『Penguin Colony』開発者Tali Faulkner氏、本作は「ゲーム業界に警告を突きつけるため」に作ったと語る
Origame Digital(『Umurangi Generation』)の新作『Penguin Colony』を手がけたマオリ系の開発者Tali Faulkner氏が、Polygonのインタビューで制作の狙いを語りました。同氏は本作の中心にあった考えとして、ゲーム業界に対して「何をしているのか」と問いかけ、警告を突きつけることだったと述べています。
本作の概要と、ゲームで描く意味
『Penguin Colony』は、PS2時代を思わせる見た目で、ペンギンが歩き、滑り、泳ぎながら、暗い南極の荒野で謎の光を追うゲームです。一見するとかわいらしくも少し不気味な作品ですが、ナチス、太古の宇宙的な恐怖、そして氷の下に潜む植民地主義への痛烈な批判が盛り込まれています。H.P. Lovecraftの『狂気の山脈にて』を、南極の先住の住民であるペンギンの視点から作り直した作品です。
Faulkner氏は、ゲームは操作や参加が必須になる唯一の芸術形式だと考えています。本作で扱う題材を遠回しに語り、「自分には関係ない」と無視できるようにしてしまうことは避けたかったそうです。たとえば、仲間を食べている者たちの効果音はループで流れ続け、そこにどれだけ留まるかはプレイヤー次第です。反応を返さない存在のそばにいる居心地の悪さは、映画でも表現できる場合がありますが、ゲームならその場にいる時間を自分で決められるといいます。
寄り道をしても罰せられず、別のものが見つかる作りになっていて、特に終盤の都市には見逃せるほど多くの要素があるとのことです。最後まで進めば、植民地的な思考の起源が人類より古く、はるかに暴力的なものだという世界の真相は分かります。さらに探せば、それに見合う発見があるそうです。
政府の資金援助と開発の経緯
本作はオーストラリア政府の資金援助を受けて開発されました。Faulkner氏によれば、企画を提案した際に「これを作ってほしい」と言われ、取り組んでいた別の作品を中断して本作に移りました。資金を得たのは昨年で、その後にPAX Australiaで相性のよいパブリッシャーを見つけたとのことです。同氏は、合わない会社が相手だったら検閲への懸念が生じ、作品は潰されていただろうと述べています。
提案の初期から、内容に合わなければ議論を打ち切って構わないと伝えていたそうです。Fellow Travellerは十分な注意を払って向き合ってくれ、開発期間は1年ほどでした。その1年は、すでに十分な内容があった提示版を仕上げる期間だったといいます。同氏は、ゲームが多くの収益を生むことを踏まえ、ほかの国も投資する価値に気づいてほしいと話しています。ただし、オーストラリアでゲームが受けられる支援の上限は10万ドル程度で、映画の最低額である1000万ドル程度とは大きな差があるとも指摘しました。
「ゲーム業界に警告を」という狙い
Faulkner氏は、先住民として見るゲーム業界は違って見えると話します。外見から先住民だと気づかれにくい自身の立場にも触れ、『Umurangi Generation』の後に業界へ入った際には、多様な声をもっと聞きたいと言われたものの、先住民への虐殺が起きても何もしない姿を見たといいます。同氏は、パレスチナの人々は業界でさらに厳しい扱いを受けていると主張しました。知人のパレスチナ人の開発者は、参加すればプロジェクトが実現しなくなるほどの高リスクと見なされるそうです。
そのため同氏は、本作を、そうした言い訳が通用しなくなる形で世に出すことを意図しました。ゲームが売れないという懸念や、大衆受けしないという見方に対しては、発売前に9万件のウィッシュリスト登録があったことを挙げています。業界の言い訳は現実に裏づけられず、先住民への根深い人種差別に基づいていると同氏は批判しました。先住民が植民地化の物語を語ってはならないと言う人がいれば、受け入れないとも述べています。
また、ガザの破壊が衛星映像で確認できる状況が3年近く続いているにもかかわらず、業界に臆病さや出世主義が目立つと強く批判しました。
真摯さとゲームとしての作り込み
主張の強い作品を遊べるものにする難しさについて、Faulkner氏は、皮肉ではなく真摯に作っているため心配しなかったと答えています。ミームを主要なプロットに据える最近の風潮には苦言を呈しました。
プレイヤーは当初、デヴィッド・アッテンボローの動物番組のような作品を想像し、ナチスが登場する場面で驚くことになります。ヴェルナー・ヘルツォークのようなゲームだという声もあったそうです。氷から現れるオベリスクについては、ナチスが勝手に物語を作り上げており、ショゴスを完璧な奴隷種族だとする彼らの歴史は、でたらめだと説明しています。
ゲームが非常にミニマルなため、常に画面にいるペンギンの動きを面白くする必要があり、小さな不具合も修正が必要だったといいます。ペンギンごとに得意な動きが異なり、切り替えながら遊べるため、遊び方は大きく変わります。終盤には、見つけたものと見逃したものが章単位で表示されます。見逃した部分は物語全体の背景にあたる内容で、プレイヤーを寄り道へ誘う配置で発見を促しているそうです。
PS2風のビジュアルへのこだわり
見た目について同氏は、PS2世代は性能が足りない分、ノイズやテクスチャで物事を暗示する必要があったと説明しました。『Resident Evil 4』の粒子感のように、粒子の中で脳が存在しないものを想像するといいます。何もない荒野の中でショゴスが初めて現れるとき、繰り返しのテクスチャと奇妙な毛が見る人の想像力を働かせるという考えです。脚にはインバースキネマティクスを使い、Unity開発者のKvant氏が作った毛のシェーダーで、触手にも濡れた垂れ髪にも見える表現を実現しています。
スタジオの覚悟とXbox版・イスラエル販売について
Faulkner氏は、本作がスタジオ最後の作品になる可能性もあると率直に語りました。それでも、作品の主題に忠実であることを守れたなら、やる価値があったとしています。ブラックリストに載ったとしても構わないという考えです。また、先住民は二度目のチャンスを得られないと述べ、先住民のチームが完成させられなかった場合、非先住民の参加者はキャリアを伸ばす一方、先住民の参加者はキャリアを下げることになると訴えました。
最後に同氏は、本作をXboxに投入しないことを明言しました。Steamではイスラエルでの販売もしていません。同氏は、他の開発者にもSteamに直接連絡して同様の対応を取るよう勧めています。No Games for Genocideの誓約についても強化が必要だと主張し、インディーにも例外を認めるべきではないと述べました。特定の相手を非難する意図はなく、改善の余地があるという提案だと付け加えています。
『Penguin Colony』はWindows PC向けに発売中です。