← 最新記事一覧

IGNの寄稿者、BioWare閉鎖はEAが創造性より収益を優先してきた結果だと論じる

2026年10月23日 | #その他 | IGN

IGNの寄稿者、BioWare閉鎖はEAが創造性より収益を優先してきた結果だと論じる

IGNのExecutive Editor of FeaturesであるMatt Purslow氏が、EAによるBioWareの閉鎖を受けて意見記事を公開しました。同氏は、BioWareの近年の不振を認めつつも、問題の根幹はEAの経営姿勢にあると主張しています。以下は、あくまで同氏の意見に基づく内容です。

削減を重ねるEAと、その姿勢への批判

Purslow氏は、EAが2012年と2013年に米国の消費者向けメディアConsumeristの投票で「Worst Company in America」に選ばれたことに触れています。当時はDead Space 3、Crysis 3、Mass Effect 3が発売された時期で、それぞれが同社の評判に影響したと同氏は見ています。それでも、現在の状況を踏まえると、2010年代前半が「EAの良い時期」に思えてしまうと述べています。

EAは今回新たに400人を削減しました。これに先立つ3年間にも大幅な人員削減が続き、昨年は300人が対象になったほか、Titanfallシリーズの新作が中止され、Cliffhanger GamesとBlack Pantherのプロジェクトも閉鎖されました。Purslow氏は、残ったプロジェクトからEAが重視するものが分かるとして、「大きなマイクロトランザクション収益を生む毎年発売のスポーツゲーム」と「同じく収益の大きいライブサービス型シューター」を挙げています。

同氏は、大規模なゲーム開発が事業であることは認めています。EAは現在、サウジアラビアのPIFやJared Kushner氏のAffinity Partnersを含む投資家グループの傘下にあります。そのうえで、BioWareを表計算から消した経営陣は、社名にある「Arts」を気にかけていないと感じるとしています。EAが1983年の広告で「コンピューターはあなたを泣かせられるか」と問いかけていたことと対比し、会社の変わりようを指摘しました。

BioWareの失敗と、親会社の影響

ネット上の冷ややかな意見の中には、BioWareの閉鎖を、不振のスタジオを引退させる慈悲のようにとらえるものもあります。確かに、直近の3作であるMass Effect: Andromeda、Anthem、Dragon Age: The Veilguardは、程度の差こそあれ期待外れに終わったと同氏も認めています。一方で、BioWare自身が原点を裏切ったという批判に対しては、問題はEAにあるとの立場です。IGN寄稿者のJeremy Peel氏が前日にSNSに書いた「BioWareはEAの傘下だったから成功したのではなく、傘下にあったにもかかわらず成功した。機関室に破壊工作員を抱えた船を操縦していた」という言葉も引用されています。

もっとも、BioWareに過ちがなかったわけではないとも書かれています。長年Dragon Ageのエグゼクティブプロデューサーを務めたMark Darrah氏は、今年のIGNのインタビューで、Anthemが社内で「ストーリーテリングの未来」として提案されたと語りました。提案したのは、Mass Effect三部作を手がけ、Anthemの開発期間の大半でBioWareのゼネラルマネージャーだったCasey Hudson氏です。Darrah氏によれば、あのメカスーツのシューターは「BioWareではあるが、まったくBioWareではないものにしたらどうか」という発想から生まれたといいます。Purslow氏は、この姿勢がRPGの伝統を壊したい気持ちから出たのか、それとも芸術性より莫大な利益を求める冷徹なパブリッシャーの下で生き残ろうとした結果なのかを問いかけています。

Darrah氏は、EAが全てのフランチャイズに10億ドル規模を求めていたと述べています。社内目標は、利益率を最低40%とし、総利益で5000万ドルに達することでした。Purslow氏は、BioWareが最盛期でもこれを達成しやすい立場ではなかったと指摘します。壮大で映画的なRPGは制作費が安くなく、EA Sportsの毎年発売タイトルと比べれば市場も限られるためです。

2007年にEAの傘下に入って以降、BioWareはRPGに関心がなく、おそらく理解もしていない親会社の意向に左右され続けたというのが同氏の見方です。Mass Effect以降の作品では、Baldur's GateやNeverwinter Nightsにあった骨太なRPG要素が削られ、アクション性、一本道の構成、洗練された映画的演出が強まったと指摘しています。大衆向け商品を求めるEAと、一流のRPGを作りたいBioWareとの綱引きは、一時は特別な成果を生みました。Purslow氏はMass Effect 2について、大作らしいアクションと、優れたD&Dセッションのような深いキャラクター描写や意味のある選択を両立させたからこそ、史上屈指の作品だと評価しています。

しかしDragon Age: Inquisition以降は崩れ始めたといいます。AnthemとThe Veilguardの失敗は、シングルプレイRPGのスタジオと、Ultimate Teamの収益に執着する親会社との難しい関係に根ざしていると、広く報じられてきたとのことです。Purslow氏は、The Veilguardが世に出ただけでも奇跡であり、残念な結果に終わる運命は開発の苦難が始まった時点でほぼ決まっていたと述べています。

EAが閉鎖や再編を繰り返してきた歴史

同氏は、BioWareが単独の事例であれば、理解できないゲームを手がけるスタジオをEAが誤って運営した結果と片付けられるとしています。しかし実際は、長い犠牲者の列の最新例にすぎないというのが主張です。1990年代までさかのぼれば、EAが買収し、迷走させ、最終的に閉鎖したOrigin Systems、Bullfrog Productions、Kesmaiの名前が挙がります。2007年にBioWareを取り込んだ際には、Star Wars: BattlefrontやMercenariesで知られるPandemic Studiosも同時に傘下に入りましたが、2年後には消えました。

閉鎖以外にも、改名や再編を経て巨大な組織に取り込まれる例があるとされています。Medal of Honorを生んだDreamWorks Interactiveは2000年にEAの一部となり、数年のうちに、1998年に買収され2003年に閉鎖されたWestwood Studiosの残存部分と統合されました。EA Los Angelesと改称された同スタジオは、Lord of the RingsやC&Cのストラテジーを手がけた後、Danger Closeと改称され、Call of DutyのModern Warfareに対抗するMedal of Honorの再始動を任されました。Purslow氏は、これを不可能な任務であり、悲惨な結末を決定づけたと評しています。

こうした、スタジオを単なる労働力として扱う傾向は今も続くとしています。今年、2004年にEAが買収したレース専門のCriterionは「A Battlefield Studio」になりました。ほかの3スタジオとともにマルチプレイヤーシューターのシリーズを担う立場で、BurnoutやNeed for Speedの原点とは大きくかけ離れています。個性を保てるのは、非常に幸運か、非常に収益性の高いスタジオだけのようだと同氏は見ています。

スタジオとは何か、そして今後の見通し

Purslow氏は、ゲーム開発者はソフトウェア企業ではなく音楽バンドのように扱うべきだという、Redditのスレッドを紹介しています。投稿者は、バンドと同じく創作者自身がスタジオであり、人員や指導者の変更はスタジオの事実上の終わりだと論じていました。同氏はこの定義を少し厳格すぎると感じる一方、スタジオは個々の人間以上のものであり、バンドのように一つの信条、創作哲学、芸術的な夢だという考えには共感しています。人事書類や予算表の下にも魂と目的があり、それは新しい人員に共有され世代を超えて受け継がれ得るものの、守らなければならないと述べています。スタジオは、必要な案件に投入され、儲かる流行に合わせて開発する人員の集まりにすぎないものではなく、尊重されるべきだというのが主張です。

しかし、投資ファンドの資金を受けた企業の論理はそうではないと同氏は書きます。BioWareが最初の事例でなかったように、最後でもないと予想しています。EAは次の段階に向けた計画の中で、MotiveのIron Man作品と3作目のStar Wars Jediは開発中としつつ、「それ以降は、同時に進める大規模プロジェクトの数を絞って注力する」と説明しました。Purslow氏は、自社開発のアクションアドベンチャーへの関心が薄れつつあるように聞こえると見ています。ただし、HazelightのIt Takes TwoやSplit Fictionのように、EAが販売を手がけて商業的にも批評的にも成功した協力型アドベンチャーは、今後も続く可能性があるとも付け加えています。

また、RespawnがDICEと「将来のプロジェクト」で協力することはすでに確認されており、EAのシューター系スタジオがいずれ一つにまとめられるのは時間の問題だと同氏は感じています。その統合が進めば、EAは最終的に、毎年発売のスポーツゲームとライブサービス型シューターに特化した会社になるというのが見立てです。

1983年にEAは「コンピューターはあなたを泣かせられるか」と問いかけました。Purslow氏は、「泣かせられる。ただし、あの広告が意図した形ではない」と記事を結んでいます。