『DayZ』生みの親Dean Hall氏、UnityやUnreal Engineに代わるオープンソースのC#フレームワーク「Brutal」を公開
2026年10月17日 | #その他 | GamesRadar+
『DayZ』の生みの親であるDean Hall氏が率いるRocketWerkzが、無料のオープンソースC#フレームワーク「Brutal」を公開しました。Hall氏は「業界は中核から外側に向けてあらゆる方向で腐りつつあり、それは以前から続いている」と述べ、AIエージェント主導の開発やリバースエンジニアリング、再コンパイルの広がりがその流れを加速させたと主張しています。UnityやUnreal Engineといった主流のエンジンから離れる選択肢を開発者に示す狙いがあるとのことです。
「Brutal」とはどんなものか
Hall氏がRedditの長文投稿で説明したところによると、Brutalは厳密にはゲームエンジンではありません。ゲーム制作に使えるほか、独自のゲームエンジンを作るための土台としても使えるC#のフレームワークです。
RocketWerkzの新作『Kitten Space Agency』はBrutalを直接使用しているとのことです。さらにHall氏は、人気のコロニーシム RimWorld も、開発元のLudeon StudiosとTynan Sylvester氏がこのフレームワークを土台にエンジン全体を作り直したと述べています。
Ludeon Studiosは今週、自社製エンジン「Waylith Engine」への移行を発表しました。同社によると、ゲームの見た目や遊び心地は変わらず、テストでは性能が2~4倍向上したそうです。この新しいビルドはSteamのベータブランチで提供中で、Modも動作するとされています。同社は「RimWorldだけがWaylithを使っているわけではない」とも述べ、新たなタイトルに取り組んでいることを明かしました。
Hall氏は、Ludeonのチームが RimWorld からUnityの最後の部分を取り除いたことを称賛しています。そして「実績のあるスタジオが、自分たちのゲーム特有の課題に合わせたエンジンを、土台作りに何年も費やすことなく構築できる」ことの証拠だと位置づけました。
Kerbal Space Program の作者であるFelipe Falanghe氏も、次回作の制作にBrutalを使っていると明かしています。Hall氏の投稿への返信で、8年前に権利を持たないまま同作を離れたと振り返り、Brutalとゲーム開発の集中的な学び直しのおかげで、新作は「お披露目まであと一歩」だと述べました。
Hall氏は、Brutalは自分一人の成果ではなく、RocketWerkzの多くの人々やFalanghe氏のような協力者が作ったものだと強調しています。長年の開発を経て、大手ゲーム企業出身の人材も加わっているそうです。一方で、Brutalは「誰もがゲーム制作に使うべきツール」ではないとも明言しました。Falanghe氏はBrutalの使い心地を、Godotなど他のエンジンが快適なソファだとすれば、バーのスツールに座るようなものだと例えています。Hall氏は、Slay the Spire 2 が採用するGodotは優れた技術だと補足しており、批判の矛先はUnity、Unreal Engine、そしてEpic GamesのCEOであるTim Sweeney氏に向けています。
Hall氏がUnityとUnrealを批判する理由
Hall氏は「UnityとUnrealが開発者に対する説明責任を果たせずにいるのを見てきた」と指摘します。さらに、AIエージェントを使った開発が、既存のソフトウェア企業を守ってきた競争上の優位を崩し始めれば、問題は悪化しかねないと懸念を示しました。優位性が薄れた企業が、乗り換えられないと感じている開発者から、ロイヤリティやサブスクリプション、より厳しいライセンスを通じて収益を引き出そうとする可能性があるという見方です。
この懸念の例として、Falanghe氏はUnityが2023年に巨額のインストール手数料を導入しようとして撤回に追い込まれた件を、開発者への警告として挙げています。
Hall氏はGDC 2025のTencent Summitでの講演でSweeney氏に、特に性能と安定性の面でUnrealは開発者に説明責任を果たしていると考えるかを尋ねたそうです。Hall氏によると、Sweeney氏は、デモをさらに作ってSNSで公開し、ゲームが「Unreal slop」と呼ばれることに対抗するという趣旨の回答をしました。Hall氏はこの答えに納得しておらず、ライセンス料の発生する基準を超えた売上に5%のロイヤリティを課す点も含め、開発者はその関係を疑問なく受け入れるべきではないと述べています。
またHall氏は、Epicが自社の製品や利用者よりも流行を追っていると批判しました。「ある年はメタバース、次の年はAI」という言い方です。原文筆者は、Epic Gamesが新しいストアフロントを「vibe coded」で作ったと発表したことに触れ、Hall氏がどう受け止めるか想像できるとしています。
利用条件と今後の狙い
Brutalは商用ゲームを含めて無料で使え、ロイヤリティや売上の一部の支払いは求められません。条件は適切なクレジット表記で、クレジットへの著作権表示の記載、起動時のBrutalロゴの表示、プロジェクトファイルへのBrutal告知文の同梱が必要です。これを望まない場合は、別途商用ライセンスを結べるとHall氏は説明しています。
Hall氏は「自分のツールの範囲でしか独立できない」とし、Brutalのようなフレームワークは「反撃の手段」だと位置づけています。「ツールが公開され、ソースコードがあり、その上に自分のシステムを自由に作れるなら、選択肢が生まれる」と述べ、もし将来RocketWerkz自身が開発者への説明責任を果たさなくなったときは、開発者がフレームワークをフォークして別の道に進めることが大切だと語りました。