『The House in Fata Morgana』は14年後も色あせない怪談ビジュアルノベルです
2026年10月12日 | #ゲーム紹介 | Polygon
『The House in Fata Morgana』は、幽霊よりも人間の弱さが恐ろしい怪談ビジュアルノベルです。物語の舞台はひとつの屋敷。そこで繰り返される悲劇は、今なお遊ぶ価値があります。
屋敷に刻まれた悲劇をたどる
優れた怪談には、自分自身の一面が映し出されることがあります。隠しておきたい弱さや、目をそらしたい姿、あるいは身を滅ぼすことになる高潔さです。M・R・ジェイムズやシャーリイ・ジャクスンの怪奇譚がスティーヴン・キングの作品とは異なる古典的な魅力を持つのは、そうした人間らしさを描くからでしょう。『The House in Fata Morgana』もその系譜にあり、怪談文学の中でも屈指の作品です。
本作はゲームですが、音楽と美しい絵を添えた、1冊分の文章を読むようなビジュアルノベルです。操作や反射神経を求められないため、怖いゲームが苦手な人にも向いています。ビジュアルノベルには、後から重要になる細部を積み重ねるために、物語の進みが遅く感じられる作品もあります。ひぐらしのなく頃にのように、何気ない場面が後々意味を持つこともありますが、それでも長すぎると感じることはあります。『The House in Fata Morgana』はそうした間延びを感じさせません。
嵐の夜、名前も持ち物もないあなたは、窓に明かりひとつ見えない大きな屋敷に避難します。そこにいるのは、奇妙なメイドだけ。彼女はあなたを迎え入れ、体調が戻ったら屋敷を案内すると告げます。案内されるのは建物の造りや修繕の記録ではなく、屋敷に刻まれた歴史です。部屋ごとに、過去の出来事がひとつずつ語られます。
ジェームズ朝の時代には、身の毛もよだつ嫉妬が殺人を招きます。その100年後には、連続殺人犯が屋敷を住みかにし、若い女性に恋をします。彼女の無邪気な楽観も、ねじれた未来を変えることはできません。この屋敷に幸せな物語はありません。
怪物を生むのは人の選択
こうした悲劇は、運命によって定められていたわけではありません。住人たちは別の道を選ぶこともできたはずです。それでも、弱さや身勝手な思い上がりが、彼らを破滅へと導いていきます。
物語に引き込まれるのは、被害者も加害者も、どこにでもいそうな人々だからです。悪意に満ちた人物たちは、自分の欲求を周囲の人々より優先する選択を何度も重ね、そうなっていきました。一方、善良な人物たちは愛する相手を信じ、その人がそこまで残酷になれるはずがないと思い込んでしまいます。
血に染まった隠れ家に潜む影より恐ろしいのは、友人や家族、恋人が怪物へと変わる可能性です。『The House in Fata Morgana』が描く恐怖の中心には、人が人に向ける残酷さがあります。