『Rideshare Stimulator』を実験台にSaber幹部が語る「AI版Half-Life 2」構想
2026年09月01日 | #ゲーム | GamesRadar+
Saber Interactiveの最高クリエイティブ責任者Tim Willits氏が、同社における生成AIの試験運用について語りました。AI生成コンテンツを導入した小規模作品を足がかりに、将来的には人々の考え方を変える「AI版Half-Life 2」が生まれるかもしれないとの見方を示しています。一方で、同社が現在AIを実際のプロジェクトで使っているのは、実験的な作品に限られるとのことです。
Saberが進める生成AIの試験運用
Saberでは、生成AIがゲーム制作に本当に役立つのか、あるいは期待ほど機能しないのかを見極めるための実験を続けています。Willits氏はEurogamerの取材に対し、ゲーム業界はAIをどのように扱うべきかまだ十分に理解できておらず、消費者側も何を望み、何を望まないのか明確になっていないと説明しました。生成AIは、社会に長く登場してきた技術革新と同じように、既存の制作方法を揺さぶる存在だと捉えているようです。
現在、その実験の対象となっているのがドライビングシミュレーション作品のRideshare “Stimulator”です。Steam上のAI使用に関する開示では、AI生成の音楽、音声、ローカライズ、乗客ミッションが含まれていると説明されています。Willits氏によれば、Saberは同作以外のプロジェクトで生成AIを使用しておらず、全作品に一律で導入する公式方針も設けていません。
同社ではStuntmanシリーズの新作、Jurassic Park: Survival、PS5向けのタイトル未発表のJohn Wickゲームなども進めていますが、原文筆者はこれらの大型プロジェクトとAI実験を同列には扱っていません。AIを試す場合でも、まずは規模の小さい作品に限定するというのがSaber側の考えです。
「AI版Half-Life 2」が認識を変える可能性
Willits氏は、生成AIに否定的な人々の考えも、画期的なゲームが登場すれば変わる可能性があるとしています。「誰かがAIについて人々の考え方を変える作品を作る。私が楽観的すぎるのかもしれませんが、誰かがAI版Half-Life 2を作るでしょう」と語りました。
この発言では、単にAIを使ったゲームが増えるという意味ではなく、技術の受け止め方そのものを変えるほどの成功例が必要だと説明されています。Willits氏はSteamの普及を例に挙げ、サービス開始当初には「そんなプログラムを自分のマシンに入れるつもりはない」と考える人もいたものの、現在Steamがなくなれば大きな混乱が起きるほど広く定着したと指摘しました。AIについても、業界が数年かけて試行錯誤すれば、使い道が見えてくるとの見通しです。
ただし、原文筆者はSteamと生成AIには大きな違いがあると反論しています。Steamは独自のストアと明確な利便性を提供するサービスですが、生成AIについては、ゲームのコンセプトアートや巧みな文章を人間の制作者に任せたいという立場です。記事では、AIが生み出す成果物についても、期待に応えるより先に品質面で問題が出るという厳しい見方が示されています。
小規模作品でリスクを抑える狙い
Willits氏はRideshare “Stimulator”について、チームが活動を継続するための小規模なゲームであり、こうした作品こそ新しい技術を試す場所だと説明しました。大規模タイトルで未知の技術に賭ければ、制作全体に影響するリスクがあります。そのため、AIを実験するなら、失敗した場合の損失を抑えられる小さな作品から始めるべきだとしています。
一方で、Saberのチームがゲーム全体を変える可能性のある企画を持ち込んだ場合は、会社として試す意思があるとも明言しました。Willits氏は、チームが「すべてを変えられる」と考えるアイデアを提案してきたなら、当然挑戦すると語っています。生成AIを全面的に採用する方針ではないものの、明確な成果や新しい価値を示せる企画であれば、検討の対象になり得るということです。
業界と消費者からは強い反発も
生成AIをめぐるSaberの発言が注目される背景には、同社CEOのMatt Karch氏による一連の発言があります。Karch氏は解雇されたRideshare “Stimulator”のライターについて、AIに置き換えておけばよかったという趣旨の発言をし、その後に謝罪しました。今回のWillits氏の説明は、その騒動後も同社幹部がAIの可能性を検討していることを示すものです。
しかし、AIに対する反発はSaberの外部でも強まっています。GamesRadar+が30社を超える主要ゲーム開発会社を対象に実施した調査では、生成AIは非常に不人気な技術だったと報じられました。また、企業知的財産を扱う弁護士も、生成AIがもたらす法的責任は見合わないとして、すべてのスタジオに利用を避けるよう勧めているとしています。
そのため、Willits氏が期待する「AI版Half-Life 2」が実現するには、技術的な新しさだけでなく、制作現場や消費者が受け入れられるだけの具体的な価値を示す必要があります。現時点でSaberが取っているのは、生成AIを大作へ一斉導入する道ではなく、小規模作品を使って有効性とリスクを確かめる段階です。