『Baldur’s Gate 3』は名作でも最高傑作とは限らない、原点の続編が持つ圧倒的な物語性
高い評価を受け、いまも繰り返し遊ばれている『Baldur’s Gate 3』だが、Baldur’s Gateシリーズで最も優れた作品とは限らない――。原文筆者はそう主張し、20年以上前に登場したBaldur’s Gate 2こそシリーズ最高のゲームだと評価しています。選択によって仲間や世界の運命が変わり、主人公自身が神になる可能性と向き合う物語が、その理由です。
監禁から始まる、神の血をめぐる物語
Baldur’s Gate 2: Shadows of Amnは、Baldur’s Gate 1の物語を直接引き継ぐ作品です。ただし、前作を知らなくても単独で楽しめる構成になっています。主人公は、殺戮の神として知られる故バールの血を引く人間、バールスポーンのひとりです。体内に宿る神性を狙われ、ソード・コースト各地で同じ血を持つ者たちが追われるなか、主人公もついにその追跡に捕らえられます。
物語の幕開けで主人公が目を覚ますのは、アスカトラの地下にある施錠された檻の中です。仲間たちも近くの檻に閉じ込められ、魔法使いがひとりずつ実験を施しています。主人公を捕らえたのは、かつて高名なエルフの魔術師だったジョン・イレニカスです。禁じられた人体実験を行ったことで同族から追放された人物であり、追放後もその研究をやめていません。
序盤には、彼が実験方法を試すためにドライアドの森を枯らし、木の精霊たちを干からびた無言の存在へ変えてしまった痕跡も登場します。原文筆者は、イレニカスを主人公が出会う「おぞましく、救いのない悪役」として描写しています。主人公は彼に単独で立ち向かうわけではありませんが、同行する仲間たちもまた、それぞれが深刻な苦悩を抱えています。
仲間たちの人生も選択の対象になる
ジャヘイラは、ゲームが本格的に始まる前に夫を失い、その後の旅を悲嘆と戦いながら進むことになります。エアリーは、翼を切られた状態でサーカスの見世物として閉じ込められていた過去を持つ人物です。再び飛べるようになることは、彼女が直面する問題のひとつにすぎません。
騎士見習いのアノメンは、自分の実力を証明したいという思いが強いあまり、判断を誤って他人を死なせる可能性があります。その犠牲者には、彼自身の姉妹が含まれることもあります。ダークエルフの女神官ヴィコニア・デヴィルは、アンダーダークから追放された人物です。追放の理由は、慈悲を示したという、彼女が仕える女神にとっては許されない行為でした。
本作では、こうした仲間たちが単なる戦闘要員として配置されているわけではありません。彼らの過去や信念に関わる問題へ主人公が介入し、助けるのか、見捨てるのか、あるいは別の結末へ導くのかを決めることになります。主人公の選択に仲間が反応し、ときには賛同し、ときには反発する仕組みが、物語をパーティ全体のものにしています。
クラスと選択が物語そのものを変える
本作の特徴は、選択が会話や結末だけでなく、プレイヤーが体験する物語の範囲まで変える点にあります。アスカトラの港、貧民街、政府地区は、到着した時点から広く探索でき、サイドコンテンツにも好きな順番で取り組めます。原文筆者は、後年になって一般化した「オープンワールド」という宣伝文句が広まる前から、こうした自由度を備えていた作品だと説明しています。
さらに、主人公のクラスごとに固有のクエストラインが用意されています。ファイターなら城塞を率いることになり、シーフならギルドを掌握し、クレリックなら寺院の復興を任されます。これは全員が同じ物語の脇に追加されるサイドクエストではなく、キャラクターをどのクラスに育てたかによって現れる、独立した物語の一部です。
そのため、同じ世界を訪れても、選んだクラスによって見えるものが変わります。原文筆者は、ある長年のプレイヤーが購入から12年後になって初めて1周目を終えた例を紹介しています。そのプレイヤーは別のクラスで世界を見直すため、何度も最初からやり直していたとのことです。1本のゲームを12年かけて終えるのは異例ですが、クラスや選択による違いが、それだけの再プレイ性を生んでいるとしています。
バールスポーンが迫られる最後の選択
メインキャンペーンのクリアには、多くのプレイヤーでおよそ70時間かかります。その間、主人公は情報を引き出すために拷問され、捕らわれた別の人物を信用せざるを得なくなり、イレニカスの目的を知り、やがて自分と同じ殺戮の神の血を持つ兄弟姉妹に立ち向かうことになります。
物語の中心にあるのは、主人公が自分自身をどう受け入れるかという問題です。バールスポーンとしての血筋だけでなく、皮膚を突き破るように現れる怪物的なスレイヤー形態とも向き合わなければなりません。その力を受け入れれば、仲間との関係や自分の人間性が変わる可能性があります。最終的には、バールの玉座に昇って神性を得るだけの強さが自分にあるのか、それとも失敗した器のひとつとして死ぬのかを選ぶことになります。
Baldur’s Gate 2は2000年に登場し、後のBioWare作品にも大きな影響を与えました。Knights of the Old Republicの属性システムや終盤の仲間に関する展開、Mass Effectのロイヤリティミッション、Dragon Ageにおける出自ごとの物語と固有ミッションには、本作の仕組みと通じる部分があると原文筆者は指摘しています。
仲間がプレイヤーのほぼすべての選択に反応することや、力を得る代わりに怪物的な変身を受け入れるか拒むかという終盤の判断は、後のBaldur’s Gate 3にも受け継がれた要素です。原文筆者は現在も同作を頻繁に再プレイしているとしながら、それでも新しい遊び方を探したくなったときには、現代の作品ではなくBaldur’s Gate 2を手に取るべきだと読者に勧めています。イレニカスの名前が、何十年も経った今なおプレイヤーを身構えさせる理由を理解できる作品だ、というのが原文筆者の結論です。