IGNが指摘、2026年F1の電力自動配分の不具合を『F1 27』はどこまで再現すべきか
IGNは、2026年シーズンのF1で導入されたAIによる電力の自動配分が、ドライバーの操作を大きく奪っていると指摘しました。そのうえで、この現象を次のF1ゲーム『F1 27』でどう扱うべきかを論じています。リアルに再現するほどゲームが不具合だらけに感じられかねないという、開発元Codemastersにとって難しい状況が浮かび上がっています。
実戦で相次ぐ電力配分のトラブル
2026年のレギュレーション変更により、マシンはハイブリッドパワーユニットの電力配分を機械学習のAIに制御されるようになりました。普段は車載カメラの映像から見分けにくいものの、うまく働かなかったときには非常に目立つといいます。
10月第1週の雨のセパン・サーキットでは、ウォームアップラップで22台すべてがスロットルを失い、時速20マイルほどでノロノロと走る事態になりました。原因は、雨天とセパンのセクター構成が引き金となったソフトウェアの不具合です。決勝の開始前に、全チームがマシンのソフトウェアを更新する必要がありました。スタート・フィニッシュ直線で完全に止まったルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、スロットル制御と電力配分を取り戻すため、エンジンを丸ごと再起動したと話しています。IGNはこれを、コース上でCTRL+ALT+DELをするようなものだと表現しています。
1戦前のバクーでは、バルテリ・ボッタスがレース終盤にリタイアしました。ターン15のブレーキングポイントを完全に見逃してロックし、バリアに衝突したように見えましたが、後にボッタスは原因がドライバーのミスではなく、エネルギー配分システムだったと明かしました。GPBlogに対しては「かなり奇妙でした」と述べ、同じ周のターン1でコースオフして膨らんだ後、システムが少し混乱したのだと思うと説明しています。大きなスーパークリップが発生し、ブレーキを踏むと前輪のブレーキしか効かず、後輪での回生が止まったような感覚だったとのことです。
スーパークリップとは、電動モーターのためにエネルギーを回収する目的で、パワーユニットが自動的にスロットルを絞る動作です。ブレーキングゾーンのはるか手前でマシンが燃料切れのように惰性で進む、奇妙な光景になるとIGNは書いています。
正常に動いていても問題になる
IGNは、問題なのは明らかな故障の場面だけではなく、計画どおりに動いているときも競技にとってマイナスだと主張しています。その例として挙げているのが、鈴鹿でのランド・ノリスの発言です。ノリスは、7度の世界王者であるハミルトンを抜いた場面について、マクラーレンの公式サイトで次のように語りました。
ノリスによると、自分は望んでいなかったのにバッテリーの電力配分が作動し、結果としてハミルトンを抜くことになったそうです。そのため次のストレートでは無防備になり、本来はそこでバッテリーを使うつもりだったといいます。ノリスは「ドライバーから奪う制御が多すぎる」という趣旨の見解を示しました。
IGNは、通算106勝のハミルトンを意図せず抜き、直後に自分は守れなくなるという状況が、電動配分の影響力の大きさを物語っていると見ています。2026年のマシンは、ターボエンジンと電動モーターの出力比がおよそ50対50です。ブーストを使う車と使わない車の差が非常に大きく、別カテゴリーの車が同じコースを走っているように見えるため、レースが不自然だという批判も多いとのことです。なお、この点についてシャルル・ルクレールが今季述べた発言が記事中にありますが、引用部分が欠けているため、内容は確認できません。
Codemastersが直面する難題
Codemastersは、2009年にF1のライセンスを取得して以来、シムとアーケードの中間にあたる作りを続けてきました。iRacing、rFactor、Assetto Corsa Competizioneほど物理シミュレーションが厳密ではないものの、競技の細部や要求を取り込み、遊びごたえのあるレースウィークエンドにまとめてきたと、IGNは評価しています。
タイヤの摩耗やエンジンマップの管理は以前から欠かせない要素でした。最近の作品のドライバーキャリアでは、パワーユニットが消耗し、シーズン中に規定数を超えて使うとグリッド降格のペナルティを受けます。金曜のフリー走行で貯めたポイントは、新しいエンジンや空力パーツの研究と製造に使えます。DRSが導入された2011年にはF1 2011に、ERSのバッテリー管理が始まった2014年にも同様に、そのシーズンのテレビ映像に映る要素を取り入れてきました。
2026年シーズンのDLCは、現行レギュレーションをある程度取り込んでいます。直線区間かどうか、スロットルが90%以上に踏み込まれているかによって、バッテリーの回収の仕方が変わるといった工夫があります。ただし、運転支援を有効にしない限り、回収と配分の主導権は基本的にプレイヤーが握ります。実際のコースで多くの不具合を起こしているAIの自動配分とは、大きく異なる仕組みです。
再現するほど壊れて見えるジレンマ
IGNは、この自動配分がソロでもオンラインでも満足感を高めるとは想像しにくいと述べています。チームごとのAIの出来が、レース結果に影響する点も気がかりだとしています。
筆者の見立てでは、『F1 27』が最大限のリアルさを狙えば、スロットルを踏み込んでいるのに直線で減速したり、急に速くなった数コーナー後にはGP3のマシンに乗っているような気分になったりします。チームメイトのAI配分のほうがうまく働いて負ける、という事態もあり得ます。シミュレーションの出来がよいほど、バグだらけで壊れているように感じられるという、興味深い立場に次のF1ゲームは置かれているというわけです。これまでファンは実車にできるだけ近いレースを求めてきましたが、『F1 27』では初めて、開発側の創作的な味付けを受け入れるかもしれないとも述べています。
2027年のレギュレーション変更に左右される開発
最善の展開として、IGNは国際自動車連盟(FIA)が判断を肩代わりしてくれる可能性を挙げています。2027年シーズンに向けて予定されている変更では、ブレーキングゾーンでより多くのバッテリーを回収し、直線での配分を減らせるようになります。これによりブーストボタンの効果はマリオカートのキノコのような感覚ではなくなり、直線でのスーパークリップも減るはずだとのことです。ただし、IGNは「はず」であって確実ではないと強調しています。
急いでまとめられた変更が狙いどおりに機能すれば、実際のレースも2027年のゲームもずっと標準的な内容になります。しかしFIAを含め、誰も効果を確信できていません。シーズン前のテスト時間を増やしたことが、その事実を暗に認めているとIGNは見ています。
さらにシーズンは3月に始まるため、Codemastersは2027年のレギュレーションの影響に非常に素早く対応しなければなりません。チームやドライバーの性能調整を、発売前の数レースの結果だけで進めることには慣れています。しかし今回の配分の問題は、レース戦略から車を操る基本的な入力まですべてを左右します。そのため、2027年のマシンが実際に走る様子を見るまで、『F1 27』はハンドリングモデルを確定できないだろうとIGNは述べています。
オンライン対戦とMy Teamモードの可能性
IGNが特に注目するのがオンライン対戦です。もともと恨みや悪意が渦巻きやすい場に、エネルギー配分を不正に利用したという疑いが加わると、さらに荒れかねません。F1シリーズの最速級のプレイヤーは、セッティングやハンドリングの癖に抜け道があれば、多国籍企業が租税回避の抜け穴を突くように利用するだろうと、IGNは皮肉を込めて書いています。上級者向けに隙のない配分とハンドリングを作りながら、カジュアル層にも分かりやすく楽しい内容にすることが、開発元に求められる課題です。
打開策になりうるのが、F1 25から搭載されているMy Teamモードです。このモードでは毎シーズン終了時に、提案されたレギュレーション変更へ投票できます。通常は研究開発のルールやコスト上限が対象で、遅れを取り戻したいチームにとってはリセットの機会になっています。IGNは、AIによるバッテリー自動配分の禁止にも投票できるようにすれば、従来の手動に近い運転に戻りたいプレイヤーへの『F1 27』の切り札になるかもしれないと提案しています。ただし、それはFIAが実際のレースの問題を解決するまでの間の策だとしています。