『Steam Frame』はPC接続で真価を発揮するVRヘッドセット
2026年09月15日 | #レビュー | Eurogamer
Valveが手がけるVRヘッドセット『Steam Frame』は、軽量化や高解像度化、スタンドアロン動作など、2019年のIndexから大幅な進化を遂げた製品です。特に付属の無線アダプターを使ったPC接続は、ケーブルも複雑な設定も必要としない快適な体験を実現しています。一方、単体でVRゲームを動かす用途では、対応状況や性能にばらつきがあり、まだ完成途上という印象も残ります。
IndexやQuest 3から進化したハードウェア
Steam Frameは、Valveにとって2019年のIndex以来となる自社製VRヘッドセットです。重量はIndexの800gから440gまでほぼ半減し、片目あたりの解像度は1440×1600から2160×2160へ向上しています。リフレッシュレートは72Hzから144Hzに対応し、レンズも従来のフレネルレンズからパンケーキレンズへ変更されました。これにより本体を薄くしながら、映像の明瞭さも高めています。
位置や移動のトラッキングには、本体に搭載されたカメラを使用します。部屋に別途ベースステーションを設置する必要はなく、背面には交換式バッテリーを装着できるため、電源につないだまま使う必要もありません。もちろん、本体だけでVRゲームや通常の2Dゲームを動かすスタンドアロン機としても利用できます。
Meta Quest 3との比較では、片目あたりの解像度が2064×2208に対してやや高く、重量もQuest 3の515gより軽量です。視線追跡機能を本体に備え、内蔵メモリは16GBとQuest 3の8GBの2倍になっています。CPUにはQualcomm Snapdragon 8 Gen 3を採用しており、Quest 3のSnapdragon XR2 Gen 2より、合成ベンチマーク上では約30%高い性能が見込まれるとのことです。描画するピクセル数はQuest 3より約2%多い程度なので、処理性能の差がゲーム面で有利に働く可能性があります。
ただし、本体は安価ではありません。256GBモデルは、512GBストレージを備えるQuest 3より高価に設定され、1TBモデルも用意されています。内容物はヘッドセット、背面に装着する交換式バッテリー、2つのコントローラー、USBストリーミングドングル、充電ケーブル、眼鏡用スペーサーです。別売りのErgonomic Accessories Kitや電源ユニットもあり、メガネ用の度付きレンズはValveのパートナー企業Zenni Opticalから購入できます。ValveはMetaのようにハードウェアを補助する販売方式を取っていないため、内部部品の性能が高いぶん、価格差を受け入れられるかが大きな判断材料になります。
装着感と操作性は大きな長所
原文筆者は、これまで試したVRヘッドセットの中でも、Steam Frameが特に快適だと評価しています。前面のコア部分は約185gと軽く、バッテリーを後頭部に配置することで、前方に集中しがちな重量を分散しています。Quest 3が前側に重さのある装着感なのに対し、Frameは長時間のプレイでも負担が少ないとのことです。
ただし、標準状態では本体が少しずつ顔の前方へずれ、額に圧迫感が出ることもあります。別売りのAccessories Kitに含まれるヘッドストラップを使えば、顔だけでなく頭頂部にも重量を分散でき、装着時間を伸ばせます。キットには、通常の手首用ストラップよりしっかり固定できるコントローラー用グリップストラップと、鼻の部分から光が入り込むのを抑えるラバーフラップも含まれます。
一方で、ヘッドストラップを取り付けると本体下部に隙間が生じやすくなり、そこから光が入ることがあります。鼻用フラップはこの問題を補うためのものですが、取り付けには本体の留め具やクリップを外す作業が必要です。構造がモジュール式で交換や拡張を考えた設計になっていることは分かるものの、取り付け後も完全に遮光できるわけではありません。
映像は鮮明で十分に豊かですが、Quest 3から明確に別次元へ進化したと感じるほどではないと原文筆者は見ています。視野角は最大110度をうたうものの、映像をのぞき込むようなゴーグル感は残っています。スピーカーは左右それぞれに2基のドライバーを内蔵し、立体的な音場を表現できますが、低音は物足りません。ヘッドホン端子はなく、発売後数か月でプレミアム音響ソリューションを含む「エンスージアスト」向けアクセサリーが予定されていると、Valve関係者が説明しています。
動作中はファンによる冷たい風が目の周辺に流れ、本体上部からは熱が排出されます。風や熱の向きは、原文筆者が試した範囲では大きな問題になっていません。ただ、顔に装着したまま位置を調整すると、クッション材を固定する磁気ストリップが外れてしまうことがあります。こうした細かな不便はあるものの、装着感そのものは高く評価されています。
コントローラーは1つ約140gで、6自由度の回転トラッキング、指と親指のトラッキングに対応します。単3電池2本で、1組あたり約40時間の使用が可能です。形状はQuest 3のTouch Plusコントローラーに近く、手に自然に収まりながら、軽すぎて頼りないという印象もありません。左側に方向パッド、右側に4つのフェイスボタンを備え、両方にスティック、ショルダーボタン、トリガーを搭載しています。内側のデュアルステージ・グリップトリガーは、原文筆者にはやや頼りなく感じられたようです。
スタンドアロンの対応状況には課題
初期設定は基本的に簡単ですが、初回アップデートに約40分かかる場面がありました。これが通常の挙動なのか、レビュー時のベータ版ソフトウェアに固有の問題なのかは分かっていません。設定後は、本体ストレージにゲームをインストールして単体で遊ぶか、PCからゲームをストリーミングするかを選択できます。
単体動作では、ValveのLinux向け互換レイヤーProtonを使って、VRゲームだけでなく通常のPCゲームも起動できます。ValveはSteam DeckやSteam Machineと同様に、動作確認済みタイトルへ「Great on Frame」の表示を付ける仕組みを導入しており、発売時点では約130本が認証対象になる予定です。通常の2Dゲームは720p・30fps、VRゲームは1728×1728・72fps以上で動作することが認証条件とされています。ただし、約130本という数はVRゲームと2Dゲームの合計です。
レビュー時点で原文筆者が所有していたVRゲームのうち、認証済みだったのはArizona Sunshine 2、Pistol Whip、Moss VR、The Room VR、Walkabout Golfでした。2Dゲームの認証タイトルにはFactorio、Dread、Inside、Animal Well、Dave the Diver、Silksong、Portal 2、Streets of Rage 4などが含まれていました。Walkabout Golfはスタンドアロンでも問題なく動作し、設定に手間をかけず快適に遊べたとのことです。
2Dゲームは、Protonに対応していれば、未認証でも比較的安定して動作します。CupheadやHadesを映画館のスクリーンのような仮想空間で遊ぶ体験も好印象で、クラウドセーブに対応するSteamの仕組みにより、他のデバイスとの行き来も容易です。ゲーム内の状況に応じて周囲の仮想照明を変える機能もあり、通常のゲームを大画面で遊ぶだけにとどまらない演出が用意されています。
ただし、3Dゲームでは結果が不安定です。Botany Gardenは最低設定でもフレームレートを安定させられず、現代的な大作をスタンドアロンで動かすには、開発者による専用の最適化が必要になる可能性があります。古い作品のDark Souls 2などは動作する見込みがあるものの、VR空間で30fpsの3Dゲームを遊ぶのは快適とは言いにくく、原文筆者は2Dゲームを中心に使う考えを示しています。
VRゲームの状況はさらに厳しく、起動時から問題なく動作するタイトルがある一方、設定を調整すれば遊べる作品、起動すらしない作品、極端にフレームレートが低下する作品が混在しています。Tetris EffectやGhost Townは多少の調整で動作しましたが、Serious Sam VRとEscape Simulatorは起動せず、The Walking Dead: Saints & Sinnersはメニュー画面で停止しました。Myst VRはヘッドセット自体が電源オフになるほどのクラッシュを起こしています。No Man's Skyのように最低設定でもスライドショーになるタイトルや、アンチエイリアスと解像度を最低まで落とさなければ遊べないタイトルもありました。
Valveの認証プログラムが拡大すれば改善する可能性はありますが、現時点ではMeta Questのネイティブゲームのような、起動してすぐ遊べる手軽さからは遠い状態です。認証済みタイトルが少なく、スタンドアロンVRを主目的にする場合は、購入前に対応状況を確認する必要があります。
PC接続では無線VRの魅力を発揮
本体単独での性能には限界がある一方、PCから映像を送る用途では評価が大きく変わります。付属のドングルは「プラグ&プレイ6GHzワイヤレスアダプター」として機能し、PCのVRゲームと非VRゲームをヘッドセットへ無線ストリーミングできます。現時点ではSteam Machineには対応していません。
この接続では、ケーブルを使わず、MetaのAir LinkのようにWi-Fi設定で苦労する必要もありません。Valveは視線位置を利用して、見ている場所の画質を優先し、視界の外側ではビットレートとピクセル数を抑えるフォービエイテッド・ストリーミングを採用しています。原文筆者が試した範囲では、PC側の高い処理性能を利用しながら、高解像度や高リフレッシュレートを保ち、遅延や画質劣化も目立たなかったとのことです。
電波の届く範囲も広く、PCのある部屋から廊下を挟んだ別室へ移動して、ルームスケールVRに適した空間でプレイできました。ただし、住環境によって結果は変わります。No Man's SkyでPC側の設定をすべて引き上げた際には、PCの処理能力が限界に達し、ストリーミングも停止しました。これはドングルの欠点というより、送信側の負荷が原因とされています。
PC版Half-Life: Alyxは、本体購入時に無料で付属します。Frame向けの移植では、ゲームプレイに大きな妥協を加えず、アクション、ホラー、映像演出、VRならではのインタラクションを維持しています。ただし、視線の中心へ解像度を集中させるフォービエイテッド・レンダリングにより、周辺視野にちらつくギザギザした表示が生じ、原文筆者には気になる要素となりました。
総合すると、本作は単体型VRヘッドセットとしては、互換性と安定性に課題を残しています。短いバッテリー駆動時間も弱点で、スタンドアロンでは1回の充電で約1時間ほどしか遊べません。カラーのパススルーカメラを採用せず、周囲の映像はモノクロ表示となるため、複合現実ゲームを重視するユーザーには不満が出る可能性もあります。Valveのパートナー企業Arcturusは、Quest 3やApple Vision Proを上回る画質をうたうフルカラー・カメラアップグレードを開発していますが、標準仕様ではありません。
それでも、軽量で快適な装着感と、PCゲームをケーブルなしで遊べる手軽さは大きな魅力です。Meta Quest 3より価格が高く、単体での使いやすさでも後れを取っていますが、PC接続を中心に考えるユーザーにとっては、余計な設定や配線から解放される価値があります。原文筆者は、Quest専用タイトルを除けば、Frameを現在のメインヘッドセットとして使うようになったとしています。高性能なPCを持ち、VRを無線で快適に楽しみたい人には有力な選択肢ですが、単体で幅広いゲームを遊びたい人には、認証タイトルの少なさと性能の限界を理解したうえで検討したい製品です。