8ビット風ホラー『Tenebris Somnia』、2Dアドベンチャーに実写映像を組み合わせた異色の作りが不気味
2026年10月31日 | #レビュー | Eurogamer
『Tenebris Somnia』は、レトロな2Dアドベンチャーと本格的な実写映像を組み合わせたホラーです。実写パートの出来は強い印象を残す一方、筆者はまだ序盤としたうえで、アドベンチャー部分の単調なテンポとやや平板な文章には疑問も抱いています。
『Faith: The Unholy Trinity』に連なる、ルールを崩すホラー
筆者は『Faith: The Unholy Trinity』をプレイして以来、プレイヤーの予想を裏切る作りに魅了されてきたといいます。同作は8ビット風のホラーに見せかけつつ、8ビットのゲームにできること、あるいはプレイヤーの記憶にあるその限界を曲げて驚きと恐怖を与えます。
『Tenebris Somnia』もよく似ており、『Faith』の開発元Airdorf Gamesがエグゼクティブプロデューサーを務めています。耳に残るチップチューン風の音楽、ドット絵のグラフィック、昔ながらの見せ方といったレトロな美学は共通です。そのうえで本作は、レトロな2Dアドベンチャーと実写映画という、まったく性質の異なる2つの体験を溶接するように組み合わせています。
ポイント&クリック風の地道な探索
序盤は、ゆっくりとしたあまり目立たない展開で、遊び心地はポイント&クリック型のアドベンチャーに近いものです。プレイヤーは、元恋人のアパートで何かが起きたのではと疑い、そこへ向かう若い女性を操作します。画面を移動しながら気になる場所を調べ、空き瓶や謎めいた本といった小物を集めてインベントリに保管します。やがて鍵のかかったドアが現れ、散らばった手がかりをつなぎ合わせて開ける必要があります。
アパートで惨状を目にする緊迫した状況にもかかわらず、進行はあえて昔ながらのゆっくりしたものです。行ったり来たりしながらすべてを調べ、持ち物を「組み合わせ」たり環境に「使用」したりして、うまくいかなければ別の方法を試します。
手間の報酬として挿入される実写映像
本作が際立つのは、こうした作業の見返りとして、光沢のある実写シーンが流れる点です。衣装とメイクに凝った本物の俳優が、物語の重要な場面を演じています。顔が2つあり、片方が逆さまになった人物が暗闇から駆け寄ってくる場面や、エレベーターに突然現れた謎の女性が贈り物を差し出す場面があります。ほかにも、ベッドで抱き合う2体の蝋人形のような人物や、顔に穴の開いた巨大な女性が天井に向かって伸びていく場面などが登場します。
奇妙で目を引く内容で、制作の質も高く、ローファイなインディー作品としては際立った完成度です。その理由は、実写部分を手がけたのが、アルゼンチンのホラー映画『When Evil Lurks』などに携わった映画監督Andrés Borghi氏だからです。
実写がドット絵の世界に与える深み
実写シーンは、本作ならではの別の次元をもたらしています。廊下で迫ってくるドット絵のクリーチャーは、間近で見たあとでは頭の中での存在感が増します。カクテルドレス姿の謎めいた女性も、顔の輪郭や刻まれた悪魔的な印のような模様を知ったことで、印象が変わります。世界をより身近に知ることで、恐ろしさも増すわけです。パズルを解いたり謎の扉を開けたりすれば、豪華な報酬と真相が待っていると分かるため、先へ進む推進力にもなっています。
序盤で感じた不安
ただし筆者は、ゲーム全体には疑問があるといいます。まだ序盤で、慣れていないだけかもしれないと断ったうえで、のろのろとした停止と再開の繰り返しがサスペンスや恐怖を損なっていると指摘しています。作業の煩わしさが緊張感をしぼませ、同じ場所を何度も訪れるため驚きも薄れます。新しいエリアを探索する面白さも、今のところあまり見いだせていません。
文章についても、興味を引くというより機能的に感じるといいます。アドベンチャーパートでは文章が大きな役割を担うため、これは問題だとしています。
映画づくりの物語に残る期待
それでも筆者は期待を残しています。実際にプレイした分より少し多く映像を見たそうで、元恋人が作ったホラー短編を軸にした映画制作の物語は、深まりながら自らに立ち返っていくように見えるとのことです。プレイヤーの行動はすべて、悪魔的存在との取引とそれがもたらすおぞましい結果という、その映画に結び付いているようです。映画的なモチーフは何度も繰り返されます。
実写シーンが、主人公の体験している出来事以上のものを表している可能性もあります。筆者は、本作には興味をそそる謎と奥行き、考え抜かれた構造、そして豊かな想像力がありそうだと見ています。