『Mass Effect Legendary Edition』にMass Effect 3のマルチプレイを移植するMODが、N7 Dayの11月7日に無料で公開
ModderチームのME3Tweaksが、Mass Effect 3のマルチプレイモードを『Mass Effect Legendary Edition』へ移植するMODを完成させました。公開日はN7 Dayの11月7日で、Nexus Modsで配布されています。Legendary Editionを所有していれば無料で遊べます。2021年発売のLegendary Editionには3作のシングルプレイとDLCが収録された一方、根強いファンがいたMass Effect 3のマルチプレイは含まれていませんでした。今回のMODは、EAによるBioWare閉鎖の数週間後に登場しました。
ME3Tweaksを率いるMgamerz氏は、IGNのインタビューでMODの内容や開発経緯、MOD界の現状について語っています。
Legendary Editionの環境で動く、独立した移植版
このMODは、Mass Effect 3のマルチプレイをそのまま移すものではありません。Legendary Editionの素材を導入時に取り出し、Mass Effect 3に相当する新しいコピーを生成します。チームはこれを「LMP」と呼び、完全に独立して動作します。そのためLegendary Editionの所有が必須です。既存のMODは、導入直後に環境が壊れる事態を避けるため、新しい導入先では動かない設計になっています。Mgamerz氏は、まず制限を厳しくし、状況を見ながら緩めていく方針だと説明しています。
見た目の面では、ライティングをUnreal Engine 4のライトソルバーで焼き直しています。Mass Effect 3のライトマップは影の縁が階段状になるなど粗いものが多く、格子越しに光が差し込むマップでは特に見栄えが悪かったそうです。また、同氏は8年間Mass Effect 3のマルチプレイをMODしてきた経験から、3つのキャラクタークラスが最高品質のメッシュを使っていないことに気づいていました。たとえばGeth Infiltratorは最高品質のモデルがゲームに収録されているのに使われていなかったため、これを有効にして品質を引き上げたといいます。
拡張性にも配慮しています。同氏はこれまでマップパックや新勢力を追加するMODを作り、拡張時に障害となる点を把握していました。それを踏まえ、後から新勢力などを追加しようとする開発者が同じ問題に悩まないように作ったとのことです。通常のStandardを遊ぶだけでは違いに気づきにくいものの、長い目で見れば効いてくると話しています。
3年がかりの開発と、公開日をめぐる事情
発端は、Mgamerz氏がMass Effect 2の未使用エリアをMass Effect 3に移植する実験を進めたことでした。ここでカバーの挙動を整え、「マルチプレイのマップも移せるのでは」と考えたそうです。2021年に移植したPinnacle Stationは大半がMass Effect 1の既存素材の流用でしたが、マルチプレイは素材がほぼ存在しないため、作業量が大きく違いました。
2023年末のN7 Dayに、同氏は新しいDiscordを立ててメンバーを集めました。最初は冗談だと思われたそうです。開始から1か月ほどで、動作確認レベルのマルチプレイは動いていました。そこから約2年は、新しい版のオーディオエンジンへの音声移植、ゲームに同梱されていないソースでコンパイルされていたシェーダーの再現、テクスチャーのアップスケールなどに費やしました。昨年は同氏が腕を骨折し、6〜8か月の遅れも出ています。
同氏によると、2026年7月末から8月初めには、クラッシュせず、シェーダーも正しく表示される完全にプレイ可能な状態になっていました。本人は来年1月の公開が妥当だと考えていたものの、N7 Dayに合わせることにしたそうです。BioWareの閉鎖は公開日の判断にはまったく影響していません。ただ、Mass Effectへの注目が高まっているため、利用者は増えると見ています。公開初日は不具合が出ると予想しており、時間をかけて改善していくと語っています。
EAの対応への懸念と、今後の予定
EAがMOD用ツールへのアクセスを取りやめる可能性について、同氏は「そうは思わない」と答えています。2021年にはBioWareと秘密保持契約を結び、Legendary Editionの発売前にMODに関する意見も伝えていました。契約はすでに失効しています。BioWareにはMODへの関心があったと見ているものの、新しいEA側の考え方は分からず、少し心配だとも述べています。
サポートは長期的に続ける考えです。同氏はマルチプレイを自分の得意分野と位置づけ、Originが時間を記録する前の最初の1年だけで1000時間以上、その後さらに2800時間を遊んできたと明かしています。シングルプレイの3部作は、2012年以降で通しで遊んだのは2回ほどだそうです。今後は、4年前に予告したLE1とLE3のランダマイザーや、自作のマップパックRedemption、敵勢力Rejectionの現行水準への更新に取り組みたいとしています。
なおMODには、BioWare閉鎖後に話題となったMass Effect Universeのトレーラーなどから取った新しいバナーも追加される予定です。同氏はトレーラーについて、調査要素のある内容に見えて面白そうだったと感想を述べています。
AIツールとMOD文化への懸念
インタビューでは、AIによるMOD制作についても意見が語られました。ME3Tweaksは最初の2年間、AIをまったく使っておらず、逆コンパイルの大半もAIツールが使える前に済んでいました。一部にClaudeを使った部分はあるものの、中身を理解して確認しながら使う「AI支援」と、プロンプトを繰り返して結果だけを得る「バイブコーディング」は別物だと線引きしています。
同氏が懸念するのは、品質の担保です。MOD制作の難しさがこれまで低品質なものを選別してきた面があり、MODには、起動時に読み込むファイルに詰め込むとメモリーを大量に消費するといった、守るべき作法もあります。最近は説明文や画像まで人が書いていないMODがあり、手順が誤っていたり、画像が内容を示していなかったりする例も見られるとのことです。作者がすぐにいなくなり、不具合の対応が長く関わる人たちに回ってくることも問題だと指摘しています。
新しく始める人については、AIを使わず難題に挑む人は、アイデアを先に別の人にAIで作られてしまうため、秘密裏に作るしかなくなっていると述べ、「MODは衰退しつつある」との見方を示しました。一方で、技術がなく実現が難しい人が自分用に作るのは問題なく、公開して他人に配ることで初めて皆の問題になるとも話しています。自分で屋根を張り替えた経験を例に、手間をかけて作ったという誇りが、プロンプトだけで済ませることで失われていくと感じているそうです。