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『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の地底世界がシリーズの新たな方向性を示す

2026年09月13日 | #レビュー | GamesRadar+

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の地底世界がシリーズの新たな方向性を示す

シリーズおなじみの冒険と反復から大きく踏み出した本作で、原文筆者が最も重要な場所として挙げるのが、ハイラルの地下に広がる「地底」です。暗闇と危険に満ちたこの空間は、単なる追加エリアではなく、長年続いてきたゼルダの定型そのものを揺さぶる仕掛けとして機能していると原文筆者は論じています。地上や空の島々が「解き明かすべき世界」だとすれば、地底は、先の見えない状況を生き抜くために自分で進む道を作る場所です。

定型を積み重ねてきたシリーズ

原文筆者は、ゼルダの伝説を「儀式」のようなゲームだと捉えています。作品ごとに新しい仕掛けや舞台を取り入れながらも、ハイラルを旅し、謎を解き、力を蓄え、最後にガノンを倒すという大きな流れは繰り返されてきました。そこには、完全な荒野を自由にさまようというより、制作者が丁寧に整えた庭園の中を歩くような安心感があったといいます。

過去作では、プレイヤーは決められた順序の中で新たな道具を手に入れ、行けなかった場所へ進めるようになっていきました。ブーメランやフックショットのような象徴的なアイテムも、冒険の進展を実感させる重要な存在です。原文筆者は、シリーズがこうした「安全な境界の内側での冒険」を長く続けてきたと説明しています。

しかし、ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルドは、その構造を大きく変えました。ダンジョンから次のダンジョンへ進む従来型の道筋は薄れ、広大なハイラルに点在する祠が、一回ごとのパズルや戦闘を提供する中心的な要素になっています。武器は壊れ、愛馬を失うこともあり、従来のシリーズで少しずつ増えていった道具の代わりに、序盤から与えられる能力を使って最後まで問題を解決します。

原文筆者は、この変化によってシリーズが「親しみやすさ」だけでなく、長年蓄積してきた決まりごとからも解放されたと見ています。ガノンを倒すという結末自体は受け継がれましたが、前作の追加コンテンツの最後にリンクが手に入れたのは、従来のゼルダからは考えにくいモーターサイクルでした。DLCという形式も含め、シリーズの次に何が来るのかを作り手が考え直す必要があった、というのが原文筆者の見方です。

継承に見えた続編の変化

本作の発表当初、前作と同じハイラルの地図や祠の構造が使われることは、シリーズが再び反復の段階へ戻る兆候にも見えました。前作で大きく変えたものをいったん落ち着かせ、同じ舞台を拡張していく、伝統的な続編の作り方です。空に浮かぶ島々や新たな脅威が示されても、表面上は「好評だった要素を増やした作品」と受け取ることができました。

ところが原文筆者は、本作の本質は地上や空だけを見ていては分からないと指摘しています。ウルトラハンド、スクラビルド、トーレルーフといった能力は、単に前作の能力を置き換えるものではありません。物体を組み合わせて複雑な機械を作り、思いもよらない武器を生み出し、地形や建物の内部をすり抜けるように移動できます。

これらの能力は、ゲーム内の物理法則を利用する道具であると同時に、用意されたルールの隙間から抜け出すための「ハック」のような性格も持っています。原文筆者は、そこに、これまでのゼルダが積み重ねてきた仕組みに対する穏やかな苛立ちが表れているのではないかと考えています。問題は、シリーズが同じことを繰り返していることだけではありません。親しみやすい定型が、世界を少し息苦しくしてしまうことも問題だったというわけです。

本作の映像では、当初から不穏な雰囲気と、空を中心とした明るい驚きが同時に示されていました。ハイラルを探索する一方で、上空には巧妙に作られた島々が浮かんでいます。リンクは本当にいつものリンクなのか、そこは本当にいつものハイラルなのか。こうした疑問を誘う余地があったことも、単純な続編には収まらない作品の性格を示していたと原文筆者は述べています。

地上の裏側に広がる地底

地底へは、地上に開いた赤い縁取りの穴から降りていきます。そこにあるのは、空の島のように整然と配置された別世界ではありません。地上とつながりながらも、暗く、狭く、未完成に見える広大な地下空間です。並行世界を扱ってきた過去のゼルダにも似た要素はありましたが、原文筆者は、地底が過去作の裏世界のように完成されたパズルの部品ではない点を強調しています。

地底は、ハイラルの下に存在するもう1つの地形でありながら、地上のルールをそのまま反映してはいません。視界を奪う闇が広がり、足元には触れるとハートを失う瘴気が広がっています。壁や地面に赤黒い領域が付着し、明かりのない場所では地形そのものが敵のように立ちはだかります。遠くの景色を見て次の目的地を決めることも難しく、数分先の行動を気軽に計画することさえできません。

探索の手がかりになるのが、地下に点在する根のような構造物「破魔の根」です。これを起動すると周囲が照らされ、対応する地図も明らかになります。ファストトラベルの拠点が増え、自分がどこにいるのかを把握しやすくなるため、破魔の根を見つけることは、単なる地図埋め以上の意味を持ちます。暗闇に覆われた空間の一部を、自分の手で取り戻していく行為だからです。

原文筆者は、地底での探索が「報酬を得るための移動」だけになっていない点にも注目しています。そこにはパズルや役立つ報酬が用意されていますが、プレイヤーの意識は先の謎を解くことより、いま立っている場所を生き延びることへ向かいます。光がなければ、地面や坂、木々といった通常の地形の区別も曖昧になります。周囲のすべてが近くに迫り、足元に絡みついてくるように感じられるためです。

地底が示す別のゼルダ

地底では、資源が減り、敵の姿が見えないまま周囲を動き回る音だけが聞こえます。原文筆者は、制作者が先に用意した道筋をたどるのではなく、プレイヤー自身が光を作りながら進む構造になっていると説明しています。地上では風景や物語、他の登場人物との交流が探索の方向を与えてくれますが、地底ではそれらが意図的に取り除かれています。

それでも地底の探索は、多くの場合、必須ではありません。地上には、姫を救い、ハイラルを取り戻し、見知らぬ人々の問題を解決していく物語が残されています。そこでは、困っている人に手を差し伸べるという、シリーズらしい優しさも描かれます。地上の冒険を進めるだけでも、本作の中心的な体験は成立します。

だからこそ、地底の存在が強い意味を持つと原文筆者は考えています。必ず訪れる必要がない場所でありながら、作品全体の底には常に、理解しきれない巨大な空間が広がっています。地上の物語が「救出」や「回復」を語る一方で、地底はプレイヤーを不安定な状態に置き、ハイラルを見慣れた世界として扱うことを拒みます。

原文筆者によれば、地底では、ゼルダ作品同士を比較し続ける会話もいったん途切れます。過去作との共通点は何か、何が新しいのか、どの作品を参照しているのかといった議論から離れ、目の前の暗闇だけが問題になります。破魔の根を1つ起動するたびに、わずかな光と地図が生まれ、進むための新しい手がかりが得られます。そこには、シリーズの伝統を説明するのではなく、いま起きていることを体験させる力があります。

原文筆者は、本作が前作のようにシリーズの構造を正面から壊したのではなく、その構造について語ること自体を無視することで、新しい道を作ったと結論づけています。地底の未整理で混沌とした姿は、ゼルダが「こうあるべき作品」ではなく、「今回は何を作りたいのか」を追いかけた結果に見えるとのことです。闇の中で少しずつ視界を取り戻していく地底は、シリーズが次に進むための方向を、破魔の根1つ分の光から示しているのです。