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『Dungeons & Dragons: World of Warcraft』は「翻訳ではなく意訳」でD&Dらしさを重視、デザイナーのジェームズ・ワイアット氏が語る

2026年10月17日 | #ゲーム紹介 | IGN

『Dungeons & Dragons: World of Warcraft』は「翻訳ではなく意訳」でD&Dらしさを重視、デザイナーのジェームズ・ワイアット氏が語る

発売まで1か月を切ったTRPG拡張『Dungeons & Dragons: World of Warcraft』について、Wizards of the Coastのプリンシパルゲームデザイナーであるジェームズ・ワイアット氏にインタビューしました。D&Dとして初のUniverses Beyond拡張にあたる本作は、MMOの複雑な仕組みや戦闘重視の方向性をTRPGに持ち込むのではなく、アゼロスを舞台にした「D&Dそのもの」を目指していることがうかがえます。取材はニューヨーク・コミコンで行われました。

WoWプレイヤーにとってのD&D入門にもなる

本作の目的はD&D入門ではないとワイアット氏は話します。それでも、WoWのプレイヤーにとってはよい入り口になると考えているそうです。D&Dでキャラクターを作る際は、ティーフリングやドラゴンボーンといった種族や、各クラスの意味が分かりにくいことがあります。WoWの種族やクラスという土台があれば、作りたいキャラクター像がすぐに決まり、選択の助けになるといいます。本書には「D&Dとは何か」を簡潔に説明する導入もあり、D&D Beyondを案内して始め方の資料を探せるようにしています。

昨年秋の初期段階では、Blizzardの社員を対象に、内容を伏せたままプレイテストを募集しました。D&D好きもいれば未経験者もいたそうです。ワイアット氏は新規プレイヤーとの卓を好むと語ります。何をすべきか知らないぶん、想像できることを何でも試してくれるからです。

その一例が、Forsakenのウォーロックを演じたプレイヤーです。下顎がないので呪文をうまく唱えられないと考え、最初の呪文が暴発して階段から転げ落ちました。その後は自分の腕をちぎってモンスターに投げつけたといいます。ワイアット氏はこれを「D&Dの真髄」と呼びました。「どのボタンを押すか」ではなく、「何を想像し、どう実現し、それがどう見えるか」が重要だと説明しています。

ダンジョンの選び方と、自由度を重視した作り

収録されたダンジョンは、まず「アゼロスの対立」の章を土台に選ばれました。この章は、WoWの多くの拡張を動かしてきた6つの対立を整理し、それが世界をどう形作り、キャンペーンにどう取り込めるかを解説しています。選定では、各ダンジョンがこれらのテーマを反映しているかを基準にしました。加えて、ファンに愛されているダンジョンを知るため、あるwikiの人気ランキングも参考にしたそうです。大きなリストから絞り込み、収録できる分量やキャラクターのレベル帯に合うものを選びました。

レイドについては、収録されている中ではオニクシアの巣穴が目立ちます。アイスクラウン・シタデルは、デジタルダウンロード形式のアドベンチャーとして提供されます。ボス戦を描いた両面印刷のポスターマップ5枚の別売りパックにダウンロードコードが付属します。ワイアット氏は20年前、ネットで拾った地図にナーガの能力値を自作して「ブラックフェザム・ディープス」を遊んだ経験があるそうです。本書の道具を使えば、好きなダンジョンを自分で再現できると話しています。

「戦闘に偏り、決められたダンジョンを遊ぶだけになるのでは」という懸念については、目指した方向とは逆だと答えました。シャドウファング城に入っても、出会った相手と話し、目に入るものと関われるのがD&Dの魅力です。DMがその場で判断できるため、開発者がゲームにプログラムできる範囲よりはるかに可能性が広がるといいます。収録ダンジョンの記述は控えめです。地図と、いずれ遭遇するボスの位置が示され、その間はアドリブが中心になります。戦闘が欲しければ表をロールして遭遇を作れますし、MMOでは難しい形で環境を探索することもできます。

ワイアット氏は本書を「とても大きな道具箱」と表現します。キャラクターの選択肢、モンスター、探索できるダンジョン、独自のキャンペーンを作る指針、そして自由に使える白紙の余地が入っているそうです。ダンジョン・マウルの冒険のフックなども、自分で作って構わないとしています。

今後の展開と最新コンテンツへの対応

本書の内容はミッドナイトの冒頭までです。続編や補足製品については「分からない」としつつ、もう一冊WoWの本を担当できるなら引退を少し延ばしてもよいほど、制作を楽しんだと語りました。実現するかどうかはBlizzardとの関係次第だそうです。

本書はTWW(ウォー・ウィズイン)やミッドナイトの扱いが多くはありません。シャ・ラタースについてもほとんど触れておらず、能力値を載せたかったものの見送ったといいます。ワイアット氏は、今後の物語や既存の物語でまだできることはあると述べ、続編の構想を書き留めたリストも作っているそうです。次の拡張「ザ・ラスト・タイタン」にちなみ、タイタンについても第5章の冒頭で少し触れています。ただ、本書を使う人はwikiも頻繁に参照するだろうと考えています。

ミッドナイトの新専門化であるDevourer(デヴァウラー)のデーモンハンターは、ベータ版に入れるようになってすぐ自分で作って試したそうです。すでにあるHavocとVengeanceの設定に呪文を加え、魂を喰らう要素をまとめた専用の呪文欄を設けました。新クラスが登場すれば、別のD&D書籍で扱うのも楽しいだろうと話しています。

「Forever」(クラシック版)は、本書に意味のある形で反映するには公開が遅すぎました。スカイボーン種族や新ゾーンを足したい場合も、新しいエルフの系統を足すのは難しくないといいます。BlizzardとD&D Beyondでの追加配信を相談するのも面白いかもしれないとのことです。新しいコンテンツ自体は、プレイ中のキャンペーンに簡単に持ち込めるとしています。個人的にはForeverを少し触った程度で、ミッドナイトのストーリーも終えていないと話しました。

WoWのクラスは「翻訳」ではなく「意訳」

WoWのクラスをD&Dに取り込む際の考え方は、翻訳ではなく意訳だそうです。ワイアット氏はクラスごとに能力とタレントツリーを調べ、レベル60前後で区切って整理しました。そのために大量のスプレッドシートを作ったといいます。D&Dにすでにある要素のうち強調したいものを探し、象徴的な雰囲気を出すために新しい呪文、特技、バトルマスターの機動などを作りました。WoWのタレントは細かい調整が多い一方、D&Dのルールはそこまで細かくないため、仕組みの再現よりも雰囲気を呼び起こすことを優先したそうです。

各専門化には、その特色を出すための特技が用意されています。役割の扱いには根本的な違いがあります。WoWでは回復専門のパラディンは回復役、防御専門は盾役ですが、D&Dではどのサブクラスや特技を選んでも回復と防御の両方をこなせます。役割で狭く定義されないという点は、本書でも変わりません。プリーストは、クレリックから何かを削って合わせるのが難しかったため、布以外の鎧も着られます。そのうえでWoWのプリーストらしい呪文を使います。全体として、クラスは幅広い選択肢を持ちつつ、担うべき役割には集中できるようになっています。

インタビュアーが、WoWの物語に出てくるキャラクターも役割に縛られていないと指摘すると、ワイアット氏は「アンデュインはプリーストだと言われているのに、プレートアーマーを着て剣を持っている」と答えました。

リッチキングの戦いと「レノン」システム

リッチキング・アーサスの戦いは、挑戦度(CR)が25に設定されています。D&Dのキャラクターはレベル20までなので、厳しい戦いになります。D&Dの戦闘は、MMOのレイド戦に比べて、プレイヤーやボスが行える行動の数が少なく短く終わります。そのため、戦いを再現するのではなく、その感覚を呼び起こすことを狙っています。それでも、馴染み深い要素は多いそうです。理屈の上では、アーサスを説得したり、忍び込んで支配の兜を盗んだりすることも試せます。誰とでも話せるのがD&Dの良さだと強調しました。

評判(レピュテーション)に相当するのは、ダンジョンマスターズガイドにある任意ルール「レノン」です。基本ゲームではあまり使われませんが、勢力に重みを持たせ、キャラクターの人生に影響を与える道具として優れているといいます。アライアンスとホードをはじめ、ゲーム内の各勢力の重要性を踏まえ、キャラクターが勢力に思い入れを持てるようにこの仕組みを使いました。ホードのために戦い、ホードでレノンを得て恩恵を受けるうちに、その安否を気にかけるようになるという考えです。ただし必須ではなく、無視しても構いません。

インタビュアーは、WoWでの評判には長い作業のイメージがあると述べました。ワイアット氏もその点が大きな違いだと認めています。アイスクラウン・シタデルでは、リッチキングを倒すころにレノンが50前後になるよう設計しました。遭遇ごとに1~2ずつ上がり、通常の勢力より速いペースです。このアドベンチャーでは、アッシェン・ヴァーディクトとのレノンが別枠で用意されています。上がるとアルミス・ザ・ペニテントに指輪を強化してもらえ、シャドウモーンの素材も集められます。これらは同じレイドを何度も繰り返すのではなく、1回の通しプレイの中で進みます。レノンの点数を記録したくない場合は、キャラクターレベルで代用する換算も用意されており、17レベルで出身勢力に対して「崇拝」の状態にあるとみなします。

クロミー・タイムと、正史を無視していい許可

本書にはクロミー自身が書いた導入文があり、「好きな時代を訪れ、自分だけの時間軸で遊べるように本書をまとめた」と語っています。ワイアット氏によると、これは読者に正史を無視してよいと明示的に許可するためのものです。WoWのゲーム内では、クロミー・タイムが「最速でエンドコンテンツへ到達させるための手段」のように感じられたとインタビュアーは述べましたが、本書の役割は別だということになります。

ワイアット氏が現在遊んでいるキャンペーンは、DMが考えた筋書きです。現代のキャラクターたちがシルバームーンでシャ・ラタースを撃退した直後、時間の流れが変わり、街はドラゴンに支配されています。ドラゴンと戦って逃れた先でクロミーに会い、インフィニット・ドラゴンフライトが乱した時間の流れを直すため、20年前に送られるという展開です。これは本書に必須の内容ではないとしています。クロミーがブロンズ・アスペクトになるための策略ではないかという冗談には、「あなたのキャンペーンならそうかもしれない」と答えました。

クロミーは本書のあちこちに短いメモも残していますが、数は多くありません。ページに余白があるところに書かれており、たとえばキング・ゴルドックの名前をめぐって「大きなオーガは、少し小さくなる時間を過ごすとよい」といった内容です。

最後に、ForeverとRetailのどちらを遊びたいかと問われたワイアット氏は、両方遊びたいものの今はどちらも時間がないと答えました。