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『クラッシュ・バンディクー』の岩石追跡ステージが、映画的な追走劇の原型に

2026年09月26日 | #ゲーム紹介 | IGN

『クラッシュ・バンディクー』の岩石追跡ステージが、映画的な追走劇の原型に

『クラッシュ・バンディクー』の短い追跡ステージ「Boulders」は、後のゲームに広がるカメラ演出の先駆けでした。クラッシュの表情を見せたいという工夫から生まれたこのステージは、ノーティードッグの映画的な演出や、プレイヤーに合わせて難易度を調整する考え方にもつながっていきます。

顔を見せるためのカメラ転換

「Boulders」は全32ステージのうち4番目に登場し、クリアまでの目安は約60秒です。巨大な岩から逃げる短い場面ですが、キャラクターが画面奥から手前へ走ってくる追跡演出の先駆けとなりました。『アンチャーテッド』シリーズをはじめ、後年のアクションゲームにも同様の場面が数多く登場します。『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』では、主人公のネイサン・ドレイクがゲーム内で「Boulders」をプレイする場面もあります。

クラッシュ誕生に携わったジェイソン・ルービンは、2019年のIGNのインタビューで、これは「現代のノーティードッグが、昔のノーティードッグをプレイしている」場面だと語りました。ネイサンが理解していないのは、このゲームが彼の存在につながったということだ、とも振り返っています。

ステージの設計が始まったのは1994年。当時、小規模な独立系スタジオだったノーティードッグは、3Dプラットフォームゲームの制作に取り組んでいました。カメラをキャラクターの後ろに置くと、プレイヤーには背中ばかりが見え、表情を伝えにくくなります。アンディ・ギャビンは、キャラクターの顔こそ感情を表すうえで大切だと考えていました。

開発チームは、カメラを安定させて操作感を保つ一方、クラッシュの表情豊かなアニメーションも見せる方法を探しました。ルービンによると、クラッシュが砂から顔を出し、困惑した様子を見せてからカメラに向かって笑う演出は、キャラクターの魅力を伝えるうえで重要でした。

ギャビンが挙げた解決策は3つです。ゲーム開始時にキャラクターを画面の方へ向けること、横スクロールのステージを設けること、そしてソニックのように背中を見せる構図を反転させ、画面奥へ走るステージを作ることでした。こうして、クラッシュの顔を見せるためのカメラの工夫が始まりました。

迫る岩で生まれた時間制限

画面奥へ進む構図には課題もありました。従来の視点では、プレイヤーは進行方向にある障害物をあらかじめ確認できます。しかし、先が見えない視点では、障害物の情報が減ってしまいます。ギャビンは、3Dでは敵を横へ避けやすく、何もない空間が増えて選択と衝突のバランスが崩れると説明しています。

そこで開発チームは、空間の次元を増やしたぶん、別の要素を制限する方法を考えました。「Boulders」では、それが時間です。クラッシュの進む速さを岩に追われる状況で決め、プレイヤーに急いで進むよう促しました。着想のもとになったのは、映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』でインディ・ジョーンズが巨大な岩から逃げる場面でした。

画面奥から迫る危険、走り続けるキャラクター、時間に追われる緊張感が組み合わさり、追跡ステージの形式が生まれました。この演出は『クラッシュ・バンディクー』の定番となり、ノーティードッグ作品や他社のアクションゲームにも影響を与えました。

プレイヤーに合わせる難易度

「Boulders」の影響は、カメラ演出にとどまりません。アーケードゲームが主流だった時代は、何度も失敗させて追加のコインを使わせる設計が一般的でした。一方、ギャビンとルービンは、腕のあるプレイヤーに挑戦を用意しながら、初心者や子どもも先へ進める作品を目指しました。

ルービンによると、何度も倒される初心者にはラウンドの最初にアク・アクを与え、岩から逃げる場面で失敗を重ねた場合は岩の速度を少しずつ落とす仕組みを取り入れました。さらに、失敗が続くとフルーツ箱が途中再開地点になることもありました。こうした調整によって、最終的には誰もがゲームをクリアできるようにしたといいます。

プレイヤーの成績に応じて難しさを変える設計は、それ以前から試みられていましたが、1996年には『バイオハザード』の発売と同じ時期に、プレイ状況を見てゲーム側が難易度を調整する考え方が形になり始めました。『クラッシュ・バンディクー』も、腕前に合わせて体験を変える設計の一例となりました。

『クラッシュ・バンディクー』はPlayStationで大きな成功を収め、ノーティードッグの将来を形作る作品となりました。ルービンは、前作『Way of the Warrior』の販売本数は10万本未満だった一方、『クラッシュ・バンディクー』は900万本を売り上げたと語っています。ギャビンは、この作品こそノーティードッグの哲学が鍛えられた場だったと振り返りました。