小島秀夫氏、Physint中止をZoomで知らされ「スタジオが崩壊する可能性」を懸念
ソニーが開発中止を伝えたPhysintについて、小島秀夫氏と小島プロダクション社長の平野真司氏が、通知を受けた当時の状況を明らかにしました。2人によると、ソニーからの連絡は6月中旬にZoomで行われ、小島氏は怒りや悲しみよりも、約200人のスタッフを抱える独立スタジオの存続を案じていたとのことです。プロジェクトはその後、PlayStation Studios向けからXbox向けへと移され、開発が続けられています。
ソニーからZoomで中止を通知
小島氏と平野氏は、The Washington Postのインタビューで、ソニーからPhysintの中止方針を伝えられた場面を振り返りました。通知があったのは6月中旬で、ソニー側の誰が連絡を行ったのかについては明らかにしていません。
平野氏は、突然の説明を受けた際に「頭が真っ白になった」と振り返っています。一方で、最も驚いたのは、その後の小島氏の行動だったとのことです。小島氏は自室に戻ると、怒りをあらわにするのではなく、すぐに仕事を始めたといいます。
小島氏自身も、当時は怒りや悲しみを感じたというより、今後どうすべきかを考えていたと説明しました。「ただショックで、驚いていました。怒りも悲しみもなく、どうすればいいのかを考えていた」と話し、すぐにはスタッフへ事実を伝えられなかったとしています。
その背景には、スタジオの経営基盤への不安がありました。小島氏は、同社が独立したスタジオであるため、資金提供を受けられなくなれば「スタジオそのものが崩壊する可能性がある」と説明しています。単に1本のゲームが中止になる問題ではなく、スタッフ約200人の雇用や、会社の存続にも関わる出来事だったということです。
Physintはソニーとの合意から始まった企画
Physintは、小島氏が2020年に体調を崩したことをきっかけに構想されたといいます。当時、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのCEO兼社長を務めていたジム・ライアン氏と小島氏は、ステルスゲームをもう一度一緒に制作することで合意していました。
そのため小島氏は、プロジェクトの途中でソニーが撤退を望んでいたのであれば、もっと早く知らされるべきだったと述べています。ライアン氏は2024年初頭にソニーを退任していますが、小島氏はPhysintについて、ソニー・インタラクティブエンタテインメントと自身が協力して制作すると合意した企画だと認識していたとのことです。
ソニーは以前、Kojima ProductionsとのPhysintに関する協業から離れるという難しい決断を下したと説明していました。一方、小島氏側は、PlayStation Studiosから予期せずプロジェクトを中止すると伝えられたと説明しています。両者の発表では、協業終了という結果は一致しているものの、通知を受けた側の受け止めには隔たりが残っています。
PT中止の経験が判断に影響
小島氏がスタッフの行く末を強く気にかけた理由には、過去にコナミで経験したSilent Hillsの中止もあります。同作はノーマン・リーダス氏を主演に迎え、体験版PTによって大きな注目を集めていましたが、コナミが開発を打ち切りました。その後、小島氏とリーダス氏はDeath Strandingで再び協力しています。
小島氏によると、Physintではすでに出演者や他のアーティスト、協力者と話し合いや交渉を進めていました。企画への参加を喜んでいた人々に対し、再び中止を伝えることは避けたかったとしています。「PTのときに経験したことを、もう一度繰り返したくありませんでした」と説明し、俳優たちに中止を告げる状況を望んでいなかったと語りました。
今回の出来事は、Kojima Productionsの設立10周年であり、小島氏にとってゲーム制作40周年という節目の時期にも起きました。小島氏は、そうした節目の中でPhysintが自身にとって重要なタイトルだったと述べています。ソニー向けの企画として始まった作品が、資金提供元の変更を伴う形で継続されることになった点でも、同氏のキャリアにおける大きな転機となっています。
ソニーとの関係や報道への反応
PhysintをXbox向けに移して開発を続けることになった後も、小島氏はソニーとの関係が壊れたわけではないとしています。「企業は生き物のようなものです。ソニーとの関係は今もあります。ソニーのカメラやWalkmanも使っています。争っているわけでも、戦っているわけでもありません」と説明しました。今回のプロジェクトをめぐる判断と、ソニーブランドへの個人的な関係は切り分けているようです。
一方、Kojima Productionsは、Physint中止の理由をめぐる報道について公式見解を示しています。Bloombergは、Death Strandingシリーズがソニーの収益期待を満たさなかったことが中止につながったと報じたほか、Physintが締め切りに遅れ、発売まで何年もある段階で予算を大幅に超過する見込みだったと、事情を知る人物の話として伝えていました。
これに対しKojima Productionsは、通常は「根拠のない推測」にコメントしないものの、今回はプレイヤーに注意を促す必要があると判断したとのことです。スタジオはXへの投稿で、報道に書かれた主張はいずれも公式または記録に残る情報源から出たものではないとして、「懐疑的な目で受け止めてほしい」と呼びかけました。中止に至った具体的な理由については、現時点で小島氏側とソニー側の説明に加え、報道内容も並存している状況です。