元ZA/UM開発陣が『Red Rooster』を発表、物理演算を軸にした3D RPGとして開発中
2026年10月14日 | #ゲーム紹介 | Eurogamer
Summer Eternalが新作RPG『Red Rooster』を発表しました。物理演算を全面的に取り入れた3D作品で、スタジオはDisco Elysiumの後継作や類似作を目指していないとしています。一方、公開された構想には、同作を思わせる要素も見られます。
放火事件を追う受刑者の物語
Summer Eternalは、Disco Elysiumの脚本と世界設定を手がけたArgo Tuulikをはじめ、元ZA/UMのDora Klindžić、Anastasia Ivanova、Michael Oswellらが参加するスタジオです。クロアチアゲーム開発者協会の事務局長Aleksandar Gavrilovićや、Disco Elysiumのナレーションを担当したLenval Brownも名を連ねています。
『Red Rooster』では、ホワイトカラーの受刑者Redrick Roostが放火事件の捜査官となり、アヘン依存症の数学者と組んで連続放火事件を追います。事件は、消防署長を務めるRedrickの兄につながっていくようです。舞台は、三部構成の都市アルタ=タントルを形作る、フラクタル状の国境諸島。政治色の強い歴史改変ものに、濃いSF要素を加えた世界です。ゲームの標語は「火を消して世界の真実に近づき、火を放って自分自身の真実に迫れ」です。
物理演算で変化する街と人々
スタジオは本作を、思考を刺激する世界設定重視のRPGと、物理演算を生かした没入型シミュレーションの要素を組み合わせた作品と説明しています。物体を動かし、操作し、燃やせる世界を作り、プレイヤーが物理的に世界へ働きかけられるようにする狙いです。固定された地図のようなRPGの舞台ではなく、出来事や人々の物語に反応する街を目指しています。
Unreal Engineを採用し、見下ろし型の制約を離れた3D空間と、動的に動くカメラを取り入れます。開発チームは、2025年に注目を集めたRPG Expedition 33を手がけたSandfall Interactiveの小規模な制作体制を引き合いに、ダブルA規模の予算を目指すとしています。現在は開発前半の終盤に差しかかり、社内ではプレイ可能な技術検証用デモもできています。
主人公のコンセプトアートは、Disco Elysiumの主人公ハリアー・デュボアを思わせます。また、Redrickの内面を描く「コープ」には、異なる動機や衝動、性格を表す複数の雄鶏が登場します。これはDisco Elysiumの「思考キャビネット」に通じる印象を与えます。スタジオはほかに、Exanima、Half-Life: Alyx、Vampire: The Masquerade: Bloodlines、Dark Messiah of Might and Magic、Arcanum: Of Steamworks and Magick Obscura、Planescape: Torment、LarianのDivinityシリーズを影響源に挙げています。ゲーム以外では、ドラマのMillennium、Fringe、Dark、Better Call Saul、Fargoや、Ted ChiangとJohn Steinbeckの作品を参考にしています。
開発記録を兼ねた500ページの書籍
本作の発表に合わせて、Summer Eternalは500ページの書籍Summer Eternal Anthologyも紹介しました。ゲーム業界が文化や労働に与える影響を論じる内容と、『Red Rooster』の開発記録を兼ねています。経済学者Yanis VaroufakisとRichard Wolffへのインタビュー、Ted Chiangとの対談、BioWare出身のMark DarrahとDavid Gaiderとの会話のほか、労働者主導の団体UVW-CWAやAftermath、Peregrine Coast Pressの話も収録されています。Peregrine Coast Pressは「紙の変態たち」と紹介されています。
書籍は通常版が69ユーロ、レコードと追加グッズが付くDeluxe Firestarter版が99ユーロです。購入者はSummer Eternal Players Non-Profitの会員にもなれます。この非営利団体はSummer Eternalの5%を保有し、会員はスタジオ運営に投票できるほか、『Red Rooster』の利益のうち5%を将来どのように使うかについて意見を示せます。
ZA/UMから分かれた開発者たち
Summer Eternalのほかにも、Disco Elysiumの元スタッフによる独立スタジオLongdueや、同作の開発チームから離れたグループを名乗るDark Math Gamesが設立されています。開発スタジオとして存続したZA/UMは、6月にZero Parades: For Dead Spiesを発売した後、残るスタッフの大規模なレイオフを実施しました。
チームが分かれる前には、ゲームディレクターのRobert KurvitzとアートディレクターのAleksander Rostovが、ZA/UMの経営陣は不正な手段でスタジオと知的財産の所有権を得たと主張しました。2人は、新しい所有者の財務記録を求め始めた後、突然解雇され、自分たちの仕事から切り離されたとも述べています。その後、経営の不手際や不正行為を巡る反対側の主張も出て、騒動はさらに複雑になりました。
筆者は、Summer Eternalが労働者とプレイヤーの関与を重視する運営モデルを掲げ、この野心的なゲームをその旗印にしている点に期待を寄せています。業界が後期資本主義の重圧で揺れるなか、少し希望を感じさせる取り組みだと評しています。