『Control Resonant』の地下エリア「The Underpass」では、移動アクションが本作屈指の楽しさを生み出します
『Control Resonant』でとりわけ印象に残るのは、地下エリア「The Underpass」です。戦闘には乗り切れない面があるものの、この場所では能力を組み合わせて足場を渡る楽しさが際立ち、Remedy Entertainmentの3Dプラットフォームゲーム作りの巧さを感じさせます。派手な演出を抑えた空間でありながら、本作でも屈指の体験が待っています。以下では、ゲーム後半の展開に軽く触れます。
都市のにぎわいが消え、暗闇だけが残る
ねじれたマンハッタンの街並み、綿あめのようなカビに覆われた美しいエリア、宙に浮く頭部との驚くべきボス戦。『Control Resonant』には記憶に残る場面が数多くあります。それでも筆者が最も気に入ったのは、驚かせるための派手な場面ではなく、装飾をそぎ落としたThe Underpassでした。
マンハッタンを十数時間から20時間ほど探索したあと、Dylan Fadenは地下鉄の駅や陥没穴よりもさらに深い場所へ潜り、この奇妙なエリアにたどり着きます。物語の勢いをそぎかねない地下への移動が、実際には本作で最も充実した時間につながります。
それまでのオープンワールドには、建物や看板、通りをうろつく敵の集団がひしめき、遠くまで細かな景色が広がっていました。The Underpassでは、そのほとんどが消えます。目の前にあるのは、現実離れした真っ黒な深淵です。
そこは、都市をばらばらに解体したような場所です。切り離された石の足場と、むき出しの配管が虚空に浮かんでいます。周囲を覆う深い暗闇は、マンハッタンで培ってきた時間や場所の感覚まで奪います。まるでマンハッタンの下書きを丸めて捨てたような、本来は存在してはいけない空間です。本作は各所で境界的な空間の不気味さを描いていますが、The Underpassでは、より派手な景観の変化にも増してその表現が冴えています。
地下の実験が示すFBCの危うさ
The Underpassが印象深いのは、その不穏な見た目だけではありません。物語の面でも、本作屈指の場面が描かれます。
異質な迷路を進むDylanが、FBCの実験施設を載せた浮遊する足場を見つけたときには、ほっとする感覚すらあります。ようやく人間の営みにつながるものが現れるからです。
そこから始まる主要ミッションでは、FBCが街の地下で続けてきた、制御を失った実験の実態が明らかになります。FBCの不注意が招く結果は、以前にもThe Oldest Houseで描かれていました。しかしThe Underpassは、同局の科学者たちが現実そのものの構造に、取り返しのつかない損傷を与えていることをはっきり示します。
能力をつなぎ、足場を渡る楽しさ
筆者がThe Underpassを特に楽しめたのは、本作の中でも戦闘の比重が最も低い区間だからでしょう。敵を斬りつける戦いに代わって中心となるのは、移動です。Dylanは能力を慎重につなぎ、離れた足場から足場へと渡っていきます。
この移動の仕組みは、Remedyを高く評価したくなる出来です。空中ダッシュ、グラップル、ホバリングを組み合わせると、ゲームの想定を飛び越えられそうに感じるほど長い距離を移動できます。The Underpassは、その魅力を存分に引き出すように作られています。
非現実的なジャングルジムを進むうちに、スーパーマリオ オデッセイで動きをつなげていくときのような、夢中で操作に没頭する感覚が生まれます。Remedyはアクションゲーム以上に、3Dプラットフォームゲームを作るのが得意なのではないか。そう思わせるほどの手応えがあります。
終盤の驚きを支える転換点
The Underpassは、『Control Resonant』にとって大きな転換点です。筆者は、今後のControlシリーズ全体にとっても、そうなるかもしれないと見ています。序盤の定石どおりのオープンワールド探索に代わり、より創造的で刺激に満ちた体験が前面に出てくるからです。
すでに危うく見えていた都市は、ここでついに綻び始めます。The Underpassで触れた、現実の成り立ちそのものが崩れる感覚は、その後の展開にもにじみ出していきます。それがあるからこそ、終盤の大きな驚きにも説得力が生まれます。
中でも、思わず息をのむある場面は、現実が損なわれたControlの世界では、もはや何が起きてもおかしくないと思わせます。Remedyがこの先どこへ向かうにしても、その行く末を追いかけたくなる体験です。