。

装備メニューは充実しており、道具はインベントリに入っていれば、装備し直さなくても使用できます。農作業と戦闘のたびに持ち替える手間を省けるため、生活パートとRPGパートを行き来する際の負担は抑えられています。セーブも睡眠に限定されません。ベッドを調べれば、好きなタイミングでセーブできます。

回復や呪いの解除が必要になった場合は、風呂に入ることで対応できます。ただし、風呂に入るとすべてのモンスターがリセットされます。そのため、体力を回復して安全を確保する代わりに敵を再出現させるか、回復を後回しにして作業を続けるかを判断することになります。睡眠にも悪影響が発生する可能性があるため、あえて眠らずに進める選択肢が用意されている点も、本作の生活システムに緊張感を加えています。

魅力を損なわないために望まれる改善

原文筆者が改善を望んでいるのは、特にクラフト周りの操作性です。所持している素材の数に応じて、作成可能な最大数を自動で選ぶ機能がなく、プレイヤーが必要な個数を計算して入力しなければなりません。しかもクラフト画面では素材の所持数を確認できないため、いったんインベントリで確認した数字を覚えておく必要があります。作成するものが増えるほど、この仕様は手間になります。

開始時のインベントリ容量が小さいことも指摘されています。ほかのメニューを開いているときに所持品を簡単に確認できない場面もあり、探索や作業の流れを中断して持ち物を確認する必要が生じます。原文筆者は、クラフトの最大数指定や所持数の表示など、生活を快適にする機能が追加されれば、作品の魅力がさらに引き立つと見ています。

それでも、依頼を1つこなすたびに情報やアイテム、新しい資源へのアクセスが得られるため、作業が単なる繰り返しになりにくい点は高く評価されています。RPGMakerで制作され、開発者はChris Cote、パブリッシャーはIll-Advised Gamesです。クトゥルフ神話を暗い童話のように再構成し、農場生活の安心感を不安定な世界へ変えていく発想が、本作の大きな個性になっています。原文筆者は数時間プレイしても、自分がこの作品に対してどう感じるべきなのか分からないままだったと振り返っており、その割り切れなさこそが、居心地のよさと恐怖を両立させた本作の魅力だと伝えています。