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PS5のハイパーバイザー脆弱性をAIで発見したハッカーのJordy氏、Sonyに報告して報奨金5万ドルを獲得し、コミュニティから批判を受ける

2026年10月26日 | #その他 | IGN

PS5のハイパーバイザー脆弱性をAIで発見したハッカーのJordy氏、Sonyに報告して報奨金5万ドルを獲得し、コミュニティから批判を受ける

PS5のホームブリュー(自作ソフト)コミュニティで、ハッカーのJordy氏がAIを使って見つけた脆弱性をSonyに非公開で報告し、5万ドルの報奨金を受け取ったことが波紋を広げています。IGNによると、この脆弱性は、以前から別の著名なセキュリティエンジニアが発見し、『GTA 6』の発売まで伏せておくつもりだったものでした。

報告された脆弱性の内容

Jordy氏は、バグ報奨金プログラムを運営するHackerOneを通じて、PS5の脆弱性をSonyに報告しました。企業が製品やサービスの問題を修正するために利用するサイトで、Sonyはハッカーに脆弱性の発見を依頼し、修正が終わるまで公開しないことへの対価も支払う仕組みです。

問題の脆弱性は、ファームウェア13.60から14.00のPS5に影響する「ハイパーバイザーのバグ」です。ハイパーバイザーはコンソールの中核となるソフトウェア層で、この欠陥を突くとカーネルコードを実行でき、たとえば本来想定されていない機器でLinuxを起動することも可能になります。

なお、今月はAIを使った調査によって大規模なセキュリティ事案や脆弱性の公開が相次いでおり、情報セキュリティの専門家は「Black October」と呼んでいると記事は伝えています。

Linux起動プロジェクトの中止

Googleのセキュリティエンジニアであるアンディ・グエン氏(theflow0)は、数か月にわたりPS5でLinuxを動かす取り組みを進めており、3月には成果を披露していました。しかし、Jordy氏の報告を受けて、PS5シーンから離れ、PS5 Linuxの作業をすべて止めると表明しました。

theflow0氏は、PS5 Proへの対応を仕上げて2027年に公開する計画もあったとし、「すべて水の泡になった」と述べています。また、「かつてのシーンは非常に優れた研究者の集まりだったが、今はLLMを使い、自分でも理解していないハックを書く素人ばかりだ」と批判し、残された唯一のハイパーバイザーのバグを「slop kiddies」が見つけてSonyに報告したと語りました。なお、IGNはtheflow0氏にコメントを求めましたが、連絡はつきませんでした。

Jordy氏の説明

Jordy氏はIGNの取材に対し、生成AIを使ってバグを見つけたことを認めました。同氏の主張によると、theflow0氏はこのバグを2025年に見つけていながら公表していませんでした。Jordy氏が自分もハイパーバイザーのバグを見つけたと発表すると、theflow0氏が連絡を取り、前年に見つけたものと同じかを確認したといいます。

両者は当初、HackerOneには報告しないことで合意しました。しかしその後まもなく、別の研究者が同じバグを見つけました。他の研究者も生成AIで同じバグにたどり着いていたため、Jordy氏は報奨金を受け取れる機会が失われつつあると判断し、報告を決めたと説明しています。「自分ともう1人がLLMで見つけられるなら、ほかの誰かにも見つけられる」と同氏は述べています。

『GTA 6』をめぐる不満

反発が大きい理由はAIの利用だけではありません。11月に発売される『GTA 6』が関係しています。バグが報告される前であれば、PS5にLinuxを導入しつつ、通常のSonyのOSでもコンソールを使い続けられ、脱獄していないときに『GTA 6』を遊ぶことができたはずでした。

PS5エミュレーターの追跡や詐欺ブラックリストを手がけるKaishakuの作者madwax0r氏は、IGNに次のように説明しています。ユーザーは通常のPS5 OS上で『GTA 6』を正規に購入してプレイしつつ、同じ本体でLinuxとのデュアルブートも維持したいと考えていました。PS5 Linuxは外付けUSBドライブから動く一時的なソフトMODのようなもので、再起動すれば通常のPS5に戻ります。

ただし、11月19日に『GTA 6』をダウンロードして遊ぶには、最新のシステムファームウェアへの更新とPSNへのサインインが必要です。theflow0氏は、発売日に必要となるファームウェアに未修正の欠陥が残るよう、11月19日以降まで研究者に報告を控えてほしいと考えていたとのことです。

Jordy氏の早期の報告によって、Sonyは『GTA 6』の発売前にこの脆弱性を修正できることになりました。Linuxを使いたいユーザーは、本体をオフラインのままLinuxで使うか、更新して『GTA 6』に対応する代わりにLinuxを諦めるかの選択を迫られます。

記事によると、この脆弱性が悪用されれば、海賊版の流通につながる可能性もあります。ネット上では、Sonyが2028年までに物理ディスクを終了する方針であることを理由に挙げる声もあるといいます。ホームブリュー勢がAIでPS5の内部を調べ続け、Sonyが新しいファームウェアで対抗する状況の中で、『GTA 6』も含めたゲームの海賊行為は現実的な可能性だと記事は指摘しています。

AIが変えた脆弱性発見の構図

madwax0r氏は、AIの要素が火に油を注いだと述べています。以前はハイパーバイザーのバグが非常に希少だったため、研究者が1年間黙って保持することも可能でした。しかし、LLMでコンソールのコードを調べる人が増えた今は、複数の人が同時に同じバグにたどり着くようになっています。同氏は、theflow0氏がコミュニティのためにバグを保持しようとした一方で、Jordy氏は第三の人物もAIツールで見つけたことを知り、さらに母親の難病という大きな個人的負担もあって、先を越される前に確実な5万ドルを受け取ったと見ています。

炎上したツイートと反応

話題が広がった一因は、報奨金の受け取りを知らせるJordy氏のツイートです。同氏は支払い画面のスクリーンショットとともに、「これで少なくともGTAは買えると思う」という趣旨の投稿をしました。執筆時点で閲覧数は180万回に達しています。

IGNが、このツイートが反感を買ったのではないかと尋ねると、Jordy氏は「たぶんそうだが、それが狙いだった」と答えました。さらに、自分は30歳近く、ゲームを海賊版で遊べなくなる人がいても気にしないし、MODを可能にしたいとも思わないと述べています。

報告のタイミングから、theflow0氏がJordy氏にバグの探し方を教えたのではないかと疑う声もあり、これも怒りの一因です。Jordy氏はこれを否定し、自力で見つけたと主張しています。「そう、AIでだ。多くの人はそれを軽く見たがるが、ほかにあのようなバグを見つけている人はいない」と語り、theflow0氏については「伝説」であり業界で尊敬される人物だと付け加えました。

報奨金の受け取りを明かして以降、Jordy氏はシーンの関係者から、報告を控えるべきだったという批判をSNSで繰り返し受けています。「口座に5万ドルあっても友達は0。それでいいのか」という投稿に対し、同氏は「自分で見つけたバグを報告したくらいで友達を失うと思うのは正気ではない。納得していないtheflow0とも個人的に連絡は取れる。人を国内テロリストか何かのように扱っている」と返しました。

一方で、報奨金の受け取りを擁護する声もあります。「5万ドルは生活費になるが、あなたの意見はならない」「多くの人にとって人生を変える金額だ」といった投稿が寄せられています。

Sonyとホームブリュー勢の攻防

先週、Sonyは新しいPS5のファームウェアを配信しました。ホームブリューコミュニティによる脱獄の動きに対抗する狙いがあったと見る向きもあります。ホームブリュー勢が最新ファームウェア向けの脱獄を目指し、Sonyがセキュリティ強化のための更新を出すと、また最初からやり直すという、いたちごっこが続いています。発売まで1か月を切った『GTA 6』が必要とするファームウェアに脱獄手段が出回れば、PS5で海賊版が遊べるようになり、PCでも入手可能になるかもしれないという懸念が出ています。

Jordy氏は、ハイパーバイザーのバグが今後も見つかるだろうと述べており、セキュリティ研究者のEric Parker氏も「いずれまた別のエクスプロイトが出てくると思う」と同意しています。Jordy氏の主張が正しければ、14.00のパッチを回避する方法が将来見つかる可能性もあります。

記事は、Sonyがこのいたちごっこに最終的に勝てるかが問われているとしています。パブリッシャーやデベロッパーはPlayStation向けタイトルの安全性をSonyに頼っており、同社にとっては存亡に関わる問題でもありますが、強力なAIモデルの登場でその重みは大きく増しているという見方です。

Jordy氏にとって、報奨金は家族や病気の母親と過ごすための時間を意味するといいます。同氏は「研究は続ける。ただ最近は本当に時間がない」と話しています。