「PlayStationの父」久夛良木健氏、パッケージ版終了への不満に理解を示す一方「経済的には合理的ではない」と語る
「PlayStationの父」として知られる久夛良木健氏が、ソニーによるディスク生産終了の決定に対するプレイヤーの不満に理解を示しました。そのうえで、ゲーム会社はデジタル所有に対する意識を変えていく必要があるとの考えを示しています。VGCの取材に答えたものです。
ディスクは「所有」の象徴、それでも経済的には合理的でない
久夛良木氏は今週、英国ミドルスブラで開かれたGame Republic主催のイベント「New Horizons」で、VGCの取材に応じました。元ソニー・インタラクティブエンタテインメント会長兼グループCEOの同氏は、PlayStationがデジタル専業へ移行しようとしていることなど、業界のさまざまな話題について語りました。
久夛良木氏は初代からPS3までの3世代のPlayStationの開発を統括し、2007年にソニーを離れました。パッケージメディアからの移行は以前から予測しており、2006年の時点で、デジタル配信が広がればいずれディスクは不要になり、オンラインのストリーミングによってハードディスクすら要らなくなるとの考えを述べていたといいます。
現在76歳の同氏は、ソニーの対応が「ゲーム愛好家との間に摩擦を生んだ」ことを認めています。ただし、PlayStationがディスクのために資源を割き続けることは「経済的に合理的ではない」とも述べました。
背景として挙げたのはネットワーク環境の変化です。PS2やPS3の時代にもネットワーク機能はあったものの、今ほど一般的ではなく、現在は非常に多くの人がネットワークにつながっていると説明しました。
そのうえで、ディスクが「ゲームを所有すること」の比喩になっていることは理解できると語っています。スマートフォンのようなネットワーク端末では、自分のコンテンツは手元に残ると感じられるため、パッケージメディアが必要だと考える人はいないと指摘し、「つまりは心情の問題」と述べました。不満を持つ人の気持ちはよく分かるとしつつ、「経済的に合理的だとは思わない。おそらく意識の問題だ」とも話しています。
外部出身者が増えた経営陣との意識のずれを指摘
久夛良木氏は、現在のPlayStation経営陣が従来のゲーム機という考え方から離れ、あらゆるコンテンツを届けるネットワーク接続型のプラットフォームへ軸足を移しつつあるのではないかとの見方も示しました。これは、熱心なゲームファンが望むものとは食い違うといいます。
同氏は「自分はもうPlayStationのCEOではないが、今も共通する見方はある」としたうえで、現在のソニー・インタラクティブエンタテインメントにはGaikaiやストリーミング企業など外部から来た人が多いと指摘しました。ネットワーク接続を生かし、PlayStationを単なるゲーム機ではなくコンテンツ端末として捉えるのは理解できるとし、そうした人々がそのように考えているのかもしれないと語っています。ただ、それがゲーム愛好家との摩擦につながったと述べました。
「コンソールは不要になる」可能性にも言及
久夛良木氏は、初代PlayStation、PS2、PS3の設計者として知られています。ソニー退社後は楽天、KADOKAWA、スマートニュース、GA technologiesなど複数の企業で社外取締役を務め、現在はAscent RoboticsとCyber AI EntertainmentのCEOを務めています。
Game Horizonsでは、The Game Businessが主催する基調講演に登壇し、コンソールゲームの現状とこれからについて意見を述べました。
PS2を発売した当時、「次は何か」と聞かれるたびに「ネットワークとの融合だ」と答えていたといい、すべてがネットワークと融合していくと予想していたと説明しています。「それがまさに今起きていること」だとしました。
一方で、世界的な部品不足によって消費者向けハードの価格が上がっていることには懸念を示しています。「今のマシンは非常に高価で、健全な状況ではない」と述べ、プラットフォームを作りやすくする目的でアーキテクチャーがコンソール型からPC型へ方向転換したにもかかわらず、現在はPCが非常に高価になっていると指摘しました。「車の値段だ。健全ではない」とも語っています。
ハードウェアメーカーには「エレガントな解決策を見いだす」ことが必要だとし、ゲーム会社がAIやクラウドコンピューティングの力を最大限に活用できれば「コンソールは一切不要になる」と述べました。なお、この発言については「ソニー・コンピュータエンタテインメントの公式コメントではない」と付け加えています。