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『lily's world XD』は2004年のネット文化から心理ホラーへ引き込む短編ミステリー

2026年09月18日 | #レビュー | DualShockers

『lily's world XD』は2004年のネット文化から心理ホラーへ引き込む短編ミステリー

2004年当時のインターネットを再現した古いノートパソコンを入口に、懐かしさが徐々に不穏な恐怖へ変わっていく心理ホラーです。主人公はゴミあさりで見つけたパソコンから、かつて普通のティーンエイジャーだったLily Hanに起きた異変を調べることになります。約5時間で完結する短い作品ながら、プレイヤー自身が探偵になったように情報を集め、危険へ近づいていく感覚が軸になっています。

2004年のパソコンが呼び起こす懐かしさ

本作でまず強く印象に残るのは、Lilyのノートパソコンがアップデートされないまま、2004年当時の状態で止まっていることです。デスクトップには妖精を思わせるマウスカーソルが表示され、メッセンジャーアプリや古いデザインのウェブサイトが並びます。背景色を変えたり、ページを自分好みにカスタマイズしたりする、当時のインターネットにあった素朴な遊びも再現されています。

さらに、服装を選ぶドレスアップゲームも用意されており、単に古いウェブサイトを眺めるだけではなく、当時のネット文化に触れているような感覚を味わえます。2004年のインターネットを実際に知っているプレイヤーにとっては、一般的な「昔の再現」ではなく、自分が過ごした時代へ入り込む体験として機能するでしょう。

一方で、この懐かしさはプレイヤーによって効果が変わります。そうした時代のネット環境を経験していない世代にとっては、作品が狙うノスタルジーが十分に伝わらない可能性があります。原文筆者は、この点が自身にとって序盤の大きな魅力だった一方、別のプレイヤーには雰囲気づくりの効果が薄くなるかもしれないと見ています。

日常の画面に混ざり込む心理ホラー

懐かしい画面を見ているうちに、プレイヤーはLilyの身に起きたことを調べ始めます。彼女は当初、どこにでもいる普通のティーンエイジャーとして見えますが、ファイルを読み進めると、危険にさらされている少女だったことが明らかになります。しかも、まだ助けられる可能性が残されているため、プレイヤーは過去の記録を探りながら彼女の状況へと踏み込んでいきます。

恐怖は最初から大きく押し出されるのではなく、一定のペースで少しずつ入り込んできます。パソコン内のファイルやウェブサイトを調べていると、画面のグリッチやハッキングが発生し、いつの間にか懐かしいデスクトップが不安を感じさせる場所へ変わっています。原文筆者は、ホラー要素が本格化したことに気づいた時にはすでに物語の中へ入り込んでおり、後戻りできない状態になっていたと振り返っています。

本作では、インターネット上の情報を追う行為そのものが物語の危険と結びついています。調べなければLilyの状況は分かりませんが、調べるほど、知らなくてもよかった事実や危険に近づいていきます。この構造によって、ホラーは単なる演出ではなく、プレイヤーが自分の意思で情報を求めた結果として発生するものになっています。

パズルを追う探偵スリラーとしての構成

ゲームの大部分はパズルの解決に費やされます。ただし、答えをすぐに提示するタイプではなく、複数の情報を探し、関連性を見つけながら進める設計です。ある謎を解くために調べていた情報が、その直後に別の問いへの手がかりになることもあり、パズル同士が連続してつながっていきます。

一部の謎では、単純な見落としによって行き詰まることもあります。必要な情報は画面内に存在しているものの、別の要素とのつながりに気づけず、しばらく考え込む場面が生じます。しかし、答えを最初から手渡される作品とは異なり、自分が見落とした細部を発見して解決する構成です。原文筆者は、そうした苛立ちはあるものの、ゲームとパズルについて考え直すきっかけになる「良い種類の難しさ」だと評価しています。

プレイ感覚は心理ホラーというより、物語の中盤まで探偵スリラーに近いものです。Lilyに何が起きたのかを、パソコン内の情報や断片的な手がかりから組み立てていき、その調査の先にホラーが待っています。インターネット上の危険な事柄を調べるWelcome to the Gameシリーズに近い雰囲気もありますが、本作ではLilyの物語そのものが恐怖の中心です。

短いからこそ保たれるテンポと注意点

クリアまでの時間は約5時間です。この短さは、本作の構成に合った判断とされています。インターネット上の調査を軸にしたゲームを長大にすると、情報を探す作業が興味深さよりも面倒さを強く感じさせるおそれがあります。本作は、謎を追う流れが失速する前に物語を終えられるため、懐かしさから恐怖へ移行するテンポを維持できています。

また、プレイヤーの予想を裏切るような、いわゆる第四の壁を破る演出も登場します。作中ではSteamのフレンドリストが利用され、フレンドの1人からメッセージが届いたように見える場面があります。こうした演出を楽しい仕掛けと感じる人がいる一方、実際の環境に触れられたようで不安になったり、警戒心を抱いたりするプレイヤーもいるでしょう。

一方で、冒頭に表示される光過敏性への警告は無視しないよう注意が必要です。本作には画面のフラッシュや、そのほかの視覚効果が含まれており、人によっては健康上の問題を引き起こす可能性があります。原文筆者は、作品への主な不満として、この点に加えて登場人物のテキストがやや説明的で、もっと控えめな表現のほうが効果的だったかもしれないことを挙げています。

懐かしさと現実味が残す後味

本作は、1回のプレイで最後まで進められる短編の心理ホラーです。パズルは簡単すぎず、かといって不可能な難度でもなく、手がかりを探す過程では探偵のような感覚を味わえます。2004年のネット文化を知るプレイヤーには強いノスタルジーを与え、その日常的な画面を少しずつ異常なものへ変えていく演出が、作品全体の軸になっています。

Lilyの状況は、外側から見れば「なぜそこまで危険な状態になったのか」と疑問に思えるものです。しかし、当事者として渦中にいると、気づいた時には手遅れになっているかもしれません。原文筆者は、そうした現実に根ざした感覚が、クリア後も本作を記憶に残す理由の1つだとしています。フラッシュ表現への配慮や一部の文章表現に注意は必要ですが、短時間でミステリーと心理ホラーを味わいたい人に向いた作品です。