← 最新記事一覧

『Duel of Meloch』はScytheとExpeditionsを融合、両方の所有者向け拡張として真価を発揮

2026年09月10日 | #レビュー | GamesRadar+

『Duel of Meloch』はScytheとExpeditionsを融合、両方の所有者向け拡張として真価を発揮

異なる2作品のルールを1つの対戦ゲームに組み込むという大胆な試みが、Duel of Melochの最大の特徴です。ScytheとExpeditionsのどちらか一方のルールを使って戦い、両方を所有していれば勢力やキャラクターを相互に持ち込めます。一方で、単体作品として見ると、3種類のルールを覚える負担に対して独自性が十分とはいえず、両方の原作を持つプレイヤーほど価値を感じやすい内容になっています。

2作品のルールを1つの対戦に統合

本作は、Jamey Stegmaier氏が手がけたScytheとExpeditionsを土台にした、1~2人向けの戦略・探索・エンジン構築ゲームです。対象年齢は14歳以上で、1ゲームの所要時間は約45分。単独で遊べるタイトルですが、Scythe側のプレイヤーとExpeditions側のプレイヤーが、それぞれ異なるルールセットを担当して対戦する仕組みが中核になります。

Scytheは資源を管理しながら生産力を高め、マップ上に勢力を広げていくゲームです。対してExpeditionsは、カードの管理やアップグレードを軸に、メックを動かしながらマップ上の腐敗に対処していきます。一見すると大きく異なるシステムですが、両作には六角形のマップや、条件を満たして星を獲得する勝利構造などの共通点があります。本作はその共通部分を利用し、異なるルールが同じ盤面で機能するよう調整しています。

マップ上の各ヘックスには通常より多くのアイコンが描かれ、Scythe側とExpeditions側がそれぞれ参照する情報が分けられています。Scythe側は労働者が生産アクションを行った場所のアイコンから利益を得る一方、Expeditions側はメックのいるヘックスに応じてカードをプレイしたり、使用済みカードをリフレッシュしたりします。盤面を共有しながらも、両者は基本的に自分の原作に近い判断を続けることになります。

勝利条件も両作の特徴を引き継いでいます。専用の「triumph track」には8つの星の獲得枠があり、先に4つの星を集めたプレイヤーが勝者です。たとえば、Scythe側はコインを12枚集める、Expeditions側は9枚集めることで、それぞれ別の星を狙えます。Scythe側が4体目のメックを配備する条件に対し、Expeditions側にはメックを3回アップグレードする条件が用意されるなど、同じ星を争うのではなく、勢力ごとに異なる達成条件が設定されています。

原作より直接的な駆け引き

本作では、星の獲得枠が両プレイヤーに共通しているものの、一度片方が取るともう一方は利用できません。そのため、原作では別々に進みやすい要素が、早い者勝ちの競争になります。相手が狙っている条件を先に達成するか、自分の勢力に合った別の枠へ切り替えるかという判断が生まれ、ScytheやExpeditions単体よりも対戦相手を意識する場面は増えています。

直接戦闘も発生します。Expeditions側はマップ上の特定のアイコンを利用して戦闘カードを獲得でき、そのメックがScythe側のメックや労働者のいるヘックスへ移動すると戦闘になります。盤面が比較的コンパクトなため、両者が接触する機会は原作より多くなっています。

戦闘では、両プレイヤーが手持ちのパワーをどれだけ使うか秘密裏に決め、さらに任意で戦闘カードのボーナスを加えます。戦闘に参加するユニット1体につきカードを1枚使えるため、複数のユニットを扱えるScythe側のほうが有利です。Expeditions側は常に1体のユニットしか持たないため、正面衝突では不利になりやすく、相手の防御が薄い場所を狙うなど慎重な判断を求められます。

ただし、原文筆者は本作の対話性が見た目ほど高くないとも評価しています。Expeditions側はScythe側の労働者がいるヘックスを封鎖し、生産を妨害できますが、戦闘力で劣るため、あらゆる場所に干渉できるわけではありません。星の獲得枠も、相手がある条件で先行すると競争を続ける意味が薄れます。貴重なアクションを無駄にしないため、途中で別の目標へ切り替えるのが合理的だからです。

ルールの再現度と遊びやすさ

原文筆者が最も高く評価しているのは、異なる2作品のシステムが予想以上に滑らかに結び付いている点です。Scythe側は、移動と資源管理を通じてエンジンを構築するという原作の面白さを保っています。広大な盤面全体を扱う原作に比べると、本作の範囲は限定されているため、特に初心者にとっては何を目指せばよいか把握しやすく、原文筆者はScythe部分がわずかに遊びやすくなったと見ています。

Expeditions側も、カードを管理しながら自分の戦略に合うアップグレードを集め、腐敗に対処する流れを維持しています。ただし、マップが小さく、原作で探索感を生み出していた裏向きのヘックスがないため、探索の手触りは弱まっています。それでもカード運用とアップグレードの判断は残っており、別のゲームになってしまったわけではありません。

2つのシステムがうまく機能するからこそ、「それぞれの原作を2人で遊ぶ代わりに、本作を選ぶ理由は何か」という疑問も生じます。ScytheとExpeditionsはいずれも2人より多人数のほうが向いているとされ、本作の小さなマップなら短時間の2人対戦が可能です。しかし、その利点だけで、2作品分のルールと本作用の変更点を覚える負担を正当化するのは難しい、と原文筆者は指摘しています。

さらに、本作にはScythe用の新勢力とExpeditions用の新キャラクターが収録されています。どちらも既存の選択肢とは異なるプレイ感を狙って設計され、ミニチュアの見栄えも評価されています。両方の原作を所有していれば、原作の勢力やキャラクターを本作へ持ち込むことも可能です。付属の「Tournament of Meloch」キャンペーン版では、異なる組み合わせを試しながら対戦を重ねられるため、単体で遊ぶ場合よりも所有済み作品との組み合わせで内容が広がります。

3種類のルールを覚える高いハードル

本作を遊ぶには、Duel of Meloch自体のルールに加えて、ScytheとExpeditionsのルールも理解しなければなりません。本作独自のルールは2作品より簡潔ですが、両方の原作は決して軽量級ではありません。どちらも未経験のプレイヤーにとっては、実質的に3冊分のルールを把握する必要があります。

しかも、ScytheとExpeditionsのルールは本作の箱に収録されていないため、所有していない作品のルールを確認するにはインターネットなどを参照しなければなりません。単体で購入して気軽に始められる作品を期待すると、ここが大きな障壁になります。原作のアイコンや用語に慣れていない場合、ゲーム開始前の説明にも相応の時間が必要です。

本作が成立した理由の一つは、両作が似たアイコン体系を使っていることです。デザイナーによれば、2作品を組み合わせるために共通の見た目を設計したわけではなく、単に好みのデザインだったとのことです。別作品のEuphoriaにも視覚的な共通点がありますが、こちらはゲーム上の直接的な関係はありません。

原文筆者は、機械的な実験としての完成度を高く評価する一方、ゲームとしての立ち位置には不満を残しています。Expeditionsのカード管理やScytheのエンジン構築は十分に楽しめますが、本作ならではの相互作用は、実際には各プレイヤーが原作側の行動を進める中で時折発生する程度です。見た目には勢力同士の激しい対立を予感させるものの、実際の勝負では戦闘よりも自分のエンジンやカードを整えることが重要になります。

購入を検討する際のポイント

ScytheとExpeditionsの両方を所有し、すでに楽しんでいるプレイヤーにとっては、本作を拡張として見ることができます。新勢力、新キャラクター、勢力やキャラクターの組み替え、2人用の短時間対戦、さらにキャンペーン形式の遊び方まで加わるため、既存作品を再び遊ぶきっかけとして価値があります。2作品のルールをすでに知っているなら、最大の欠点である学習コストも大きく軽減されます。

どちらか一方だけを所有している場合は、追加ルールを覚える負担に対して得られる内容が限定的です。片方のゲームをより短い2人用マップで遊びたいという目的なら検討できますが、もう一方のルールを新たに学ぶ必要があります。原文筆者は、片方だけを好んでいる場合でも、本作を買うより、まず所有している原作を遊び続けるか、未所有の原作そのものを選ぶほうがよいとしています。

どちらの原作も持っていない場合、単体ゲームとしての魅力はさらに弱くなります。異なるルールの融合という着想は興味深く、コンポーネントの品質やミニチュアの見栄えも長所です。しかし、単体作品として独自の体験を強く打ち出しているわけではなく、原作に似た遊びを別の形で体験する内容にとどまります。結論として、本作は新しいゲームを1本求める人よりも、ScytheとExpeditionsの両方を知るファンに向いた実験的な拡張です。