『D&D: World of Warcraft』デザイナーのジェームズ・ワイアット氏、MMOらしさを避けて第4版の反省を生かしたと語る
『Dungeons & Dragons: World of Warcraft Gameplay Expansion』は、ダンジョンマスターがアゼロスを舞台にD&Dを遊べるようにする拡張書です。リードデザイナーのジェームズ・ワイアット氏は、MMORPGに着想を得たダンジョンでボスと戦う冒険であっても、ビデオゲームに寄せすぎないことを重視したと、Polygonのオンラインインタビューで語りました。
MMOに寄せすぎない方針
ワイアット氏は、D&Dの歴史の中にはMMOの体験に近づいた時期があったと振り返っています。短い休憩がさらに短くなり、呪文がボタンのようになった例を挙げ、「そちらの方向に進みたくはありませんでした。この本が扱うのは世界そのものであり、その世界をD&Dの舞台にする方法です」と述べました。
2008年に発売されたD&D第4版は、『World of Warcraft』のサービス開始から4年後の作品です。第3.5版のルールを全面的に作り直し、武器攻撃も呪文も、at-will、1戦闘に1回、1日に1回のいずれかで使える「パワー」に統一しました。クラスをディフェンダー、ストライカー、リーダーといった役割で分ける表現も加わり、『WoW』に似すぎているという批判が多く出ました。
ワイアット氏は「ファンの間には、愛しているものが新しい娯楽の波に奪われてしまうのではないかという不安があると思います。第4版は『WoW』に倣い、テーブルトークゲームにとって良くない方向に進んだと考えています」と話しています。
感触を重視したクラスの移植
本書には『WoW』の全クラスとビルドをD&Dに置き換えるルールが収録されています。ただしワイアット氏は、『WoW』のアビリティ回転やクールダウンに合わせて複雑にするより、感触を再現することを優先しました。敵のヘイトを管理する仕組みも検討されましたが、既存のバトルマスター・ファイターの「Goading Attack」と、特技「Protection」のファイティングスタイルを使うことになりました。
一方で、より大きな手直しが必要な場合もありました。たとえばパラディンのクラス特性の多くを差し替えて、デスナイトにしています。ワイアット氏は「万能の解決策ではありません。『Tasha’s Cauldron of Everything』の代替クラス特性とよく似ていますが、それがひとまとめになっています。パラディンには光や回復の要素が多く、デスナイトの雰囲気に合わないので、死や死霊ダメージ、闇の要素に変えました」と説明しています。
最も苦労したのは、『WoW』のシャーマンの再現でした。最終的には、バーバリアンの「Primal Knowledge」をトーテムの作成能力に置き換える形にしています。トーテムは味方を助け、敵の妨げになります。ワイアット氏はこのクラスを自分でも遊んでおり、近接戦闘と原初の魔法を併せ持つ『WoW』のクラスに近づけるため、特技「Magic Initiate (Druid)」も取得しました。
同氏は「激怒に入るときは、元素のエネルギーの球が体の周りを回り、氷や炎や雷を敵に投げつけると描写していて、とてもシャーマンらしく感じます。Ritual Casterも取ったので、戦闘外では元素と調和してシャーマンらしいことをするつもりです。この枠組みの中で、キャラクターをどう捉えるかには多くの可能性があります」と語りました。
呪文はほかの舞台でも使える
本書の『WoW』の呪文は、ゲーム内のアビリティを思わせるように作られています。ワイアット氏は、アゼロス以外のD&Dでも多く使われるだろうと見ています。ただし、ナイトボーン・エルフ向けのキャントリップ「Arcane Pulse」のように、通常のキャントリップのようにダメージが伸びず、範囲内の敵を遅くするものなど、風変わりなものについてはDMの判断が必要としています。
ワイアット氏は「呪文は『Player’s Handbook』の呪文と釣り合うよう調整されているので、ほかの場所で取得しても問題なく使えるはずです。ほかのキャラクターが使うと少し妙に感じるものもありますが、バランスは取れていて機能します」と述べています。
DM向けの設計指針
ワイアット氏は執筆中、自分用に設計指針の一覧を書いていました。これは本書の「Adventures in Azeroth」の章に盛り込まれています。DMに対し、MMOのような雰囲気にしようとしないよう促す内容です。ダンジョンは数時間で攻略するのではなく、複数回のセッションをかけて踏破することもあります。キャラクターは決められた道を進んで出会う敵を倒すだけでなく、世界やNPCと創造的に関わる方法を探したがるはずだとしています。
同氏は「D&Dでは、倒したモンスターはたいてい生き返りません。ほしい戦利品のために、すべてが元に戻った状態のアイスクラウン・シタデルを何度も周回することは期待できません。キャラクターの行動が違いを生む必要があり、スポットライトはキャラクターに当たるべきです。大規模多人数参加ではありません。最小規模の多人数参加です」と語りました。