『Old School RuneScape』元開発者がプレイヤーの資産窃盗で有罪判決
2026年09月05日 | #その他 | GamesRadar+
オンラインゲーム内のゴールドや高額アイテムをプレイヤーのアカウントから盗み、現金化していた元開発者に、実刑を伴わない有罪判決が下されました。事件の注目点は、盗まれたゲーム内通貨が、英国の裁判所によって刑事事件の対象となる「財産」と認められたことです。元開発者はゲーム運営会社の内部情報を悪用してアカウントを復旧し、仮想アイテムを外部の市場で売却していました。
元開発者に執行猶予付きの判決
ケンブリッジシャー警察の発表によると、元Jagex開発者のAndrew “Mod Jed” Lakeman被告は、プレイヤーアカウントへの不正なコンピューターアクセス、従業員としての立場を利用した窃盗、犯罪収益の隠匿・偽装・転換・移転・除去、犯罪収益の取得などの罪に問われ、最終的に起訴内容を認めました。
被告は9月3日、Cambridge Crown Courtで3年の拘禁刑を言い渡されたものの、刑の執行は2年間猶予されています。さらに、無償労働150時間と、25日間の更生プログラムへの参加も命じられました。判決は、事件の発覚から逮捕、捜査、訴訟まで数年を要した事件に対するものです。
アカウント復旧機能を悪用して資産を売却
Lakeman被告は、当時Jed Sandersonの名前で活動しており、Jagexでゲームの開発に携わっていました。警察の説明では、2018年半ばからゲームのアカウント復旧システムを利用し、正規の所有者しか知り得ない情報を使ってプレイヤーのアカウントを取り戻す形で侵入。内部のゲーム内資産であるゴールドや高額アイテムを抜き取り、それらを現金または暗号資産に交換していたとされています。
盗まれた資産は、ゲーム内で使うだけでなく、ゲーム外のグレーマーケットで販売されました。捜査では、被告の口座から暗号資産の取引業者を経由した現金の入金が見つかっています。ただし、警察の発表をもとにした報道では、その金額を示す箇所が伏せられており、記事中で具体的な総額は確認できません。被告は妻とのプライベートメッセージで、Jagexを辞める前に「大金を稼ぐ」計画を話していたともされています。
Jagexがアカウントへの不正アクセスに気づいた際、復旧に使われていた情報が一般のプレイヤーには知り得ないものだったため、社内の関係者が犯人である可能性を疑いました。同社は従業員向けネットワークのファイアウォールに罠を仕掛け、被告のアクセスを特定するに至ったと警察は説明しています。2019年7月に逮捕された後、被告は自分のアカウントが第三者に侵害され、別の人物がゴールド窃盗に利用した可能性があると主張していたとされています。
警察は「仮想だからといって窃盗でなくなるわけではない」と指摘
捜査を担当したAndrew McKeane刑事は、この事件について「異例で、長期にわたる捜査だった。毎日のように目にする事件ではない」と説明しています。さらに、Lakeman被告は自分の行為が悪いと理解していたはずだとしたうえで、ゲーム内アイテムの販売によって得た数十万ポンド規模の利益は、通常の窃盗による利益と変わらないと指摘しました。
McKeane刑事は、「仮想のものだからといって、法律の全面的な適用を受けなくてよいわけではない」との趣旨を示しています。ゲーム内通貨やアイテムは現実の紙幣や物品ではありませんが、他人のアカウントから移せば被害者が使えなくなり、加害者側が売買によって利益を得られます。今回の事件では、こうしたゲーム内資産の性質が、刑事上の窃盗と結び付けて判断されました。
ゲーム内ゴールドを「財産」と認めた控訴審
この事件は、ゲーム内アイテムにどのような法的価値があるのかをめぐる議論にも影響を与えています。英国では年初、Lakeman被告の事件をめぐり、控訴院がゲーム内のゴールドを、刑事窃盗の対象になり得る「財産」と定義できると判断しました。
以前の裁判では、ゴールドは複数のプレイヤーが同時に保有できる情報に近く、他者との取り合いになるものではないため、財産とは言いにくいという見方が示されていました。しかし控訴院はこの判断を覆しました。あるプレイヤーがゴールドを使ったり消費したりすれば、その分だけ他のプレイヤーが利用できる量や機会に影響が及ぶため、ゴールドには「競合性」があると認定したのです。
この判断により、オンラインゲーム内の通貨やアイテムを不正に移転させる行為は、単なる利用規約違反やサービス上の不正行為ではなく、状況によっては刑事上の窃盗として扱われ得ることが示されました。今回の判決は、ゲーム運営会社が内部権限を悪用した窃盗事件であると同時に、デジタル資産の法的な扱いをめぐる先例としても位置付けられています。
ゴールド販売をめぐる問題は税制にも波及
ゲーム内ゴールドの現金化をめぐっては、2025年9月にも別の販売業者が注目を集めました。その業者はゴールドの販売で多額の収益を得たと推定されていましたが、ゲーム内通貨の法的な分類を理由に、課税対象となる本当の収入は別の方法で計算すべきだと主張していたとされています。今回の窃盗事件とは別の案件ですが、ゲーム内資産が現実の経済活動とどのように結び付くのかを問う事例となりました。
その事件が表面化した数日後、Jagexは不正行為やゴールド販売への対策を大幅に見直す方針を発表しました。以降、ゲーム内ではボットやゴールド販売業者の活動が珍しいほど低い水準になったと報じられています。今回の判決は、開発会社による不正対策だけでなく、ゲーム内で価値を持つデジタル資産を法律がどう扱うのかという問題にも、あらためて焦点を当てるものとなりました。