『Kingdom Come: Deliverance 2』DLSS 5を元クリエイティブディレクターが擁護
DLSS 5をめぐる議論が過熱するなか、Warhorse Studiosの元クリエイティブディレクター、Daniel Vávra氏が、本作での見え方を擁護しました。流出した映像や画像ではキャラクターの顔が変わるように見える例もあり、AIによる「不気味の谷」効果への批判が続いていますが、同氏は本来の芸術的な意図に近づける技術だと主張しています。
Vávra氏が指摘したDLSS 5の効果
Vávra氏によれば、今回流出したDLSS 5は、NVIDIAが2026年3月に公開したものとは大きく異なり、キャラクターモデルの形状や外見そのものを変更していないとのことです。既存のノーマルマップを利用し、ゲーム内のライティングモデルよりも肌の質感や顔の細部を精密に描き出す仕組みだと説明しています。
同氏は比較画像を根拠に、DLSS 5の効果は単なるデヘイズフィルターではないとしています。特に重要なのは、周囲の環境に応じて物体が落とす影の位置や濃さを計算するアンビエントオクルージョンだといい、兜やバックルなどの装備品が顔や衣服に作る陰影が改善されると主張しました。これにより、キャラクターの造形を変えずに、元のライティングでは表現しきれなかった立体感を補えるという見方です。
スクリーンショットをめぐる反論
一方で、Vávra氏の検証がスクリーンショット中心だったことから、DLSS 5を批判するテスターやコメント投稿者は懐疑的な姿勢を崩していません。動画で検証された事例には、顔立ちが変化したように見えるものや、不自然な光の表現が残るものもあります。
DLSS 5が画面内に映っている情報だけをもとに処理するフィルターであれば、光源や物体の位置が正確に分からない場面で、現実には存在しない細部や影を推測して描く可能性があります。その結果、見栄えは向上しても、実際の光の当たり方とは一致しない「偽のディテール」になるのではないか、という懸念です。Vávra氏は後続の投稿で、DLSS 5の効果を「AIによる粗悪な成果物」と呼ぶ人々を批判し、開発者やアーティストが目指した本来のビジョンに本作を近づけるものだと改めて訴えました。
開発現場への影響にも懸念
議論では、AIによる補正を開発者が細かく制御できない点も問題視されています。最終的なレンダリングをDLSS 5に任せられるなら、未完成の状態でゲームを発売したり、人の手による調整を十分に行わなかったりする開発者が増えるのではないかという指摘です。あるRedditユーザーは、DLSS 5がUnreal Engine 5と同じように、一部のスタジオだけが適切に活用し、大多数は簡単な近道として使うことになるのではないかとコメントしています。
Vávra氏は現在、どの企業にも所属せず、ゲーム開発にも携わっていないと明かしています。そのうえで、過去1年間に話した多くの開発者がAIを利用しており、プログラマーがAIなしでは作業を進められない状況になっていると説明しました。7年をかけて1本のゲームを作った経験を踏まえ、「もし1年で完成させる助けになるなら、いつでも使う」とする考えも示しています。長期間かけて1本を作るより、同じ時間で複数の作品を作りたいという、開発期間短縮への期待も背景にあります。
真偽と有用性は引き続き論点に
Vávra氏は、インターネット上で拡散しているDLSS 5の動画をすべて信じないよう呼びかけています。ただし、記事時点では動画が偽物だと裏付ける証拠は示されていません。テスター側の設定によってリアリティの感じ方が大きく変わる可能性もあり、DLSS 5が正確な表現を実現しているのか、あるいはそのようなAI補正を望むのかという点は、正式な提供後もしばらく議論が続くとみられます。