『over the hill』レビュー:速さを競わず絶景を巡る、穏やかなドライブが楽しめます
2026年10月15日 | #レビュー | DualShockers
『over the hill』は、車で自由に探索しながら、景色を楽しむ穏やかなサンドボックスゲームです。魅力は、目的地へ急ぐよりも、道中で立ち止まりたくなることにあります。筆者も5つのマップを探索するうちに、周囲の風景を眺めるために車を止めることが増えていきました。ただし、1人では世界が少し寂しく感じられ、コントローラーの不具合で運転しづらくなる点も気になります。
レースの代わりに、険しい道と絶景が待っています
本作は、レースやスピードへの挑戦を中心としたドライブゲームではありません。雪や雨、泥のある道を進み、見晴らしのよい場所を探す探索が中心です。車の中から夕日を眺めるような時間を大切にしており、さまざまな障害物や走りにくい地形も、自然と速度を落とすきっかけになります。
チャレンジ用のコースでは、荒れた地形を越え、ときには崖の斜面を登ります。その先で素晴らしい眺めに出会えることが、苦労して進む楽しさにつながっています。入手した道具はMechanicで交換でき、難しい道を進む助けになります。
Mechanicでは、ゲーム内の主な通貨「Pebbles」を使って車を強化することもできます。ただし、強化が適用されるのは、その車だけです。Pebblesは主にチャレンジの達成や、マップ上の注目地点の発見で手に入り、獲得量にも余裕があります。
ほかにも、見つけた車を指定の場所までけん引したり、景勝地を探したりできます。とはいえ、これらをこなす義務はありません。何に取り組むか、どこへ向かうかは、プレイヤーに委ねられています。
行き先も楽しみ方も、自分で決める探索
車を運転するゲームでありながら、本作の軸は探索にあります。見に行く価値のある場所は多く、目的を決めずに走り回るだけでも構いません。用意された目標を達成すること以上に、自由な旅そのものを楽しむ作品です。
筆者は、行動を促すものがほとんど自分の好奇心だけであることに驚き、好きな道を進めるか試すために、何度も決まったルートから外れました。移動には限界があり、垂直な崖を登ることはできませんが、ウインチを使えばかなり近いところまで挑めます。自由に走れる範囲を探るうちに、本作が目指す遊び方も見えてきます。
速度を出せる場所や便利な近道もあります。それでも、ラジオから流れる穏やかな曲を聴きながら砂地を走り、空の低い位置へ沈んでいく太陽を眺めていると、急ぐ気持ちが薄れていきます。筆者にとって、こうした形で足を止めてひと息つかせてくれる癒やし系ゲームは、これまでにない体験でした。
長時間のプレイを要求する作品でもありません。大半のマップは10時間未満で見て回れるため、比較的短い時間でも世界を味わえます。レースはなくても、見つけるものや取り組めることは十分にあります。
友人との時間は心地よく、1人では寂しさも残ります
本作は1〜4人で遊べるオンライン協力プレイに対応しています。友人と一緒に走り、目標を達成したり、近況を話しながらのんびり過ごしたりする遊び方と相性がよい作品です。仲間と気楽に時間を共有できる点では、Big Walkにも通じるものがあります。
一方、筆者がもう少し欲しかったのは、探索を続ける理由になる物語です。すべてのマップを解放したいという気持ちがなければ、提示された目標に取り組まなくても済んでしまいます。美しい景色とラジオを楽しむ時間は魅力的ですが、物語を加える余地が生かされていないようにも感じられます。
特に1人で遊ぶと、会いに行ったり、交流を深めたりするキャラクターがいないことが、寂しさにつながります。簡単なサイドクエストを持つ人物がいるだけでも、旅の孤独感を和らげられたはずです。
物語が必須というわけではなく、これは体験全体を損なうほど大きな問題ではありません。それでも、友人と自分たちなりの楽しみを作らずに遊ぶ場合は、何かが足りない感覚が残ります。自由さが魅力である一方、その自由をどう楽しむかもプレイヤー次第です。
シンプルな操作と風景が、旅の魅力を支えます
筆者が特に気に入ったのは、本作のシンプルさです。極端にリアルな運転を目指したり、複雑な操作でプレイヤーを試したりする作品ではありません。使うボタンは少なく、仕組みの多さに圧倒される心配もありません。
ただし、コントローラーには運転を難しくする不具合があります。操作の分かりやすさは長所ですが、実際のプレイには改善が必要な部分も残っています。
見た目もローポリゴンを用いた簡素な表現ですが、それが遠くまで見渡せる描画につながり、広大な風景を楽しませてくれます。動物を見つけて写真を撮ることもでき、世界全体が統一された素朴なデザインで描かれています。
写実的なグラフィックや派手な演出を求める人もいるでしょう。しかし、本作の魅力を伝えるうえで、それらは不可欠ではありません。険しい道を越えたあとに、マップの広い範囲を見渡す瞬間には、簡素な表現でも息をのむような美しさがあります。
『over the hill』は、車で走る時間そのものを楽しみたい人、特に友人と気ままな旅をしたい人に向いた作品です。1人では世界の空白が気になり、操作にも不具合は残ります。それでも、登り切った峰で夕日を眺め、ラジオに耳を傾ける時間には、十分な魅力があります。