『パルワールド』責任者が語るSteam早期アクセスの形骸化
2026年09月10日 | #その他 | GamesRadar+
『パルワールド』の1.0アップデートに向けた動きのなかで、開発・パブリッシングを担うPocketpairのコミュニケーションおよびパブリッシング責任者John Buckley氏が、Steamの早期アクセスをめぐる環境の変化について語りました。現在は、未完成のゲームを開発者とともに作り上げる仕組みではなく、通常の完成品と同じように扱われるケースが増え、早期アクセス本来の意味が薄れていると指摘しています。
早期アクセスを「通常のゲーム」として扱うユーザー
Buckley氏はGamesRadar+の取材で、Pocketpairは早期アクセスという仕組み自体を今も高く評価しており、次に大規模な新作を作る際にも採用する可能性が高いと説明しました。一方で、Steam上では早期アクセスを取り巻く文化が大きく変わったと感じているとのことです。
同氏が理想的な時期として振り返ったのは、Steam Greenlightから早期アクセスへ移行した直後の数年間です。当時は、早期アクセス作品を購入するユーザーも「未完成の状態で遊ぶ」ことを理解しており、開発に参加し、フィードバックを送り、開発者と意見を交わすことを望んでいました。Buckley氏は、その時期を早期アクセスが本来の形で機能していた“黄金時代”として捉えています。
しかし現在は、ハイパーカジュアルなモバイルゲームやライブサービスゲームの文化がSteamにも広がり、ユーザーの期待が変化したといいます。早期アクセス作品であっても、購入後すぐに通常のゲームと同じ完成度や更新ペースを求められ、「これが発売されたゲームの全体像だ」と受け止められがちになりました。Buckley氏は、こうした状況について「早期アクセスは本質的に意味を失った」と表現しています。
短期間で遊び尽くし、更新がないと判断される問題
本作では、早期アクセス版を購入したプレイヤーが1~2週間集中的に遊んだあと、新しいコンテンツが追加されないことを理由に「開発者は新しいものを作っていない」「このゲームは死んだ」と批判するケースがあるとBuckley氏は説明しています。
これに対して開発側としては、早期アクセスは開発途中のゲームであり、次の更新を作るには時間が必要だと伝えざるを得ません。Buckley氏は、プレイヤーが短期間でゲームを遊び切ったとしても、それだけで開発が止まったことにはならず、「半年後に会いましょう。ゲームを作らなければならないのです」といった状況になると語りました。
同氏は、ゲーム開発の過程に関心がないユーザーを悪いとは考えていません。完成した作品を楽しみたいだけのプレイヤーがいるのは当然であり、開発の仕組みに詳しくないことを責めるべきではないとしています。そのうえで、早期アクセスがどのような制度なのかという一般的な理解が広がれば、プレイヤーと開発者の双方にとって助けになるとの見方を示しました。
PCとコンソールで異なるフィードバック
早期アクセスの文化がSteam上で変化している影響は、コンソールで特に大きいとBuckley氏は指摘しています。コンソールのユーザーは、早期アクセスのゲームを遊ぶことに慣れていない場合が多く、PCユーザーと比べて開発途中の作品に対するフィードバックも少ない傾向があるとのことです。
一方、PCユーザーは不具合の報告を大量に送る傾向があり、開発側にとって重要な情報源になっています。Pocketpairは、プレイヤーに早期アクセスの前提を理解してもらうため、更新内容や時期をできるだけ透明に伝えるよう努めているとしています。
たとえば次回の更新がすぐには配信されないこと、内容が新規コンテンツ中心ではなく、操作性や利便性を改善するQoL(クオリティ・オブ・ライフ)中心になることなどを事前に説明しています。Buckley氏は、こうした情報発信によって期待値を調整しながら、プレイヤーへの説明と開発の進行を両立させようとしていると述べました。
早期アクセスの悪用とPocketpairの今後
Buckley氏は、早期アクセスがすべての作品に適しているわけではなく、実際に採用したことで悲惨な結果になったゲームも数多く存在すると認めています。とくに問題なのは、十分な開発計画が整っていない段階でも、資金を得るために先にゲームを公開する使い方です。
早期アクセスが従来の資金調達手段を回避する方法になり、いわば新しいKickstarterのように利用される場合があると同氏は説明しました。開発途中のビルドを公開し、その売上で開発を続けるという仕組みは、開発者にとって有効な一方、購入者が完成度や更新を過剰に期待する原因にもなります。それでもPocketpairは、プレイヤーの反応を受け取りながら開発できる点を重視し、早期アクセスを支持する立場を維持しています。
本作については、今後も開発が続くものの、次回のアップデートが過去最大級の大規模改修になるわけではないと、Buckley氏が期待を抑える発言を重ねています。将来的な「Palworld 2.0」の可能性を完全に否定してはいないものの、10年にわたって大規模な支援を続けるNo Man's Skyのような展開を、プレイヤーが当然のように期待すべきではないともしています。
Pocketpairは本作だけでなく、過去作Craftopiaでも早期アクセスを採用しており、同作も1.0アップデートに近づいています。また、同社のパブリッシング部門は、本作で得た資金を活用し、ゲーム業界全体で投資環境が厳しくなるなか、将来性のある作品の発掘と支援にも取り組んでいます。Buckley氏の発言は、早期アクセスを今後も活用する意思を示す一方、その制度が抱える期待値のずれと悪用の問題を、採用側も強く意識していることを示すものとなりました。