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『シヴィライゼーション』シリーズ35周年、生みの親シド・マイヤーら歴代開発者が語る誕生から最新作までの歩み

2026年10月23日 | #ゲーム紹介 | Polygon

『シヴィライゼーション』シリーズ35周年、生みの親シド・マイヤーら歴代開発者が語る誕生から最新作までの歩み

1991年9月に発売された『シヴィライゼーション』は、2026年で35周年を迎えました。Polygonは、生みの親であるシド・マイヤー氏をはじめ、シリーズを作り、受け継いできた開発者たちに取材しています。作品ごとに繰り返された、リーダーシップや方針の転換、伝統と革新の綱引き、支援者やプレイヤーからの疑念といった課題と、それを乗り越えてきた経緯が語られています。以下、その内容を時代ごとにまとめます。

「人類の歴史を箱に詰め込む」発想の始まり

マイヤー氏はブルース・シェリー氏とMicroProseを設立し、軍事シミュレーションを数年手がけた後、新しいものを作りたいと考えるようになりました。プレイヤーが自分の決断でシミュレーションが変化していく様子を楽しむことと、『Railroad Tycoon』の好評を受けて、歴史が人の想像力をつかむという直感があったといいます。

『Railroad Tycoon』は、小さな種から何かを育てていく「ゴッドゲーム」でした。マイヤー氏は次の題材をシェリー氏と話し合う中で、「文明の歴史すべてを扱ってはどうか」と考えたと振り返ります。経済、軍事、外交といった多様な要素を含みながら、小さく始まって大きく育つ構造を持つ題材でしたが、「実現できるかは分からなかった」とのことです。のちにFiraxisでクリエイティブディレクターを務めるエド・ビーチ氏は、「人類史すべてを箱に入れて面白くするという前提が、あのゲームの衝撃だった」と語っています。

開発初期の『シヴィライゼーション』は『SimCity』に近く、区画を決めて街の成長を眺める作りでした。しかしマイヤー氏はこれでは面白さが出ないと判断し、一度開発を中断します。その後に戻った際、ターン制を導入したことで体験が大きく変わったといいます。「建造物が完成したらこれをしよう」「あの大陸を探索したらこうしよう」と、プレイヤーの頭が常に先のことを考えるようになったためです。マイヤー氏は、毎回ゲームの物語が違うことによるプレイヤーの当事者意識と、終えた時に少し賢くなった実感が魅力だと述べています。当初の巨大なマップは探索と征服に時間がかかりすぎるため、終盤になって2度も半分に縮小したそうです。

技術面でも工夫がありました。IBM PCの640KBの制限を超えるため「オーバーレイ」という技術でコードを読み込み、画面に多くの情報を載せるために専用のフォントも自作。256色モードでは、色の循環で川の流れを表現しました。メモリが埋まった時が完成の合図だったとのことです。

発売時はマーケティング予算もなく、MicroProseが得意とする軍事シミュレーションとも毛色が違うため、静かな船出でした。ところが口コミで評判が広がり、最終的に約150万本近くを売り上げています。マイヤー氏は、発売の数か月後にビル・ステアリー氏から「みんなが『シヴィライゼーション』の話をしている」と連絡を受けたことを覚えているそうです。

『シヴィライゼーション2』とWindowsへの移行

成功を受け、ブライアン・レイノルズ氏が『Colonization』を手がけたのち、続編の開発を担当しました。当初の仮称は『Civ 2000』です。レイノルズ氏は1994年、結婚を機に英国ヨークシャーへ渡ることになり、会社と相談のうえ、重さ約40ポンドの携帯パソコンを持ち込んで、1年間ほぼ一人で開発を進めました。

方針は「『シヴィライゼーション』を壊した人にならない」こと。すでに傑作だった前作を、ファンとして望む点を中心に着実に改良しました。大きな決断が、DOSからWindowsへの移行です。単に起動するだけでなく、サイズ変更できるサブウィンドウを備えるなど、Windowsらしい作りを目指しました。レイノルズ氏は、ノートPCで遊ぶ人を飛行機内で見かけるようになったと振り返ります。当時、ノートPCで遊べるゲームは『Solitaire』や『Minesweeper』くらいだったそうです。

戦闘も課題でした。前作では、方陣を組んだ古代の歩兵が戦艦を退けるといった不合理な結果が起こり、「ファランクスが戦艦に勝つ」というミームにもなっています。当初は戦術戦闘システムを検討し、マイヤー氏も試作しましたが、「悪いアイデアだった」としてレイノルズ氏に連絡して中止しました。結果として、レイノルズ氏が体力ゲージと修理のルールを入れる形に落ち着いています。マイヤー氏は「一度に1本のゲームを作る」という原則を挙げ、自身は別の作品に取り組む自由を得たと述べました。

また、敵のAIが都市の隣に軍隊を置き続ける問題には、都市の周囲2マスの緩衝地帯を設け、平和条約でその範囲から軍を退去させる仕組みで対応しました。国境そのものは当時のPCの処理能力では難しく、『Alpha Centauri』のエンジンで実現し、『シヴィライゼーション3』に引き継がれています。マイヤー氏は、チートコードやモッディングなど「悪いと思っていたことが良いアイデアだった」と述べ、息子がチートで戦車を大量に出して楽しむ姿を見て「自分のやり方で遊べばいい」と気づいたと語っています。

Firaxis設立と『シヴィライゼーション3』『4』

1993年末にMicroProseはSpectrum HoloByteと合併し、その後の人員削減などを受けて、マイヤー氏、レイノルズ氏、ジェフ・ブリッグス氏は1996年にMicroProseを離れてFiraxisを設立しました。当初はシリーズを手放したと見られ、権利関係も入り組みましたが、最終的にFiraxisが開発することになりました。マイヤー氏によると、『シヴィライゼーション3』の目的は「自分たちは『シヴィライゼーション』を作れる」と示すことでした。

レイノルズ氏は最初の半年ほど開発を率い、『Alpha Centauri』のエンジンを縮小して使いました。特殊資源の扱いや、資源へ道を通して選択肢を広げる仕組みなどが最終版に残っています。その後、レイノルズ氏はBig Huge Gamesを立ち上げるため退社し、開発者の一部もこれに続きました。レイノルズ氏は、リアルタイムストラテジーを作りたいという思いがあり、Civのライセンスを持つ小さなスタジオでは両立が難しかったと説明しています。

残された体制を再構築する中で、ソーレン・ジョンソン氏はAIプログラマーとして採用されました。ただし本人は当初からデザインを希望していたといいます。ブリッグス氏の「文化を重要にしたい」という方針を受け、ジョンソン氏は文化が領土を広げる仕組みを考案しました。剣では得られない「ソフトパワー」の表現です。資源についても、鉄がなければ剣士を作れず、贅沢品は最初の1つしか効果がないため交易が必要になる、という設計にしました。プレイヤーが嫌がる懸念もありましたが、戦争の理由になるという狙いがありました。ジョンソン氏は、発売後に4回行った公式パッチを4回の別のリリースのように捉え、フォーラムでプレイヤーの声を聞きながら調整したことが、デザイナーとしての学びになったと述べています。

『シヴィライゼーション4』は、マイヤー氏によれば、ビジネス上の問題がすべて片付いた時期の作品です。ジョンソン氏は、シリーズ初の試みとして最初からマルチプレイを前提に作り、開発開始から半年ほどで対戦できる状態になったと言います。マイヤー氏は、シングルプレイでは主役はプレイヤーだが、マルチプレイでは公平さが重要になると説明しました。

もう一つの特徴が、コミュニティの活用です。2003年当時としては珍しく、ジョンソン氏はコミュニティの有力な100人から150人にNDAを結んでもらい、発売の1年半前から遊んでもらいました。ジョンソン氏はこれが完成度の高さにつながった最大の要因だと考えています。さらに、宗教システムの導入、ゲームデータのXML化、UIのPython化、ゲームコードとAIコードの公開など、モッディングを重視し、そのコミュニティは今も活動しています。

マイヤー氏は続編の考え方として「3分の1ルール」を挙げています。3分の1は実績のある要素、3分の1は改良点、3分の1は新要素という配分です。

『シヴィライゼーション5』のヘクス制と一ユニット一タイル

ジョンソン氏は『シヴィライゼーション4』で案を出し切ったため、『5』では自分が離れる必要があると判断しました。自分が残ると新しい試みに「『4』のようにすべきだ」と口を出してしまうとも述べています。マイヤー氏によると、次作を担当する人を募った際、多くが尻込みする中でジョン・シェーファー氏が名乗り出ました。

シェーファー氏はファンサイトのコミュニティで活動し、17歳で『シヴィライゼーション3』のマップ制作を手がけるなど、モッダーとしてFiraxisに入りました。『5』のコアコードは『4』をベースにしたもので、最初はPythonのModで一ユニット一タイルと遠距離攻撃を試作したといいます。その後、プログラマーのブライアン・ウェイド氏がヘクスマップに変更しました。『Panzer General』に影響を受けた戦闘を重視し、アートディレクターのドリアン・ニューカム氏とともに、ヘクスなら美しく親しみやすい見た目にできると説得しました。マイヤー氏も初代からヘクスを議論していましたが、当時は驚かせすぎないよう四角にしたと説明し、プレイヤーも受け入れる準備ができていると考えていました。

以前は1つのタイルに無制限にユニットを重ねられ、ファンから「Stack of Doom」と呼ばれていました。エグゼクティブプロデューサーのデニス・シャーク氏によれば、『5』では逆に「Carpet of Doom」と呼ばれたそうです。シェーファー氏は、一ユニット一タイルの影響は軍事ユニットの生産速度やAIの能力にまで及び、発売当初は難しい課題だったと振り返ります。

発売時、批評家の評価は概ね好意的でしたが、変更に否定的なプレイヤーもいました。シェーファー氏は、ストラテジーでは最初に賛否が割れることは珍しくないとし、最初の数か月は大型パッチの準備に追われたと述べています。その後、ビーチ氏が『Gods & Kings』『Brave New World』の拡張で文化、交易、宗教の面を厚くし、現在では最高のシリーズ作の一つに数えられるようになったといいます。シェーファー氏は各文明の個性を強め、ポーランドの収録がポーランド国内で特別な意味を持ったというエピソードも紹介されています。

『シヴィライゼーション6』と『7』

『6』でビーチ氏は初めてクリエイティブディレクターとしてビジョンを描きました。『5』では都市が1つのヘクスに収まっていましたが、都市の周囲のタイルを使えないかという発想から、都市を区域に分散させる仕組みが生まれました。シャーク氏は、都市を「アンスタック」したと表現しています。隣接ボーナスや技術ブースト、分割された技術ツリーも、ここから展開しました。クリエイティブディレクターのマット・シェンバリ氏は、マップに多くの要素を載せることで、プレイヤーが世界を形づくる実感が得られると述べています。

『Gathering Storm』では気候変動が追加されました。シャーク氏が最も気に入っているという要素で、ビーチ氏が海面上昇などの数式やシミュレーションを先に用意し、それを一般のプレイヤーにも伝わる形に見せることに取り組みました。その後も追加コンテンツが続き、ゾンビやアポカリプスモードなど「少し暴走気味」になったと、ビーチ氏は振り返ります。

『7』に向けては、『6』終盤から設計のポストモーテムを徹底して行い、各サブシステムを検証しました。ビーチ氏は、戦闘は軍事面の約80〜90%を『6』から維持できると判断した一方、変更を望む声が多く、「3分の1」を約20%超えていたとも述べています。

最大の変更が、時代(エイジ)制です。マイヤー氏は、特別な能力がある期間以外は平凡な文明になってしまう点が不満だったとし、ビーチ氏も歴史上の文明は連続した系譜を持つため、その時代ごとに強みを出せる設計を目指しました。シャーク氏は、この仕組みがプレイヤーを二分したと言います。初代からのコアなプレイヤーは同じ文明で通しで遊ぶ幻想を望み、新しい層は好意的でした。Firaxis社長のヘザー・ハーゼン氏は、「史上最高のシヴィライゼーション」と言う人もいれば、時間を通じた連続性という核となる幻想を壊したと言う人もいると語っています。

これを受けた『Test of Time』アップデートについて、ビーチ氏は当初のビジョンにはなかったため個人的には難しかったとしつつ、同じ文明を最後まで遊びたいという要望に応える必要があったと述べました。ハーゼン氏によれば、未完成のアイデアを公開テストに出す手法を3回行い、これは新しい取り組みでした。ワークショップで重要な変更を加えたため、ビーチ氏は5月のリリース時には好評を得られると見込んでいたそうです。シェンバリ氏は、シンクレティズムという機能に当初は反対していたものの、ワークショップを経て改良され、今では優れた機能になったと認めています。

シャーク氏は、大きな変化を狙う中で『7』では行き過ぎた部分もあったと述べ、以後も新しい層を楽しませつつ既存層に再評価してもらえる要素を加えていると言います。ハーゼン氏は「聞き、調整し、適応する」ことが、単独で作るよりも良い結果につながると語っています。

宇宙へ向かう『7』初の拡張『Earthrise』

シェンバリ氏は、シリーズがインターネットとともに成長してきたと指摘します。初期はINIファイルを編集してBBSで共有していましたが、現在はTwitchやYouTube、TikTokで配信や動画が共有されています。『7』発売時には、プレイヤーのUrsa Ryan氏が過度に強い組み合わせを動画で紹介し、サブレディットでバランスが議論されました。Firaxisはその意見を調整に反映し、現在はパッチノートで提案元のコミュニティメンバーに言及しているそうです。

2026年のPAX Westのパネルでは、『7』初の拡張『Earthrise』が発表されました。シリーズで初めて宇宙を舞台にします。ビーチ氏は、タイトルはアポロ8号が撮影した「地球の出」に由来し、テーマは宇宙探査と地球の環境、そしてその変化に文明が適応する力だと説明しました。ビーチ氏はNASAの契約プログラマーとしてハッブル宇宙望遠鏡などに約10年関わった経歴があり、シリーズで宇宙探査をかつてない規模で描きたかったと語っています。月や近隣惑星への探査、現在の月面基地や火星入植をめぐる動きなど、これまでシリーズで扱ってこなかった約50年分の宇宙探査が題材になります。

35年続くシリーズの核

レイノルズ氏は、シリーズが戦略ジャンルを大きく広げ、歴史ゲームを「クール」にしたと振り返ります。教師などから、授業で『シヴィライゼーション』や『2』を使っているという声も寄せられたそうです。シェーファー氏も、多くの人にとって『シヴィライゼーション』は「歴史ゲーム」であり、『グランド・セフト・オート』や『マリオ』ほどの販売本数ではないものの、ほとんどの人が名前を知っていると述べました。

レイノルズ氏は、マイヤー氏が多くの若い開発者を育ててきたとし、その手法を「最小限で動くものを早く作り、自分で遊び続けて改良を重ねる」と要約しています。

マイヤー氏は、基本が強固なため周辺要素を変えても人気が続いていると考えています。その理由として挙げたのが、「自分が王だったら」という根源的な幻想です。作品を子どもになぞらえ、『シヴィライゼーション』は「賢い子」、『Pirates!』は「やんちゃな子」だとして、「墓石に『シド・マイヤーは『シヴィライゼーション』をデザインした』と刻まれても構わない」と語っています。