『Buckshot Roulette』開発者Mike Klubnika氏、ソ連時代の閉塞感を背景に3作で大ヒットを重ねる
2026年10月28日 | #ゲーム紹介 | Eurogamer
『Buckshot Roulette』『S.p.l.i.t』『Machine Party』と、短くも強烈なホラーゲームを立て続けに発表してきたMike Klubnika氏。喫煙、クラブミュージック、銃という共通要素や、ソ連時代の建築と兵役体験に根ざした作風について、Eurogamerが同氏にインタビューしました。3作はいずれも商業的に大きな成功を収めています。
繰り返し現れる3つの要素と「Klubnikaワールド」
Klubnika氏の作品には、同じ要素が繰り返し登場します。1つ目は喫煙で、肺が焼け、目が潤むほど深く吸い込む描写が特徴です。2つ目は速くて激しく、かすかな哀愁を帯びたクラブミュージック。3つ目は至近距離からプレイヤーに向けられる、大きくて音の大きい銃です。
2023年の『Buckshot Roulette』は、ポンプアクション式ショットガンを使った残酷な運任せのゲームです。2025年の『S.p.l.i.t』は『マトリックス』風のハッキングゲームで、筆者が近年プレイしたなかでも屈指の過酷な結末を備えています。2026年の『Machine Party』は『マリオパーティ』を下卑た過激な暴力で作り替えたような作品で、笑えると同時に容赦のない内容だと筆者は評しています。
ほかにも、あらゆる表面が不快な汚れに覆われたようなローポリゴンのグラフィック、権威主義的な近未来を思わせる陰鬱な舞台設定が共通しています。各作品のプレイ時間は1時間ほどですが、その短さゆえに、顔面を銃で殴られるような衝撃があるとのことです。
Klubnika氏は、ビデオ通話で「共通した雰囲気がある」と語ります。「こういう世界に生きている人は、たいてい本当に欲しいものを持っていない」というのが、その説明です。同氏が作品で呼び起こしたい感情として挙げるのは、「孤立」「絶望」「リスク」「不安」。万人受けする題材ではないものの、直近の3作は大きく売れています。販売本数は『Buckshot Roulette』が1000万本、『S.p.l.i.t』が20万本、『Machine Party』が現時点で150万本です。
PCとともに育った世代、19本の自主制作を経て
Klubnika氏は24歳で、エストニアの首都タリン出身の大学中退者です。『Backrooms』のKane Parsons監督や『Obsession』のCurry Barker監督ら、ホラー周辺で活躍する若手クリエイターと同じく、コンピューターとともに育ちました。タリンでは「技術に明るい」友人グループの一員で、YouTube動画を作る人もいれば、独学でプログラミングを学ぶ人もいたそうです。Klubnika氏自身は、Blenderで3Dアートを作りながら、サウンドデザインや動画編集にも手を出していました。全員がゲームを遊んでいたといいます。
デスクトップPCは創作の道具であると同時に、未知の世界やタブー感のあるメディアへの入り口でもありました。10歳か11歳のころに過激なトップダウンシューター『Hotline Miami』を違法ダウンロードして遊び、『Half-Life』のマルチプレイMOD『Sven Co-op』のある奇妙なステージでAphex Twinの音楽に出会ったと振り返っています。
画面から離れればタリンのハウスパーティーに通い、その後はPCに戻って、3Dアートを建築ビジュアライゼーションに活かそうとしました。しかし「建築ビジュアライゼーションは技術的すぎる」と感じて飽きてしまい、代わりにアートを作り始めたそうです。名門のエストニア芸術アカデミーを受験しましたが不合格でした。その後は英語学を学び始めたものの、『Buckshot Roulette』が大きな話題になったため、1学期でやめています。
以降のKlubnika氏は、Steamの難解なアルゴリズムをうまく攻略し、ウィッシュリストの獲得競争やおすすめ欄で上位に立ち続けてきたように見えると、筆者は述べています。ただし成功は一夜にして得たものではなく、それまでに小規模なゲームを19本自主制作して公開しており、そのうち5本は2023年の『Unsorted Horror』に収録されています。同氏は「仕事として成り立たないだろうと思いながらゲーム開発を始めた。好きだからやっていた」と話しています。
ソ連時代の建築と兵役が生んだ世界観
どんなゲームも特定の環境から生まれます。Klubnika氏の場合、グレースケールの雰囲気は、タリンに残るソ連時代の巨大なコンクリート建築に着想を得ています。これは、市内の絵に描いたように美しい中世の街並みとは対照的な存在です。
もう1つの源泉が兵役です。エストニアの若い男性と同様に、Klubnika氏も兵役を務めました。担当は通信で、無線機をいじる時間が長かったといいます。機関銃手の肉体的な負担と比べれば「比較的楽だった」としつつも、「それでも非常に厳しかった」と強調しています。特にきつかったのは家から長く離れることで、タリンから3時間離れた場所に配属され、帰るには許可証が必要でした。
「この種の官僚制には、人間らしさを感じられない妙なところがある」と同氏は言います。タリンを自由に歩き回る代わりに、厳しく管理された軍の仕組みに組み込まれたわけです。「自分のゲームはそうした発想を極端にしたもの。登場する人々は、機械の中のとても小さな歯車にすぎない」と語っています。
『S.p.l.i.t』で、大きな旧式のコンピューターに向かって働く主人公は、兵役中に無線を扱っていたKlubnika氏自身を映しているように思える、と筆者は書いています。ただし、作中の出来事は単なる訓練ではありません。1つミスをすれば、プレイヤーを含む全員が死にます。結末では、縄、電動ドリル、ドライバーという3つの死の選択肢が示され、『π』と『イレイザーヘッド』を掛け合わせたようなひどくも可笑しい形で、この点を突きつけてきます。筆者は息をのむと同時に気分が悪くなったとしつつ、陰惨なオチを積み重ねる姿勢の表れだと評価しています。
喫煙と銃、そして力と無力さ
兵役には息抜きの面もありました。同期との喫煙は「素晴らしい習慣」であり、「気持ちを切り替える」手段だったそうです。同氏は『Arctic Eggs』のようなゲームや『True Detective』のようなドラマなど、他の作品に登場する喫煙描写も好んでおり、これが作品の主要なモチーフにつながっています。
軍の銃器の話になると、Klubnika氏の目は輝きます。射撃訓練などがあったと話し、AR-15突撃銃を撃ったときの「超かっこいい」感覚や、手榴弾の「圧倒的な破壊力」を語りました。頭を吹き飛ばすような武器を作品に多く登場させる理由が、ここにあると見られます。
特に印象的だった訓練として、同氏は次のように述べています。「最初はバンカーにいて、そこから出て訓練を行う。その後、別のバンカーに入り、部隊全員が通っていく。つまり、20歳くらいの連中が大勢いて、全員が高性能爆薬の手榴弾を持っている。『これはヤバい。きっと何も起きないだろう』という感じだった」
この逸話は、暴力的な力を前面に出しながら、それを振るう側の無力さとも矛盾なく共存している、という作風の核を示していると筆者は見ています。『Machine Party』について、Klubnika氏は「楽しいパーティーゲームでありながら、工業的なホラーでもあり、どこか悲しい」と説明します。殺伐とした体験のなかで、プレイヤーが黄金色の小麦畑を駆け抜けて一息つく場面があり、テレンス・マリックの1978年の映画『天国の日々』の一場面のようだと筆者は表現しました。より良い暮らしが目の前に差し出され、残酷に奪われるという点で、同氏の言うとおり悲しい場面だとしています。
今後もスケールアップはせず、手作りを貫く
エストニアとロシア、欧州をめぐる大きな地政学的変動がない限り、Klubnika氏はこれまでと同じタイプのゲームを作り続ける方針です。規模の拡大も検討したものの、創作を人に任せるだけの「管理者」、つまりスーツ姿の人間になることを恐れて見送りました。「そうなったら、ゲームを作る理由の大部分が失われる」と話しています。
次回作は、『Machine Party』や『Buckshot Roulette』の繰り返し遊べるアーケード的な仕組みと、『S.p.l.i.t』の一人用ストーリー重視の姿勢を調和させたものになる見込みです。同氏は「2つのスタイルのバランスを見つけたい」と述べています。
最終的な形がどうなっても、制作はこれまでどおりDIYで行うとのことです。汚れた表面を1つ1つ手描きし、テクスチャーを歪んだ影のように引き延ばし、精細さの異なる3Dモデルを1つの場面にまとめて置きます。現実を悪夢のびっくりハウスのように歪めた「Klubnikaワールド」では、こうした一見した欠点が没入感を妨げず、むしろ深めると筆者は評しています。速くて汚いこの作り方は、ゴミだらけの地面に至るまで、Klubnika氏の殺伐とした世界にふさわしいものだとまとめています。