『ゼルダの伝説 時のオカリナ』リメイク版のプロデューサーが語る、変えた点と守った点
2026年11月05日 | #ゲーム紹介 | Game Informer
Switch 2向けに『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のリメイク版が発売されました。Game Informerは、ゼルダシリーズのプロデューサーである青沼英二氏と、リメイク版プロデューサーの藤林秀麿氏にインタビューしています。青沼氏は、原作『時のオカリナ』でシリーズに初めて関わった人物です。藤林氏は『ブレス オブ ザ ワイルド』と『ティアーズ オブ ザ キングダム』でディレクターを務めました。インタビューでは、リメイクの方針、原作から変えた点と残した点、イースターエッグの扱いなどが語られています。なお、原作のネタバレにあたりうる質問と回答は、元記事では伏せ字扱いになっています。
若手中心の開発体制と「変えるもの・変えないもの」
リメイクの開発時期について、青沼氏ははっきりした始まりを挙げにくいと話します。ゼルダの伝説の40周年が近づき、記念に何を作るかを話し合う中で『時のオカリナ』に決まったため、会話の開始から決定までに時間が経っていたそうです。
『ブレス オブ ザ ワイルド』『ティアーズ オブ ザ キングダム』の後で気楽な開発だったかという質問に、青沼氏は「楽だったかと聞かれると難しい」と答えました。新作とは開発のスタイルが異なり、今回は若手スタッフを集め、それぞれの経験や解釈を生かしてもらう方針でした。青沼氏の役割は助言です。プロデューサーが「こうするべきだ」と言いすぎないようにして、若手が自分なりに取り組む余地を残すよう気を配ったとのことです。
藤林氏によると、開発では「何を変え、何を変えないか」の指針がはっきりしていました。変えるのは、Switch 2の性能を生かせる操作性やグラフィックです。新しいコントローラーによるカメラ操作や、手触りの調整も含まれます。一方で、原作の制作者が伝えたかった体験や精神はそのまま残す方針でした。青沼氏は、N64版の開発当時は技術的な制約から「もっとこう表現したかった」と思う場面があったと振り返ります。そのうえで、ゼルダらしさを守ることと、スタッフが自分なりの表現を見つける自由を両立できたと述べました。
水の神殿などの調整
以前の取材では、宮本茂氏が水の神殿の難しさを冗談にしていました。これを受けて、リメイク版の水の神殿への満足度が問われました。青沼氏は、難しさの一部はプレイヤーに提示していた仕組みに由来すると説明します。
原作では、ヘビーブーツを履くたびに別の画面へ移ってボタンを押す必要がありました。リメイク版ではゲーム画面上のボタン1つで切り替えられるため、プレイヤーはメニュー操作で思考を中断されず、謎解きに集中できます。さらに、原作ではカメラの向きを動かせなかったため、目的の部屋が空間のどこにあるかをつかみにくいという問題もありました。この2点から、青沼氏は今回が「最良の水の神殿」だと語っています。
初見のプレイヤーと古くからのファンの両方に向けて
リメイクの対象は新規のプレイヤーと原作ファンのどちらなのかという質問に、藤林氏は「両方」と答えました。原作ファンには、当時『時のオカリナ』を遊んだときの体験をそのまま届けることが答えだといいます。初めて遊ぶ人に対しては、グラフィックや操作、カメラ操作の追加といった調整で、現代のゲームに慣れた人でも抵抗なく入れるようにしたそうです。
青沼氏は、原作には隠し要素が多く、1回のプレイでは見つけきれないこともあると指摘します。かつては攻略本などで情報を調べる人もいました。たとえば99匹まで集めた黄金のスタルチュラの最後の1匹を探す場面では、どんな情報を与えれば挑戦的でありながら楽しい体験になるかを考えたそうです。新規のプレイヤーにも世界を存分に味わってもらいたい一方で、古くからのファンには事前の知識という有利さがあると話しました。
取材した記者は、自分もその最後の1匹が見つからず、夢に見るほどだと打ち明けています。
エンディングと恐怖演出
記者は、リメイク版のエンディングに予想外に感動し、涙したと伝えました。藤林氏は、このカットシーンが開発チームでも特に議論した場面だったと説明します。当時の技術的な制約やゲームのテンポのせいで、十分に伝えきれなかったものがあったかもしれず、リメイクでは意図した感情が呼び起こされるように表現し直したそうです。記者の反応を聞いて「ほっとした」と述べています。
リーデッドや影の神殿、デッドハンド、壁マスターなど、多くの子どもにトラウマを与えた存在の怖さについては、青沼氏が次のように話しました。当時から、敵が少し怖く感じられることは意図していたそうです。ただ、怖がらせること自体が目的ではありません。リンクが属する明るく友好的な世界と、ガノンが属する暗く恐ろしい世界を対比させるためでした。現在の表現力なら、やろうと思えばはるかに怖くできますが、あらゆるプレイヤー向けの作品として、新規の人や若い人が敬遠しない程度に調整しているとのことです。記者はリーデッドの叫び声が今でも胸に響いたと語りましたが、青沼氏は収録時のことを「覚えていません」と笑って答えました。
テキストの全面的な書き直し
リメイク版では、意味を大きく変えずに、ほぼすべてのテキストが書き直されています。藤林氏によると、原作は28年前の作品であり、言い回しが現代では分かりにくく、機能しない部分があったためです。
グラフィックの向上も理由の1つです。かつては「手のひらに収まるくらいの青いオカリナ」のように、言葉でものの大きさや色を説明する必要がありました。現在は見れば分かるので、冗長な説明は「見れば分かる」と思われてしまいます。そうした小さな障害を取り除き、表現とテンポを改善することが狙いだったそうです。
個別の変更点について
ビンが5本に
青沼氏は、原作の開発中から「あと1本ビンがあってもいい」と思っていたといいます。原作で4本すべてを集めたときの達成感は認めつつ、ずっと頭の片隅にあった考えでした。リメイクでは、最初のビンを早めに手に入れられるように順序を少し変えるよう提案しました。ビンの便利さを早く実感でき、次のビンを探す動機にもなるためです。
ハイラル城の庭の肖像画
原作では、ゼルダ姫の庭の窓にマリオやヨッシーなど任天堂のキャラクターの絵がありましたが、リメイク版では削除されています。青沼氏は、当時は深く考えず、おおらかに入れていたのだろうと振り返ります。今は世界観を作り込んでいるため、プレイヤーが「なぜここにヨッシーが」と思って体験が途切れるのを避けたいと説明しました。一方、タロンの服にあるクッパのデザインは原作からのものなので、そのまま残してあります。
3DS版のスカイウォードソードの絵も削除
3DS版には『スカイウォードソード』の絵が隠されていました。当時のデザイナーがイースターエッグを入れたがっており、発売時期も合っていたため、青沼氏が許可したそうです。今回は、プレイ中の体験と無関係なものを見せて没入感を損なわないよう、入れない判断をしました。『スカイウォードソード』でディレクターを務めた藤林氏は、青沼氏の説明どおりで「わだかまりはない」と話しています。
ゼルダシリーズの年表に関する小ネタも、スタッフから提案されたことはあったといいます。しかし青沼氏は、この作品を最良の『時のオカリナ』にすることに集中しようと断りました。年表は頭の片隅にあったものの、他作品への言及は入れていないそうです。
子どもから大人への場面
最も大きなカットシーンの変更は、リンクが子どもから大人に変わる場面です。青沼氏によると、原作ではリンクの成長に反応するガノンドロフの場面の説明が少なく、プレイヤーは「なぜここにいるのか」と疑問を抱いたままでした。リメイクでは、彼の存在と反応を説明することで印象を強めています。最終決戦でガノンドロフと対峙する動機にもつながり、以前より伝わりやすくなったとのことです。
短い質問への回答
ボムチュウボウリングの店の女性が7年後にどうなったのか、独身かどうかという質問には、青沼氏は「そこには触れず、想像にお任せします」と答えました。
黄金のスタルチュラの報酬がボムチュウであることへの不満には、青沼氏は「それも原作の体験の一部」と答えました。「え、これだけ?」という落胆も含めて、原作で人々が感じた感覚を残す方針だといいます。すばらしい場面だけでなく、小さながっかりも記憶に残るものとして維持することが重要だと語りました。
大妖精がなぜルピーを必要とするのかについて、藤林氏は「気持ちの問題」と説明しました。日本で寺にお賽銭を納めるのと同じように、大妖精への敬意を示す行為だそうです。
なお、取材の最後に記者はSwitch 2を取り出し、ハイラル平原で残り1匹のスタルチュラが見つからないことを示して、ヒントを求めました。